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狩人の生活  作者: 青海苔
第一章 血塗れの天使編
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死を忘れること無かれ

石油系主人公

 モーガンの振り回す解体包丁を紅い魔力剣で受ける度に青い火花が舞う。速度に威力。衝撃の度に肘の関節が軋み、組織が壊れる感覚が伝わってくる。


 あくまでも人間が生み出すエネルギーの範疇だ。強靭な肉体から生み出される力にしては弱いという印象さえ受ける。


 (弱ってるな。……〈タール・ボウイ〉と呼ばれる術式。さぞかし厄介な術式であると聴いていたが。この術式解除の性質を持つ包丁。金属じゃないな。プラスチック……金属と見間違う程に金属の見栄えを模している……不意打ち前提の兵装術式と見た)


 魔力剣で押さえつけるとモーガンが膝を折った。


 「……どうした。ガス欠かよ?」


 「……無駄遣いは出来なくてな。アンタは魔力に満ちて元気そうだ。死んでるけどな……その術式とは別の術式を仕込んでるな。虫……血液……。残りは何だ?」


 「さぁ? 後ろに居る女は教えてくれなかったのか? 残念な奴だな」


 モーガンの右腕に配下であるグールが齧り付く。歯間から貪欲に血を吸う音が鳴り響いている。


 「……おい。邪魔するなと予め命じていただろう?」


 冷めた声を出したのは、魔力剣を握ったグールの方だ。モーガンの右腕とグールの隙間に刀身を滑り込ませ、頭を切り落とした。


 仕切り直そう。そう言って最初に立っていた場所に戻り、再びモーガンを正面に捉える。餌に涎を垂らすグールは彼から距離を取り、渋々古い死体を齧っている。


 「……なめてるのか?」


 「……いいや。変に聴こえるだろうけど、妙にこだわる癖というか。ルールみたいなものさ。人から植え付けられた力だよ。なんでか知らないが、こうしないと居心地が悪いんだ。……生前はこんなじゃ無かったんだがな」


 右肩にぶら下がるグールの頭を引き剥がし、遠くへと放り投げる。


 「……その傷からの感染は進まない様にしておいた。存分に戦おう。モーガン」


 (何だコイツ。妙だぞ……前に会ったときはーー。あぁ。そういうことか。魂の癖か。となると、あの女の魔術は術式を奪って与える事のできる術式か?)


 「戦っていて思うんだ。この癖は本当に私自身のものであるのかとね。まぁ、良いか。非礼を詫びよう。代わりに、何処からでも打ち込んでくるがいい。それにーー」


 その隙を逃さずに相手の首を撥ね飛ばした。有効かは不明だったが、胴体への斬撃を放つと、魔力剣で受け流され、カウンターで胸から下腹部までを斜めに切り裂かれた。


 「く……!」


 「……本気を出さずして、倒せる相手と侮らないでほしいな。モーガン」


 胴体に残った声帯から音がなると、頭部を首に乗せる。瞬く間に傷が癒合し、先刻と変わらぬ姿へと戻るのだった。


 脈打つ度に傷口から血液が滴り落ちていたが。瞳から紅い光が漏れ出ると傷口が閉じる。傷口にはアスファルトの接着剤で埋めた痕跡。仮止めの状態だ。動き回れば直ぐに剥がれるだろう。


 「タールと名を冠しているが……石油だな。プラスチックにアスファルト糊。それに概念を術式に込めている。未だにこの目で全容を見抜けぬとは」


 「そいつはどーも名探偵さん。おいで、〈タール・ボウイ〉」


 中指の欠けた石油の腕が浮かび上がり、モーガンの体を庇うかの様に現れ出る。


 「予備サブの術式を使わずにメインのを使えば良いだろうがよ」


 訝しげな顔で視線を移した隙。ほんの一瞬に、ニオイが判るほど近くにグールの親玉が姿を見せ、魔力剣を振り下ろす。


 「魔力による肉体強化。コイツは良い」


 〈拒絶する中指〉で剣を受け流し、下腹部に打撃を加える。筈だった。モーガンの握った解体包丁が真っ二つに割れて宙を舞ったのだ。


 刀身が地面に並行かつ、切っ先が左肩上に来るような受け方をした事が事態を悪化させた。左上腕の付け根に魔力剣がめり込み、血が滲み出た頃には、モーガンの腕が地面を転がっていたのだ。


