別世界
『さぁ、勝負再開だぁ!!』
「フフフフフ、威勢がよくなりましたねぇ」
ジャンプし、ゴーレムフィストを足場にしてもう一度ジャンプ。勢いそのままに魔人に拳を叩き込む。
魔人は横に移動してかわし、魔法を放つ。火炎弾が直撃したが、当然無傷。
「魔法は効かない、とぉ」
試して見ただけだとばかりに今度は高速で視界から消えた。
《後ろでぇす!!》
後ろに振り向きざまに腕を振るうと慌てて避けた。
アトムのフルフェイスヘルメットには前後左右と頭頂部に魔眼石がくっつけてあるので、ほとんど全方向の視界を持つ。
後ろに回り込むなど不可能だ。
「フフフフフ、戦い難いですねぇ。しかし」
消えたと錯覚する程の速度で一瞬で目の前に来た。
「たかが鎧では上位魔人の拳は止められませんよ」
普通に殴ってきた。確かに普通の鎧では貫かれる程強力なのだろう。普通の鎧なら。
しかし
ーーガッキィンーー
「いっぐぁあああ!!!」
金属音がし、ちょっぴり振動が来ただけだった。タイタニウムの堅さを甘く見てはいけない。
「な、殴った方の手が痛いとは……まさか、アダマンタイト製なのですかぁ!?」
違うけど。
腕を押さえて悶絶している魔人の喉元を左手を伸ばして掴み、持ち上げる。
「ぐ、ぐぅ……」
そのまま首を絞める。必死に腕を殴ったり、指を開こうとしたり頑張っていたが、びくともしない。
弱ってきたところで上に投げあげて右手を後ろに引き下げ、落ちてきた魔人の腹に全力のストレートを叩き込んだ。
体がくの字に折れ曲がり、吹っ飛んでいく。
木を数本へし折り、家屋を貫き、巨木の幹にめりこんでやっと止まった。
「ご、ふっ……素晴らしい、力です……今は逃げるしか無さそうです……」
口から血を吹きだしながらフラフラと飛び上がる。
『逃がすとでも?』
「ええ、逃げさせていただきます」
そう言うと、何か魔法を発動した。黒い靄が魔人の体を包み込む。
「最後に鍛冶屋さん、あなたのお名前を伺いましょう」
『……黒鉄鋼牙。覚えとけ』
「ええ。私はジャワティ。上位魔人のジャワティです。また会いましょう」
『変な名前だな。そして二度と会いたくない』
最後におもいっきりニンマリと笑い、シュルッと靄と一緒に消えてしまった。
「瞬間移動はズルくね?」
誰にでもなく、鋼牙は呟いた。
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台無しなった祭りは流れでお開きとなり、俺と爺さんは直ぐに出発した。
悪いことが連続で起こっているのでさっさと帰りたくなったからだ。
エルフ達に別れを告げ、あの村へと飛び立った。
「エルフ達はもっと森の奥に、他の集落と合併した村を作って暮らすことにしたそうじゃ」
「それがいいよな。人族は容赦なく襲ってくるし、魔力災害も段々こっちに来るはずだ」
「魔力災害?」
「どっかのバカが世界を繋げて上位世界の魔力が溢れかえってんだ。魔物の異常発生が起こってる」
「ほぉー」
「お、見えて来たぞ!!」
「もうか!」
アトムを使ったので魔力に不安があったが、なんとかなってよかった。
無事に着地し、爺さんと一緒に村へと入った。
「……何処だここ」
ついたところは全くの別世界であった。
道は石舗装され、ゴミ一つ落ちていない。
石造りの家が建ち並び、食堂では獣人と人族が和気あいあいと食事を楽しんでいる。
鋼牙が出発する前の廃屋が建ち並んだ廃村の要素は何処にもない、立派な町になっていた。
「あ、コウガ様!!お帰りなさいませ!!」
「ファル!!久しぶり!!ここに何があったんだ?まるで別世界じゃねぇか」
「コウガ様が出発された後、鉄人隊のみなさんがガンガン家を建て替えて、ピエールさん達が道を舗装して、マーガレットさん達が服を作りまくって、たった2日で立派な町になっちゃったんです!!」
本当に凄かったんです!! と手と尻尾をブンブン振り回し、耳をピクピクさせるファルを見てただただ癒やされていた。
「よしよし」
「ふぇ!?きゅ、急にどうしました?」
「無性に撫でたくなった」
「ヒャッ!?み、耳は止めて下さい!!」
「ああ、癒やされる〜〜」
「コウガよ、儂はどうすれば……」
「おお、忘れてた。とりあいず畑見てみてくれ。爺さんには畑のことを一任したい」
「了解じゃ。ではな」
「頼んだぞー」
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「そうだ、コウガ様。昨日、村の近くの山が爆発したんですよ」
噴火のことか?火山があったんだな。しかしファルちゃんあなた、さらっと『爆発したんですよ』じゃないでしょうに。
「で、佐々木さんと田中さんがハイテンションで山の方に行っちゃって戻って来ないんです」
「アイツらが?なんでだろな。後で行ってみるよ」
「ファルちゃーん。ちょっと手伝ってくれなーい。あらコウガちゃん、お帰りなさーい」
「ただいまーーー。お疲れ様ーーー」
「はーい、今行きまーす。では失礼します」
ファルが行っちまった。
やることないし、山にいくか。
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飛び上がって辺りを見回すと、確かに煙を吹き上げてる山がある。
飛んで行ってみると、麓に二人の姿を発見した。
「よう、何やってんの?」
「おお、鋼牙氏!お帰りなさいです」
「我々は今、『温泉』を探しているでござる」
「温泉?」
「はい!火山近くの地下水は温泉である可能性が高いのです!」
「だから今、なんとか地下水を探す方法を考えていたのでござる」
「刺激を与えりゃ湧き出すんじゃね?」
「そんな簡単なもんじゃないのですよ鋼牙氏」
「ふーん。いや、こんな感じでさぁ」
――ゴスン!!――
ゴーレムフィストを地面に思いっきりぶつける。
「鋼牙氏!?いきなり何やってるんですか!?」
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……――
ビシビシと地面に亀裂が走る。
「「「……ん?」」」
――ドバァアアアアアアアアアアン――
亀裂から凄い勢いで温泉が吹き出してきた。
「……ほらな?」
「「偶然だろが!!」」




