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狩人の生活  作者: 青海苔
第二章 星屑の反逆者達
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安物の椅子


 「……と。 こういう事がありましてですね……」


 再生が始まり、少し伸びた左腕。ダルダルになった上着の左袖を机に載せてレオとシャロンに説明をしている。机にボルトで留められた鋼鉄製のフックには鎖が通され、エルヴニウム鋼製の錠が右手にはめられている。


 隣のシャロンは被疑者モーガンが暴れた場合に殺す役割の人。いわば処刑人だ。


 普段は調書を取る専門官がする仕事である。最新装備を着けたまま3日間行方をくらませたのだ。それなりに重いペナルティをくらうのは覚悟の上、バカ正直に全てを話した。


 「……レオ?」


 「まぁ、言ってる事と物証、両方に食い違いはない。 ……これ、読んでみろ」


 モーガンへと1枚の紙切れを手渡す。見覚えのある表示形式。転移門の過去ログと似たようなモノ。


 「…………端末内の日付けと時間ですか?」


 「……あぁ。 モーガンが横穴に入ったすぐ後、データ通信がブロックされて、同期が取れなくなった。 だがしかし、端末内部の時間は21分の時間がカウントされていた」


 人差し指で下の方に記載された日付をトントンと叩きながら続けた。


 「通信が復活した瞬間、こっちの装置と同期されて……3日と4時間16後に再出現。 内部ストレージに残った映像」


 メモリーグラスを差し出すと3人の目の中に光の粒が浮かび上がる。キャバクラでレオが資料を見せたときと同じだ。


 今回は画像付きの経過報告書ではなく、数日前にモーガン自身が見た光景が流れている。操作はレオによって行われ、全員が同じ映像を共有している。


 「待てよ……よしこの時間だ。 右上の数字は日付けと時間だ……これをスロー再生してみると…………この柱を超えたタイミングで3日後の日付けに変わった。 よって、君に罰則は無しって事さ。 嘘も付かずによくも真顔でんな事を言うとは……バカ正直な奴だ」


 レオが手錠の鍵を外して鍵を横へと投げる。


 「……お二人がいい人ですから」


 「ははは! お笑いのセンスがある……あはははっ……ふ。 あ~あ……暫くはゆっくりすると良い。 申請を通して、転移門使用制限を解除してもらう。 それが終われば、家に帰れる」


 「……どのくらい掛かりますかね……?」


 「数時間から半日。 遅く見積もって……明日だな」


 「……了解」


 「……そんでもって。 今回の報酬だ」


 机の上で滑らせるように渡してきたアクリル製のデータトークン。使い捨ての報酬引き換え券とでも言えば良いだろう。


 「……報酬?」


 「まぁ、新型の合成獣キメラを2頭討伐。 あとは、情報提供料。 意外と成果としてカウントされる事項が多くてな……本来は救助の依頼だったが……まぁ、お疲れさん。 親父のところで休むと良い」


 シャロンとレオが一緒に食事をしている。先の取り調べ室の時点から次の日の話だ。偉い立場の人間が口にする食い物にしては安価チープな煮込み料理を頼んでいる。


 護衛のシャロンはそれと比べて贅沢志向だ。


 「……今回の件、旧フェイスレス一派の仲間が起こした事だと思うか」


 「……可能性はあるね。 術式を持ったキメラに、上位者関連の礼拝堂。 あからさま過ぎて笑えるレベルだ」


 「だよな。 何かモーガンから聴いていないか?」


 「彼が言うには、誘い込まれた様な気がすると言ってた。 ……それに、妙な夢の話をしてくれた。 調書には記載しなかったけどね。 証言として取るのは馬鹿げてると思ったから」


 「その内容は?」


 折り畳まれた紙切れをレオの傍へと投げる。


 「彼って絵の才能もあるの」


 摘んだ紙切れを広げながらシャロンをチラ見する。


 「お前、モーガンに気があるのか? やめとけ、恋人持ちだぞ」


 「ははは。 ウケる。 アレはタイプじゃない」


 「……。 恋人解消してたら応援してやるよ。 強い術者に惚れる癖は治した方が良いんじゃないか?」


 「うっせ。 死ね」


 「アレは5年後にベビーカー押してるタイプだ。 諦めな……で、このダウナー系のチリチリ毛イケメンがなんだ?」


 「妙な話でね……夢で見た男なんだと」


 「そりゃあ、調書に書くわけにはな……」


 受け取った紙を見下ろしながら、髭を撫でつけている。


 「まぁ、幽霊オバケ上位者エンジェル。 アイツは関連の話は退屈しないな……次は予知夢か? 馬鹿げた話だが、無下にはしないでおこう」


 「……意外だな」


 「アイツの聴取を無下にして滅びかけた街があると知ってりゃ、そうするさ。 ゲン担ぎみたいなもんさ……一応他の連中にも回しておくよ」


 「あとこれ……もう1枚。 男の特徴的な……まさか受け取ると思ってなかったからさ……んな目で見るな。 ほら、特徴として入れ墨。 眼球と茨の入れ墨だ。 併せて展開してくれると助かるよ」


 「おっけ〜。 ……ところでさ、モーガンのクラス区分だがお前よりも強い? それとも弱い?」


 「まぁ、トントンかな。 あの反応速度は真似できないだろうけど、術式使えば負けないだろうさ」


 静かに食事を口に運ぶ様子を横目で見ながら、考え込んでいる。


 (……まぁ、氷雪系と同じ位か……クラス8の中でもクラス9寄りか……まぁ、魔力持続時間が相当短い事を吟味するに8寄りの7か)


 「……そか。 じゃ、釣り銭は貰っとけ」


 「どこ行くのさ」


 「モーガンの見送りだ」


 「上位者になりかけてるかもしれないのに逃がしちゃって大丈夫?」


 「……他所で好きに暴れてくれる分にはどうでもいい。 ……まぁ、その心配は無さそうだが」


 暫く後。 モーガンが旅人の装衣を身に纏って転移門の前へと佇んで居る。ここと比べれば、向こうは寒いだろう。だからといって、ここを離れたくないという気持になることは無かった。


 「……それじゃ。 レオさんも、お元気で」


 「おう。 近い内に連絡するかもだから、そん時はよろしく」


 「えぇ。 にしても、運が無いですな……。 メンテ明けに向こうがメンテに入るとは……」


 「行方不明の扱いは国によって違う。 メンテというか、使用制限が掛かってるのかもな。 あそこら辺で上陸を許可された魔術師は出ていないから、近場の都市国家を経由して陸路を行くと良い」


 「……グリフィン借りて空路を行けば……。 まぁ、細かい事は後で決めれば良いか」


 「復旧したら連絡くれ。 お前の家と直通出来るようにするから」


 「……ところで、この島の事を知ってるのは?」


 「フェレスドレアの王族なら知ってる。 お前さんの住所に近い女王様も知ってるよ。 他所の庭に勝手に入る奴は居ない。 と言っておけば、細かい話は不要だろ?」


 「……なるほど。 遠くない内に休暇で訪れるかもしれませんが。 それでは」


 つづく

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