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第六話 招集

 

 ラーディンス王国 王都


 ガタゴトと王城へと向かう馬車に揺られ、ボーっと窓から辺りを見まわす。


 王都というだけあって街並みからかなり発展している事が伺え、大通りの舗装やレンガ造りの建物、路面電車等のインフラも整っており、明治日本を彷彿とさせる。


 ホント、そこかしこに日本人が持ち込んだ技術が組み込まれてるなぁ…


 最初こそ初めての街、それも王都ということでそれなりに興奮していたのだが、見た事のある風景をずっと見せ付けられると次第に興も冷める。


「どうしたの?急に静かになって。もしかして太陽が辛い?」

「ううん、そうじゃないよ。ただ、異世界っていう現実とは遠い場所に来れたって浮かれてたけど、こうも向こうの景色を見せられると、なんだか現実に引き戻された気がして、ね…」


 カルナはそんな俺の様子を見かねてか、どこか心配するような声色で尋ねた。


「…そんなに辛かったの?」

「どうだろう…けど、生きづらいとは思ってたかな」


 身勝手だとは自分でも思うが、誰かの顔色を伺って、思ってもいない心の内を語って、誰からも気に入られる優等生を演じて…

 やりたくもない事を続けるのが嫌になって、ゲームやアニメのような、自分勝手に都合よく生きられる空想の世界に逃げ場所を作った。


 もしかすると俺は、憧れていたのかもしれない。

 異世界なんていう想像上の世界で、地球にいた頃より生き生きとしている主人公に自分を重ねて。

 こんな、自分が思い描くように生きられたら、と。


 そうだ。自分らしく生きればいいじゃないか。

 今生きている世界は地球じゃない、異世界。

 ここにはもう、あの頃の自分はいないのだ。


「ねぇ。カルナさん」

「…何かしら」

「──私の名前。まだ言ってなかったよね」



 *   *   *



「…着いたわ。()()()()

「分かった」


 そう呼ばれた俺は馬車を降り、カルナに連れられ王城の大門から外れた、横にある小さな扉から中へと入る。


 ──あの後、俺は名前を変えた。

 もちろんカルナは本名じゃないことは分かっているし、自分を一新するためという旨も伝えてある。

 ちなみにアルミナは酸化アルミニウムの別名だが、この世界には『アルゥ(純粋)』『ムィナ(自分)』という言葉がある。

 それをもじって、『アルミナ(自分らしく)』だ。




 案内に従ってついて行くと、とある一室に案内された。


「失礼します。賢者様とそのお弟子様をお連れしました」

『通せ』


 扉越しから、若い男性の声が聞こえる。

 案内してくれた人が扉を開け、カルナの後に続いて入室する。

 扉が閉まると、その男は話し始めた。


「返事が無いから、もしかすると届いていないのかと心配したよ。だがそれも杞憂だったようだ」

「返事を書いて送る暇も無かったのよ」

「それで、彼女が君の弟子かな?」

「アルミナと申します。不肖ながら、賢者カルナ様の弟子を名乗らせて頂いております」


 礼を交えてそう名乗ると、意外そうに眉をあげる。


「ほう?姓は無いのかね」

「はい」

「彼女は拾い子よ。適性も高かったから、弟子にしたわ」

「まさか!君が?ハハハッ、なるほど。それほどの何かが彼女にあるということかな」


 …品定めするような視線はあまり気分がいいものじゃないな。


 それを悟られないよう、ポーカーフェイスを貫く。


「ふむ、まぁいいだろう。私はメディオンス公爵家当主、アルフレト・メディオンスだ。よろしく頼むよ。では、今回の作戦についてだが……賢者カルナ。君には、王都に残ってもらう」

「何ですって…?」


 突然の通告に、眉を寄せるカルナ。


「先程までは君に付いてもらう予定だったんだ。弟子なんて連れて来ないと思っていたからね」

「まさか…」

「そのまさかさ。彼女を今回の勇者パーティに加える」

「…アルミナをパーティに加える事に文句はないわ。そのつもりで連れて来たもの。けれど、私を王都に置くのは納得いかない」


 今にも食いつきそうな程剣呑な眼差しを向け抗議する。


 彼の考えは分からないでもない。

 勇者パーティはまさしく、人間の中で頂点に立つ者を集めた人間界の最高戦力だ。つまりその分、街の守りが薄くなる。

 だからこそ、かつての勇者パーティだったカルナを最も重要な都市である王都を守らせることで、安全を確保しようということなのだろう。


 だからといって勇者パーティが弱くなっては元も子もない。

 つまり、俺にもそれだけ期待されているということだ。

 これがコネというやつか。


 カルナもそれは分かっているはずだ。それでも反発しているのは恐らく、俺を心配してのことだろう。

 だが、こればかりはどうしようもない。どちらにしろ、離れることになるのだ。


 未だに口論しているカルナの肩に手を置き諌める。


「カルナさん」

「でも…!」

「大丈夫だから」

「……わかったわ」


 渋々ではあるが、引いてくれた。

 その様子を面白そうに眺めているアルフレトとやらは気に食わないが、相手が公爵という立場である以上無礼を働くわけにもいかない。


「では、受けてくれるという事で間違いはないかな?」

「はい。このアルミナ、謹んでお受け致します」


 これで俺は、勇者パーティとして加わる事が決まった。


ちなみに、アルゥもムィナも全て適当です。

アルミナを崩したくなかったので…(´>∀<`)ゝ

名前の由来は正直に言うと自分でも気に入ってます。

書きながら画面の前でニヤニヤしてましたw

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