 「……おぉ。まじかよ。流石にビビったわ」


 堪らず後ろへと飛んで距離を稼ぐ。脈打つ度に外界へと血を送り出す腕の断面を眺めて考えに耽ると、その腕を〈タール・ボウイ〉へと突っ込むのだった。


 油の温度を超高温にまで偏移させて傷を塞ぐ。考えているのか腕を取られて呆然としているのかは他の人間から見れば判断しかねる表情である。


 モーガンの握った解体包丁にも違和感がある。折れた。割れた。そういった感じではない。


 彼の魔術であるのだ。包丁の柄から刃先まで、全ての情報が伝わってくる。内部に亀裂が入った、刃先が欠けた。全ての情報が五感と同じ様に伝わるのだが、両断された時には一切の情報が無かった。


 まるで、感覚を受容する皮膚と伝える神経をも消滅でもさせられたかの様に。


 (……消滅の性質を持っているのか。もう1つの術式は。かなり希少レアな性質。概念系の極振りタイプの術式だとすると、勝率は良く見積もって4割……。被害が片腕で済んで良かった)


 石油の腕から引きずり出した左腕にはアスファルトがまとわり付いており、初めは固まった蝋の粒状であった物が義手へと変化する。


 顔料を溶かし込んだかの様にモーガンの皮膚の色と同調し、数メートル離れれば生身と見分けがつかない程である。 


 「……初めてにしては良い出来だ。消滅させる術式か。ただ、消滅させる質量には上限があるな。体積で見積もればざっと5リッター程度。に沿って術式を展開している。効果範囲は手の届く範囲だろ?」


 「……頭の回る男だ。しかし、惜しいかな」


 モーガンの肩から血が吹き出し、霧状に舞い上がった。傷口には誰かが手を置いた痕の様に、手形状の傷が刻まれている。撫でられるだけで体が削り取られるのだ。


 「術式。〈消滅のかいな〉の効果範囲はかなり広い。馬鹿みたいに燃費が悪いが、死人から補給すれば大した事じゃない」


 眉1つ動かさず、顎を引いて睨みを利かせるモーガンは固まったかの様に動かない。動けないのか、怖気づいたのか。


 「なぁ。狩人さん。どんな気分なんだ? その力が有ればどんな奴だって怖くなかっただろう。良いよな。持って産まれた奴は」


 彼の事を判った気がする。他人を羨み、不平不満を常に吐き出すタイプの人間だろう。口は動くが、行動には移さない。まぁ、平たく言えば厄介者だ。友人にするには品がなさすぎる。


 「……ふふふ。怖くなかったよ? 確かに……。あぁ……確かに。 ただ、恐ろしいものは幾つかある。 法律は怖いなぁ〜」


 「……アンタ。楽しそうだな。魔術を使えるようになって浮足立つのもわかるよ。嬉しいよな……周りが使える連中ばかりなら尚更。私も嬉しかった。……最初はな」


 「……殺しに特化した術式。振るえば辺りに石油を撒き散らし生態系にも害を及ぼす。クセェし、服も駄目になるから安い服しか着れないしよぉ……爪の隙間が黒くなって女からキモがられるわ……髪にニオイが染み込んでよぉ……寝返り打つ度に悪臭で目ェ覚めるわ……良かったと思った事は無い」


 モーガンが体を屈めると後ろの地面が削れ消える。グールの魔術の予兆を憶えたのだ。3発、6発と追撃が繰り出されるが、全て躱して見せた。


 この街の動力は魔力の炉。辺りにはその粒子が浮いている。それが消えた軌道からある程度の動きはわかる。見たところ、急な方向転換は出来ない。


 (首を刎ねても再生する。消滅させられて攻撃も無駄)


 「……馬鹿な事だな。わざわざ近づいて斬りかかる必要なんざ無いよな。制圧術式……〈老いた赤子〉」


 モーガンの体に、纏っていた術式や握った解体包丁が石油の腕に還元される。モーガンの頭上には巨大な痰の塊が浮かんでいる。


 産まれたての赤子の似姿。水気が抜け、皺まみれの姿。びっしりと蓄えられた顎髭に伸び切った眉。


 油絵の中から飛び出したかの様に色が塗られ、グールの親玉を見下ろしている。白い羽衣を纏い、背後には輪光りんこうを模した真っ黒い物体。


 「……〈老いた赤子〉よ。あぁ……可愛らしい。なんと美しい……」


 赤子は機嫌が良くないせいか、ぐずった様に声を断続的に漏らしている。その声が異様に大きく響き、聴いていると不安が掻き立てられる感覚に陥る。


 (魔力が一切感じられない術者と頭上の術式。全魔力を込めた場合、術式を消滅させれば詰みだと知らないのか? 間抜けが)


