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母の日記帳②

(ここから筆跡が変わる)



遅くなってごめん姉さん

姉さんが手紙を出した後、また両親と喧嘩してしばらく旅に出てたんだ

まさかこんな事態になっているなんて考えもしなかった

手紙を受け取るのがあと数ヶ月早ければ姉さんが死ぬ事はなかっただろうに


あのね、白雪姫は無事だったよ

だから安心して姉さん


それともうひとつ謝ることがある

色々あって今はあたしが姉さんの後釜に座ってる

でも別に陛下のことは好きじゃないからさ

恨まないでよね


昔からあの男は戦う事にしか関心がないみたいだし全然あたしのタイプじゃない

今はその関心対象に領地を広げる事も追加されてて尚更タチが悪い

ホントなら殴ってやりたい相手だよ



いつも気弱な姉さんがあたしに「お願い!王子様の婚約者の座を私に譲って!」って言ってきた日が懐かしい


お淑やかでお人好しであたしみたいなはずれ者にも気を遣う姉さんがあんな大胆な事を言うなんて思いもしなかった


別に王妃になんてなりたくなかったから譲るのは良かったけど、姉さんが耐えられるか心配だった


王妃になるなんて戦場に行くようなもんだって言ったのに、結局なっちゃうんだもんなあ


これまでの日記、全部読ませてもらったよ

つらかったね

嫁いですぐ姉さんの両親が亡くなったから後ろ盾がないと思って舐められてたんだね

せめて最後は白雪姫との思い出が姉さんを幸せにしてくれたと信じてる



実は手紙に気付いてからはあたしも使用人として姉さんの近くにいたんだよ?

気付かなかったでしょ?

家出ばっかりしてたから変装が得意になっちゃってさ


それに身分がバレたら動きづらくなるから姉さんの周りで何が起こってるのか調べるにはこれが一番だったんだ


結果的に姉さんのこと助けられなかったしあたしの方が無能かもね



で、結論から言うとさ

白雪姫が目を覚まさないって話、嘘だったよ

乳母は姉さんの後釜狙ってたんだ

姉さんが「お医者様」って呼んでたじいさんもヤブ医者だ

2人が結託して姉さんを追い詰めてたんだ


調べ切れてない部分もあるけど、姉さんの日記とあたしが集めた情報を照らし合わせると産後から色々と謀られてたみたいだね

白雪姫が姉さんじゃなく乳母に懐くよう、時間稼ぎのために姉さんに変な薬まで飲ませてたんだ


そして姉さんを死に追いやった「お薬」

これは幻覚剤だよ

この国ではまだ違法じゃないけど近い内に取り締まらないといけないやつだ


姉さんと白雪姫の仲を取り持つことに関してはいい方に働いたみたいだけどね


里帰りと称して消えたヤブ医者追ってる間にこいつのせいで姉さんが城の屋根に登って足を滑らせるなんて


先に乳母と「お薬」の方をどうにかすべきだった


姉さんのことだから高い所から祈れば願いが届くと思ったんでしょ?


そういうところ、ホント単純なんだから

ホント


泣きたくなるくらい素直で単純で困る

もっと長生きしてよ



乳母も乳母に協力してた使用人もみんな始末しといたから、もう白雪姫が利用されることはないからそこは安心してね


後は陛下の出方次第、かな




かわいいかわいい白雪姫は今あたしの隣で寝息立ててるよ

姉さんと背格好が似てて良かった

この子がもう少し大きくなるまでは姉さんのフリが出来そう

家出で身につけた変装術、存分に活用させてもらうよ



でもいつかは話さないと

城の中に真新しい墓が建ってることに気付いたら疑問に思っちゃうだろうからね


あと数年は改築工事中ってことで立ち入り禁止にするつもり

誰もお参りに来てくれない、なんて言って化けて出ないでよ?


ここから数年あたしは姉さんになりきってみせる

変装と演技はセットだからね

よく知った人間の真似なんて容易いもんよ


白雪姫には嘘ついちゃうことになるけど、姉さんが白雪姫とやりたかったことも、白雪姫が姉さんとやりたかったことも全部代わりに出来ることはやってあげたいから


優しい嘘ってやつだ



じゃあ、次は天国で会おうね


あ、でもあたしは地獄かもしれないね…

ま、きっと手紙くらいは書けるよね?

それまでさよなら

姉さん

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