エピローグ3 -衝撃-
駅前のカラオケ店に着く頃には、全員の表情は戻っていた。響華を除いては、だが。
「まだ気を失っているみたいだな。とりあえずソファに寝かせよう」
店員に貰った番号札を確認し、早足でその個室に向かう。ドリンクバーに寄るのは後にしよう。
指定された個室は、どうやら三階らしいがエレベーターが無い。不便極まりないが響華を担いだ美穂は結構な負担になるだろう。いくら小さいとは言え少女1人担ぐのは体力的にどうだろうか?
「ん?あぁ、ちょっとくらい大丈夫だ」
私の考えている事を表情で読み取ったのだろうか。心までイケメンだとやっぱり違うぜ。
「響華ちゃんをソファに寝かせたら、私がジュース注いで来るわね。美穂ちゃんは休憩してて」
詩織も流石のママ気質で気遣いウーマン。私を産んで育てて欲しいくらいだ。そんな2人を見ていると、私も何かしなくてはいけないだろうか?と思ってしまう。いや、人としてした方がいい。
考えに考えた結果。
「私、トイレ!!」
最低だ。私はなんて愚かで劣悪な人間なんだ。恥をかけ。某女キャラに俗物と言われる事間違いなしだ。何かを考えている様で考えていない悪い所が出てしまった。
体感5分経った頃、一人で卑下しているのにも疲れ、トイレからいそいそと出て皆の待つ個室に戻ろうとした時、何かを感じ取り辺りを見渡した。
なんだこの感覚。初めて感じる不思議な感覚に私は胸騒ぎが止まらなかった。
「聴こえる。この歌声は一体!?」
居ても立っても居られず、私は一目散に声の聴こえる方に走り出した。
ふと曲がり角を曲がった時、偶々トイレに向かう途中だった美穂とすれ違う。
「おいどうした?そんなに急いで」
「聴こえるでしょ!?この声は私達に必要だよ!」
「落ち着けよ。何処の誰かも分からないやつを誘うのか?」
「おっさんでもおばさんでも赤ちゃんでも関係ないよ!絶好のチャンスは逃されないよ!止められても行くよ!」
興奮する私を止めようとするが、生憎今の私には効かない。申し訳ないが一人突っ走らせてもらう。
後少し。後少しで声の主が分かる。
「はぁ...はぁ...ここだ」
少し透けてるドアに顔を近づけて声の主を確認しようとした時だった。
「おい失礼な真似をするな!」
後ろから追いかけて来た美穂に首根っこを掴まれる。
「ご、ごめん」
我に返り一呼吸をする。落ち着け。ここで焦っては元も子もない。このチャンスは絶対に掴んで離さない!
落ち着きながらも私は諦めてはいなかった。
「私、曲がり角で張り込むから退室したと同時に声をかけるね」
「...わーったよ。私もトイレに行きたいし、お前と一緒に居て変な目で見られるのも勘弁だ。まぁ、やり過ぎるなよ」
美穂が私の首から手を離した瞬間に、私達は唖然とした。
先程の美声からは考えれないシャウトが耳に響いたのだ。