 〈消滅のかいな〉が赤子の腹を削り取る。左脚と右目をも消滅させて頭に狙いを絞る。何も面白い話じゃ無い。消す。消し去って殺す。たったそれだけの事だった。


 (終わりだな。モーガン)


 勝ちを確信した。その時だ。その時になってようやく異変に気がついた。魔力剣の切っ先から変色が進み、溶け崩れていく。


 「……は?」


 「理不尽を跳ね除ける力だった。技を磨いて、磨いて。果には生き物を殺すだけの術式が産み出された。力のある人生はどうかって? ……虚しく、果てしなく退屈だよ」


 魔力を全て注ぎ込んだ。無論、術式を破壊されれば込めた魔力は霧散して術者へと戻らない。勝算があるからそんな愚かな事をしたのだ。


 「やっぱ素人だな……親玉ちゃん?」


 「……グール共! あの男を殺せ!」


 「……はは。化けの皮剥がれてやがる。ウケるな……実に滑稽だ。大物気取ったモブ風情が……無駄だよ。もう皆――」


 辺りに立ち込める死臭に、溶剤臭さが混じる。グールの足元には小鳥の死骸が落ち、石油のアブラ溜まりに骨が浮いている。


 「――石油あぶらに還る頃合いだ。早く術式壊さなきゃな……ほうら、アンタも私もな」


 グールの指先が黒く変色して爪が流れ落ちる。モーガンの右目からは黒い涙が頬を伝う。術式の対象は敵味方関わらずの無差別攻撃。


 周囲のグール達も姿を肉のない骸へと変貌させられている。


 (……無茶苦茶だ。この男……! 通信の途絶えたシェルターの前に親玉が居るなら、人質を取ってると考えるだろ……普通は!)


 焦った表情を見抜いた瞬間に不気味に笑う。戦いの中で怖気づいた奴の顔は飽きるほど見てきた。ちゃちな脅しで喧嘩を売って来る連中と同じ表情。結果も何度も見てきた。


 「……どーしたぁ? やめてくれよ。そんな殺人犯を見るような目で。しかし、流石だよ。後ろのヘルメースは今頃寝てるのにな。魔力量。質。その差が大きければ大きい程に早く石油に還せる。見たところ、そんなに長持ちする程に良い魔力を持って無いと思うがね。術式も魔力もレンタル品と考えればそれも頷ける」


 「そういうことか……。お前の負けだ。そして、残念だったな。フードの女。クラス10のお披露目はまた今度だろうな。私を倒せなければ、連中は姿を現さない」


 「……何を言ってる? 何の事だ」


 「足りない魔力は虫で送ってるのさ」


 結界の外。あの甘すぎる紅茶を飲んでいた女が口から液体を吐き出している。マーベリックが側に駆け寄り、彼女の症状を診て直ぐに直感した。モーガンの術式だと。それが遠く離れた結界外でも力を発揮している事に疑問はなかった。


 「……モーガンの術式だ! 早く、虫同士の繋がりを切るんだ!」


 「……あぁ。残念だけど。この術式は失敗ね……早く逃げないと……」


 周囲の客とウェイター達が次々と倒れていく。モーガンと同じ様に右目から石油の涙を流し、眠るかのように。


 グールの皮膚に瘤が浮かぶ。全身に数十個。それら全てが湿った音と共に蠢くと、皮膚を突き破り拳サイズの蜂が空を舞う。


 「……このグール。解剖して判ったが、魔術を使えるのは脳味噌に蜂の子が湧いてる個体だけ。爆発する術式の個体はそうだった。果たして、一般人の血を吸うだけで魔力が補充出来るのかとな」


 「魔力を伝達する術式。それが蜂の使い魔に付与した魔術なんだろう。毒針にはグール病の呪い。虫自体はあの女の魔力を他人が使えるように加工するモジュールなんだろうさ……今頃石油で腹くだしてなきゃ良いが。まぁ、無理か。少し痛い目にあっても自業自得だろうさ」


 蜂が飛び出ると直ぐに石油化が進行して地面へと落ちる。小さな石油の雫が地面に染み込むのを眺めていると、グールの親玉の肌から色艶が抜け、干からびた死体の様になっている。


