プロローグ
明けましておめでとうございます。
記念していいのかどうか…とりあえずプロローグだけでも書けて良かった…
書き溜め頑張ろ。
西側へ傾いた太陽がのぞく窓際、グラウンドでスポーツをしている他組の様子を眺めながら、半ば上の空で授業を受ける。
「おい綾乃、聞いてるのか?」
「あ、すみません…」
「ったく…」
こんな、つまらない日常。それが嫌いなわけではないが、少し退屈だと思った。
勉強、進路、仕事、人間関係…高校生にでもなれば嫌でも突きつけられる現実。
それが面倒で、そんなことを考えられなくなるほどの刺激を、心のどこかで望んでいるのかもしれない。
「悠、そろそろ帰ろうぜ」
放課後、幼馴染で親友でもある、月海 悠に声をかける。
「響谷か。…悪いけど、今日は一人で帰ってくれる?生徒会で仕事があってさ」
「そっか。分かった」
こいつ、俺と同じような(と言っても雰囲気は正反対なのだが)オタク全開なクセして実は生徒会長をしているのである。
進学を楽にしたいとかなんとか…
別にそんなことしなくても進学に支障は出ないと思うのだが、気分、とのことだ。
仕方ない、幸い懐には余裕がある。
寄り道して帰ろう。
「ありやっしたー」
定型文と化した気だるげな店員の挨拶を聞き流しながら、買ったチキンを手にコンビニを出る。
────うん、美味い。
しかし、こうして一人で帰るのもいつぶりだろうか。
最近はいつも悠と帰っていたからか、一人というのも久しぶりだ。
まぁ少しばかり寂しいと言えば寂しいが。
「おや、あんた、この辺の生徒さんかい?」
この辺りでは見ない制服だからか、おばあさんに話しかけられた。
俺はふっと笑みを浮かべると、
「そうですよ。………高校なんです。ご存じですか?」
「おぉ、おぉ!あそこの生徒さんね!いやぁ近頃物を覚えられなくなってね。うちの孫が似たような制服着てたと思ってねぇ…」
こうやって人に悪印象を与えないよう接するのも手慣れたものだ。
まぁそのせいで優柔不断というか、八方美人になっているような気がする。
────……。………
「…?」
気のせいだろうか?世間話も切り上げ、いざ帰ろうとした矢先である。
――――…ぁ。………
…ふむぅ…、ここで立ち止まっても怪しい奴だし歩きながら考えるか。
――――さぁ。………
気のせい思ったがここまでくるとそうでもないと見える。
セリフ的には何かを促しているようだが。
そうして交差点に差し掛かる。
――――さぁ。逝こう
あ、これはまず…
考えると同時に体が勝手に動き出し、停止を求める赤信号を無視して歩き出す。
おい待て待て待てm…
視界は白く染まり、全身に強い衝撃を受けた瞬間、電源を抜かれたゲーム機のように意識が途絶えた。
* * *
想像を絶する苦痛に途絶えた意識が覚醒した。
身体のあらゆる箇所が熱い。普通であればのたうち回る程なのだが、動かそうとすれば余計に痛むので動くに動けない。
腕、脚、胸…あぁ、今気づいた。呼吸が出来ない。息を吸おうとすれば、咳で吐血する。これはもしかすると肺に肋骨が刺さっている状態なのだろうか。
…今更だが、思ったより自分が冷静なことに驚いている。
いろいろなことが一度に起こりすぎて、パニックが一周回ってしまったのかもしれない。
――――さぁ、こっちへ
…どうやらお迎えのようだ。騒然としていた周囲の音も遠くなっていく。結局、この声に関しても謎なまま人生を終えることになりそうだ。
しかしまぁなんというか…呆気ないな。
こうしている内にも末端から熱が、感覚が抜け落ちていく。
あれだけ熱かった傷が、今ではまるで熱の逃げ道であるかのように冷たくなっていく。
全身から力が抜け、冷たい海に沈んでいくような、意識という光も遠くなっていく。
こうして実際に死を体験するとやっぱり一つくらい考えてしまう。
…即死が良かったなぁ…
俺の意識は、人生は、この瞬間、幕を閉じた。