貧村へご招待
「じゃあ行ってきまーす!!おもてなしの準備を宜しく!!」
「行ってきます!!」
「はいはい。コウガちゃんもファルちゃんも行ってらっしゃい」
会議があった翌日、俺はまた村から飛び立った。今回は行きたいと駄々をこねたファルも一緒である。
目指す目的地は、小国ミグレア。色々世話になった所である。
「おーいファル。くすぐったいからあんまり背中に触るなよ」
「はっはい!!すいません!!」
「あぁ、手を離せって意味じゃない。飛ばされちゃいけないし、しっかり掴まっとけ」
「はいっ!!ではし、失礼して……」
ファルの手がすっと俺の腋を通り、胸元で左腕を右手が掴んで止まった。
同時に俺の背中にファルの上半身が密着した。うつぶせの俺の上に覆い被さる形になっているらしい。
「うーん……まぁいいや。スピード上げるぞ」
「はいっ」
――ミシミシミシ――
「イデデデデデデデデデ!!!!」
俺が招待しようと思っているのは、王様とあの王女姉妹だ。
おそらく俺が友人だと思っている中で一番有名なのがその三人なので、プロモーターに出来れば最高だ。
断られた時にどうするかは一切考えていない。
そんなことを考えてる間に着いた。
「なかなか懐かしいな。思えば2ヶ月くらい来てねぇわ」
「もうそんなになりますか。長いようで短かったですね」
こないだここで農耕のプロフェッショナルを呼び込もうとしてたけど、大森林のいざこざに巻き込まれて結局来なかったしな。
「おお、屋敷跡はまだ穴だな。埋めてて屋敷でも立てれば良いのに」
「そういえばあの時、下は大騒ぎになってたと思うんですけど」
屋敷がフライング・ホーム化して飛び立った屋敷跡の大穴は未だに手が加えられていなかった。
今回の用事では用が無いのでスルー。
一応あの時メルカバで突っ切った門の前に着地し、大通りを歩いて城に向かう。
ある店の前を通った時だった。
――ガシャァン――
食器が割れるような音が店内から響き、ヒステリックな声が聞こえてきた。
「お前ら分かってんのか!?俺は勇者なんだぞ!?魔人を倒す救世主だ!!そんな俺達から金を取る気か?」
「で、ですが、お客様が飲み食いしたお題は払って頂かないと……」
「だーかーら!!俺達は世界を救うんだぞ!?勘定タダにするぐらいしろよ!!」
「でっですが……」
「あーーぁ!!やる気失せたわ!!小国のちっぽけで不味い店のせいで俺戦う気失せたわーー」
「わ、わかりましたよ。タダで、いいです……」
見たことがある顔の奴が聞いたことのある声で店の勘定を踏み倒していた。
回りにいる女達はパーティーメンバーか?正義が羨ましかったんだろなぁ。
「コウガ様、あれは……」
「ほっとけほっとけ。赤の他人だ」
ほっといて進んだ。
城の正門に着いて、門に進む。
「止まれ!!」
案の定門番にとめられた。
「王と王女姉妹に取り次いで欲しい」
「なんなんだ貴様は?王がお前なんぞと合う訳がないだろう!!」
「今すぐ立ち去れ!!」
うーん、どうしよう。合わないと話出来ないしなぁ……。
「ん?……あっ、あなたは!!」
門番の一人がこちらを指差し、驚愕の表情をした。
「失礼しました。どうぞお通り下さい」
先ほどとはうって変わったかしこまった態度で道を開けた。
「お、おい!!通して良いわけないだろ!!」
もう一方の門番は困惑して押し止めた。
「この方は以前王女様がドラゴンに襲われた時に助けて下さった方だ。問題ない」
「え、いや、え」
「どうぞ」
「おう、ありがとう。……いいのか?」
「ええ。だって……」
門番はいい笑顔で言った。
「気高き幼女である王女様を救ったあなたは英雄ですから!あ、ジェントーさんによろしく言っといて下さい」
鋼牙はなんだか微妙な気持ちになった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「コウガ!!久しぶり!!」
「お久しぶりです。コウガさん」
「プリシラ、ミリアム、久しぶり。元気してたか?」
「うん!!元気いっぱいだよ!!」
「はい!おかげさまで」
プリシラは左腕に、ミリアムは右腕に、それぞれ自分の腕を絡めて密着してきた。
「相変わらず距離が近いな」
「そんなことないよ!!」
「そうですよ!!」
そう言ってグイグイ体を押し付けてくる。
「はいはい、ちょっと所定の位置に戻ろうな。王様が寂しそうだから」
「はぁーい」
アウェイになっていた王様が可哀想になったので戻らせる。
「あー、ゴホン!!仲が良いようで結構だ。してコウガよ、何の用だ?」
「ざっくり簡単に言うと、家族三人で俺の村に遊びに来ない?」
「「「?」」」
「説明すると、俺貧村の開拓始めたんだけど、知名度がなくて金が稼げないから、王族であるあなた方に来て貰って、広めて欲しいなーって」
「分かった!!ねぇ良いでしょお父様!!楽しそうだし!!」
「コウガさんが一緒なら危険もありませんし」
「……そうだな。だが、私には王としての責任があるから、そう簡単にこの国を離れる訳にはいかん。二人で行って来なさい」
「「はーい!!」」
「よろしく頼んだぞコウガよ」
「お任せ下さい、っと」
「じゃあ早速行こうよ!!連れてって!!」
「いや、ちゃんと準備して、飛行船で来て欲しい。護衛とかも連れてな」
「うぅー、分かりました」
「じゃあな!!しっかり準備して待ってっから!!」
「楽しみにしてるよ!!」
「お世話になります」
鋼牙はこの安全管理体制に少し不安を覚えた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「王族がホイホイ外出していいんですかねぇ」
「それだけ信頼してくれてるってことだろ。確かに不安だけど」
「まぁコウガ様が一緒なら大丈夫でしょうね」
「多分な。絶対じゃないけど」
さっさと帰ろうと思っていた時、行きで聞いた声がまた聞こえてきた。
「勇者の俺が貰ってやるっていってんだよ!!さっさと渡せ!!」
「だ、ダメじゃ!!この剣は代々伝わる家宝なんじゃ!!」
「だから使ってやるっていってんだよ!!ゴセンゾサマも俺に使って貰ったほうが喜ぶんだよ!!」
自称勇者にまた遭遇した。自称勇者は爺さんが抱える剣を奪い取ろうと掴んでいる。
「勇者様が使って下さるのです!!ありがたく差し出しなさい!!」
「そうよそうよ!!どうせあんたが持ってても使わないでしょうが!!」
「この剣は孫が冒険者になった時に……」
「ダルいダルい!!いいから寄越せ!!」
必死に剣にしがみつく爺さんを蹴飛ばし、高笑いしながら去っていった。
「……」
「コウガ様」
「あれはさすがにな」
鋼牙とファルは勇者が行った方に走って行った。