 「待て……! 行くな……! 待ってくれ……」


 地面へ溶け消えて行く蜂をかき集める姿は本当に惨めな姿だった。全てを持った男が破滅する瞬間を見る様で見ていられなかった。


 「……結局。あの女に上手く使われただけなんだ。虫同士の伝達に〈老いた赤子〉の術式が混じった。胴元が堪らず手を引いた。そういうとこかな」


 「……俺の人生は何だったんだ……くそ……」


 「……悔やむには遅いよ。申し訳ないが、これで終わりだ」


 リボルバーから3回音が鳴った。〈老いた赤子〉の影響もあってか、倒れたグールの顔はぐずぐずに崩れて原型を留めていない。


 今も尚グズる赤子を見上げて手を伸ばす。


 「もう眠りなさい」


 その言葉とともに見慣れた石油の右腕へと姿が戻る。呪いが解け、左目も元の深い紅色へと戻った。転化してしまったグールはまだそこら中に蔓延っているようだが、事態の収束はもう目の前だ。


 ヘルメースの居る屋根上へと登ると彼女が倒れていた。脈も安定し、呼吸も深い。


 「良かった……生きてる。加減のやり方も上手くなって来たな……」


 ヘルメースを背負って第2セーフハウスの扉をこじ開けた。通信設備が壊れているだけで内部からは人の気配が大勢する。


 地下へと進む階段にグールの女が座っている。理性の残ったタイプ。親玉と同じ系統である。


 「……外の。やっつけた?」


 そうだと返事をすると、心底安心した表情を浮べた。入口で座っていたグールに〈老いた赤子〉の影響がない事が不思議だった。


 「……あぁ。やっぱり、術式阻害が施工されてるのか。あの子の影響も無さそうだ。アンタは?」


 〈老いた赤子〉の使用は賭けだった。これから狩人協会の調査が始まるだろうが、あの術式は少なからず一般人を巻き込んで居るだろう。


 「……地下に来て。ほら」


 「……妙な動きすんなよ。頭をぶち抜くぞ」


 「……何も嵌めようだとか思って無いさ。全員無事だよ」


 エレベーター脇の階段を下りると、生存者がモーガン達の方へと視線を送っていた。いいや、目の前に居るグールの女にだ。


 「……皆さん無事ですか?」


 モーガンが声を掛けると子供達がグールの女へと駆け寄る。女は感染してはいけないと布を鼻と口に当て、子供に離れるようにジェスチャーしていた。


 「……狩人さんかい?」


 「えぇ。あのグールは?」


 「人質を見張ってたグールといえば、聞こえは悪いでしょう。上の男に従うフリをして助けてくれたんですよ」


 「……本当に?」


 モーガンがグールの女へと近づくと、ある提案をした。鍵を掛けた個室での軟禁だ。


 入口にグールが居ては問答無用で襲われる可能性が高い。狩人協会の分析官の到着まで待ってもらう。


 「……ところで。貴方の術式について教えて欲しいんだが。どんな術式を貰った? 憲兵さんが見当たらないが、どこに居る?」


 そう述べた瞬間だった。空気が凍ったかの様に静まり返る。職務上は聴かないといけない話だ。一般人に冷血と揶揄されても、これは譲れることではない。


 「……皆さん、私から1メートル離れて下さい。グールからも離れて。良いですね。銃を抜きます。慌てないで」


 リボルバーを抜いて直ぐに撃てるように構える。先程戦ったグールは膨大な魔力消費を虫の伝達で補っていた。魔力切れであの様な姿にまでなっていたが、魔力の消費量が少ないのなら、いつでも術を使えるだろう。 


 魔力切れで、肉体の硬質化を含む術はもう使えない。避難民を見て安心しきっていた。傷を接着剤で塞ぐのでやっとだ。


 「……クソ。やはりか」


 左脇腹に激痛が走った。幅10センチ程度のナイフが刺さり、血が失われる。刺したのは子供だ。けれど、本人の意志で無い事は直ぐに判った。


 グールの目に光が宿っている。魔術の光だ。暗示だとか支配の術式。


 子供がグールの前に割って入り、女は子供を盾にするように屈んで隠れている。


 「クソアマぁあ!」


 「ヒヒヒ!!……自害なさい。モーガン」


 背負っていたヘルメースを硬い地面へと落として拳銃を咥えた。引き金をしぼると乾いた音が響き渡る。


 「……」


 モーガンの頬が内側から捲れあがって、硝煙が漏れている。女グール顔面には大きな空洞が開いていた。脳髄と混じった蜂の子が地面へと滴り落ち、それを見たヘルメースが悲痛な声を上げた。


