第二話 和解
遅れてすみません…
中々書けなくて結局持ち越しになってしまいました…
なので本日は二話投稿です。
今後ともよろしくお願いしますm(*_ _)m
「じゃあ、一つ目の質問よ…」
「あなたはいったい何者?」
「…恐らく、転生者。前世で死んでここに来た」
「恐らく?」
「予想だけど、本来なら赤子に生まれ変わるはずだった。だけど、何らかの不具合でここに飛ばされたんだと思う。だから、転移と区別があまりついてないんだ」
転移、転生者という単語には特に驚きはないらしい。
いや、この世界では何回か勇者召喚として転移者がいるのか。
…もらった情報通りなら、未だに終結していないようだ。
「二つ目、あなたの前世は?」
「学生。殺人みたいなやばいことはしてないよ」
「…そう」
ここでできる限り無害さを主張しておかないと、その場で送還だ。
何としてもそれは避けねば。
「三つ目、あなたは人間の味方?それとも敵?」
「一番返答に困る質問するんだね…」
「転生者なら、この世界の知識くらいあるんでしょう?」
「まぁそうなんだけど……現状、まだわからないかな。一応人間側のつもりだけど」
「…そう。大体わかったわ」
「…そうだ、一ついいかな?」
「何かしら?」
「この状況ですごく言いづらいんだけど…鏡、持ってない?」
「鏡?どうして?」
「実のところ、ここに来てすぐさっきの魔物に襲われて、状況整理が全くと言っていいほど何もできてないんだ。せめて、自分がどんな背格好をしてるのかくらいは把握したい」
「そう…いいわ。ほら」
彼女は何も無いところから姿見を出現させた。
…正直、何故姿見なんかを持ち歩いているのか不思議ではあるが、今はそれに助けられているのだ。何も言うまい。
ふむ…背丈は160cm前後、髪は光沢のない白銀色で、真っ直ぐ腰まで伸びている。瞳は真紅、ただ瞳孔が猫のそれのように思いっきり縦に裂けているな。顔立ちは…自分で言うのもなんだが、恐ろしく美しい。まぁあくまで自分の感性によるものだが、この世界の人々の感性も似たようなものらしいし、間違いはないだろう。神から与えられたのか、一張羅だが服は着ている。
そして…こちらに来てから今まで無視せざるを得なかった違和感の正体、それもわかった。
どうやら、俺は「女」になってしまっているようだ。
* * *
かなり遅くなったが、改めて状況を整理しよう。まず、転生直前の謎の事故により、今いるどこかの森に飛ばされた。また、その影響か俺は転生直後から女になっている。
これまでの状況から分かっているのは、あの神からもらった知識と、言語理解は正常に機能しているということ。実際、彼女との会話は日本語ではない。
恐らく与えられた能力も使えるだろうが、確認する手段がないためいったん保留。
性転換は…この状況で試すのはまずいな。安全が確保できたうえで改めて確認しよう。保留。
お次は生活面。金は勿論無いし、このまま街へ行っても身元不明な上この姿だ。身分証明書を作るにも金が掛かるし、このままじゃ森で自給自足しか選択肢がない。
もっとも、この人が面倒を見てくれれば最善なんだが…
───一か八か試してみるか…?
「…重ねて悪いんだけど、私を養ってくれない?」
「嫌よ」
デスヨネー
「…って言うところだけれど、面白そうだから、少しの間だけ面倒見てあげるわ」
どうやら、運は俺に味方してくれたようだ。
* * *
あれから少し後、先程の女性──カルナ・ティフォナクルに連れられ、森のさらに奥地にある小さな家に到着した。
「おぉ…」
森の中にあるにしては大層綺麗な家が建っていることに驚く。
こっちよ、と言って彼女は家の中へと入っていった。
中はよく見る普通のログハウスのようだが、床は綺麗にフローリング加工されていたり、机や椅子などの家具には、ほとんど凹凸がなかったり、怪我しないように角が削られていたりと、まるでここだけ日本であるかのように感じられる。
まぁ、さすがにテレビは無いのだが。
「気に入ったかしら?この家、東国の建築家がデザインしたのよ」
「へぇ~…」
いや、絶対にこれ考えたの日本人だろう。
この世界にもこれほどの技術があるのかと思ったが、出身を東国って誤魔化す言い方はラノベでよくあるし、なんならこの世界の東国にはそんな技術はない。
もらった知識がそう言っている。
「それと…さっきはいきなり攻撃してごめんなさいね。この世界の魔族って、人間嫌いな奴らばっかりだから、放っておけなかったのよ」
まさか謝られるとは思っていなかった。
第一印象は最悪だったが、普通にいい人じゃないか。
というか、さっきまで敵だと思ってたやつの頼みを聞くだけじゃなく、自分の勘違いを謝罪するなんて普通の人間にできることじゃないぞ。
「いいよ謝んなくても。確かにいきなり攻撃されたときは驚いたけど、分かってくれただけで嬉しいから」
ホント、あのまま攻防が続いていたらどうなっていたことやら。
「そう言ってくれると助かるわ。疲れてるでしょうし、そこのソファ使っていいから休んでて」
そう言って、彼女は奥へと入っていった。
…ふぅ。やっと落ち着けるって感じか。
正直考えすぎて疲れたから、今にも思考停止しそうだ。
初手からピンチだったからか、いつもより頭が冴えている気がする。
そのおかげで、九死に一生を得たのだが。
もちろん、今の彼女は信頼できると思う。
自慢じゃないが、悠以外にはずっと顔色を窺ってご機嫌取りみたいな生活をしてた俺だ。
表情や声色で自分をどう思っているかどうかは分かる。
…逆を言えば、その辺を作りこまれるとさすがに分からなくなるが…
いや、もう考えるのはよそう。せっかく休めと言われたんだ。ゆっくり休ませてもらおう…
そして俺は目を閉じ、眠ったのであった。