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第五話 魔法が使えて嬉しいな、のはずだった…

毎回ギリギリ完成させちまうぜ…

ストックしたいんだけどなぁ…


あれから三ヵ月、俺はようやく魔力制御を完璧に行えるようになった。


「は、ははは……やっと、やっとだ…」

「よく頑張ったわね。まぁ、普通ならあり得ないほど凄惨だったけど…ぅ、思い出すだけで吐き気が…」


魔力の暴走回数、二百回以上。

…正直に言えば、今回の事が軽くトラウマになりそうだった。

カルナは…うん、言うまでもない。何回か泣きつかれたし。


スプラッタ自体は見慣れているだろうが、同じ奴が目の前で何度も体を爆散させる姿をループして見せ続けられるのは相当堪えるはずだ。おぞましすぎて俺には無理。


「それで、まだ時間はあるけどどうする?続けて魔法もやってみる?」

「もちろん!」


荒んでいた心にオアシスが与えられる。

心から渇望し結果手に入れたモノ(技術)、それを試さずにはいられないだろう。


「それじゃあ、まずは水魔法ね。『水球(ウォ・ヴォル)』」


カルナの体に魔力が巡り、青いオーラのようなものが俺の目に映る。

そして、突き出された手の先に握り拳ほどの水の塊が生成され、打ち出された。


「こんな感じなんだけど、できそう?」

「やってみる」


カルナ同様に手をかざし、魔力の動きを誤差なく再現する。

すると手の先に同じ水の塊が生成される。

しかし、大きさが彼女のものと比較するとかなり大きなものとなった。


「おぉ…!」


俺は適正がどうとかよりまず先に、自分の手で魔法を発動できたことに感動を覚えていた。


そして球の形をした水が射出され、近くの木に当たって弾ける。


───嗚呼、これが魔法かっ…!


たったこれだけの事で今までの地獄がすべて報われた気がした。


続けて俺は、土、風と他属性の魔法も使い、満足する頃には魔力が三分の一を切っていた。


「そろそろ戻りましょうか」

「うんっ!」


今の俺はものすごく爽やかな笑顔をしていることだろう。



   *   *   *



翌日、カルナから話があると言われ対面して座る。


「それで、話って何?」

「実は、用事ができてしばらくここに帰れそうにないの」

「それって…」


俺の食料の確保ができない、そういうことだろう。

吸血鬼という種族の特性上、血液の摂取による魔力補給が生命活動を続けるにあたって不可欠なのである。

…実を言えば、血液でなくとも魔力が含まれていればどんなものでも構わないのだが。

しかし、人間が食べられる普通の食料には魔力が極微量しか含まれておらず、どうしても不足してしまうのだ。

魔力を多く含む食材も存在するらしいが、そんなものが流通しているわけもなく、結果的に魔力を保有するものの体液の摂取が最も効率的なのだ。


「あまりあなたを連れて行きたくはないのだけれど、一応聞くわね。貴女も一緒に来る?」

「それ実質選択肢一個しかないじゃん…行くよ。もちろん」

「それじゃあ、まずは服をどうにかしなくちゃね」


今俺が身に着けているのは、転生直後から身に着けていた一張羅のみ。

これまでは魔法でどうにかしていたが、人里に降りる以上これではまずいのだろう。


「しばらくはこれで我慢して頂戴」


そう言って取り出したのは、出会った当初カルナが来ていたローブをもっと地味にしたようなものと靴、そして杖だ。


「この杖は?」

「向こうには私の弟子って紹介するつもりだから、その証明みたいなものよ」


この世界ではどうやら、魔法を教えた教師が教え子に杖を贈る習慣があるようで、今回はそれに(なら)ったのだろう。


「そういえば、用事って何?」

「…魔王討伐よ」

「え」


…え、今?このタイミングで?


「もっと言えば、拒否はできないわ。人類の存亡がかかっているのに断ったら、それこそ人類の敵扱いされるのよ」

「うへぇ…」


ある意味特攻隊と一緒じゃないか…

しかも出立は明日、この家が相当見つかりづらいところにあるため、手紙が届くのが遅れていたらしい。


そして、これもまたテンプレというか…


────パーティメンバー候補が集まり次第、極秘で勇者召喚を行う、と。


これまでの事から、召喚されるのはほぼ確実に地球人。

一体どうなることやら…


カルナに付いていくということは、実質魔王討伐に参加するということになる。

例年は勇者を含め四人のメンバーで討伐に行っていた。要は少数精鋭による暗殺だ。

大規模な軍でないことを理由に全面戦争には持ち込ませず、魔王という事実上の魔族最強を殺害することで人類には魔王を倒し得る力があることを証明し、勝利を収めるといった作戦を行っているようだ。


しかしまぁ、初代がやらかして魔族側に死傷者が大勢出たことで、魔族側も報復という名目で年々人間と戦争をしているようだ。

その度に勇者がRPG気分で『おいた(殺戮)』をやるもんだから一度は勇者召喚を行わないという決定が為されたこともあるようだが、勇者がいないと次第に戦況が悪化、人間側も少なくない損害が出て、敗退寸前というところで結局勇者召喚を行ったそうだ。

そうして恨み辛みが積もりに積もって現在に至る、と。


「…これは初代が悪い」

「でしょう?本当ならすでに終わっていてもいい戦争なのだけれど、お互い強情でね。初めは魔族側の侵略阻止のつもりが、今じゃ報復の(いたち)ごっこよ」

「戦争そのものを起こさせないようにしないといけないってことだね」

「そういうこと。だから今回は国民が反発を起こさないよう魔王討伐という名目ではあるけど、実際のところ条約を結びに行かせるのが目的よ。したがって、魔族側にも死傷者は出せない。それに今はまだあちらも勇者がすぐに来るなんて思っていないわ。その油断している隙を狙って潜入するのだから、もちろん見つかってもダメよ」


─────つまり、『リアル(最高難度越え)で完全ステルス非殺傷』をノーコン(ノーコンティニュー)…いや、ノーリセットでやれと。

…はぁ、BIGB○SSの称号が可愛く見えるぜ…


ヤバい、書き終わって思った。

この設定後々が超ダルい奴だ…

思えばただの学生が種族問題を解決できるかぁ~!!

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