 「……う。うげぇ〜。キモい〜キモキモ。ふ〜」


 ライフル弾を吐き出す拳銃からも煙が上っている。重々しい薬莢が捨てられ、鉄材の床を転がるとヘルメースは新たなライフル弾を拳銃へと込める。


 「どら。もう一発」


 鼓膜を突き破るかのような銃声。下顎と上顎の一部が無くなり、幾度かの痙攣を繰り返した後頭から倒れ込む。


 「……気ぃ抜くなって。モーガン」


 「……すまない。助かった」


 「……だから〜。まだ終わってないっての〜」


 奥の部屋から声がすると言い、ヘルメースは奥へと走って行ってしまう。頭の抉れた死体を見て腰を抜かす子供には悪いが、今は彼女のフォローが急務であるとその場に放置してヘルメースを追う。


 「……なぁ、モーガン。射撃は得意か?」


 狭い通路に転化した兵が十数人。見通しの良い場所に狙いやすい的。外す理由が無いと思った思考を掻き消す様に謙遜の言葉を吐き出して気合を入れる。


 「……少しは」


 「カートリッジ式に替えてもらえ。その手でリロード出来るのか?」


 転化させられた憲兵達には悪いけど。 そう言うとポケットから弾薬が浮かび上がる。弾の先端には石油が付着し、リボルバーのマガジンへと自ら収まる。


 空の薬莢をリリースする際に傷口でエジェクターを押す時のしかめっ面を見てヘルメースは笑った。

 ※エジェクター(排莢ボタン)


 「……終わったら酒奢りなさいよ」


 「……子供だろ?」


 「……あぁ? 結婚出来る歳だわ。失礼な」


 「グルド人は18から。獣人はどうなんだ?」


 「え。16。私もぴったり16」


 「子供じゃん。酒は奢れないけど、メシなら良いよ」


 しばらく後、設備の復旧を済ませた後、モーガンが通信設備の前に腰を下ろす。


 「こちら、シェルター2からシェルター4へ。モーガンです。応答願います」


 「シェルター4からモーガン。そちらの状況は」


 「ここの職員全員が転化したため、クラス2のヘルメースと処分。設備を回す為の人員が足りません」


 「こちらシェルター1。向かえそうな人員が余っている。武装した憲兵を1ダース送る。ははは! おい! みんな、シェルター2から連絡きたぞ〜!」


 「シェルター3から、シェルター2。土術使いを派遣できそうだ。今から向かわせる。負傷者は?」


 「私の魔術での負傷者がいるかも知れません。捜索隊の補助も願います」


 「おっけ〜! シェルター1から捜索隊も送るぜ! 待ってろ〜!」


 「シェルター3。こちらから医療スタッフを送る」


 「シェルター4から全シェルターへ。適切なスタッフの分配をこちらで計算します。勝手に人員を送らないように」


 「うるせぇ〜多くても害は無いっつの。おっしゃ〜!オメェら準備しろ!」


 マイクをミュートにしてモーガンは肩を震わせて笑い続けていると外部からの連絡が入ってきた。


 「モーガン。聴こえますか? こちら狩人協会対策本部です。他のシェルターの方々も聞いてください。シェルター1、これはオフレコで。周囲の設備スタッフ以外は退室させるように」


 「シェルター1。対応完了しました。指示願います」


 「では。各シェルターに割り振った救助範囲の再捜査を。火器の補充はグリフィン空輸でシェルター3へ。銃弾はたんまり詰めておく。この街の人間全員殺せる量だ。そして、皆さん大好きな納期の話だ。これから4日後に滅菌を行う。それまでに捜索を済ませて欲しい。街と相談したがこれが限界だ」


 「滅菌?」


 「念の為だ。君たちのシェルター地下には熱が入らない様になってる。クラス9達が事に当たるため、作戦中は各員地下シェルターから出ないように。見た場合は一緒に蒸発させるからな。特にシェルター1。興味本意で地表に出るなよ?」


 「そんでもって狩人達にはこれを伝えて欲しい。大盤振る舞いだ。グール一体につき4000クラウン。記憶映像とともに提出してくれとな。後は好きにしてくれ」


 つづく

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