魔人
あの散々な未来を見てから。
とりあえずあんなモン見せたババァに八つ当たりし、ストレスを発散した。
「なんつぅもん見せてくれとんじゃこのクソババァが!!!」
「んだとこのクソガキ!!その未来を作ったのは貴様自信だド阿呆が!!」
ボッコボコに返り討ちにされました。
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祭りの会場のはしっこにて。
「あの怪物を人族が倒してくれるなんてな」
「何があるかわかんねぇもんだよな」
二人のエルフが雑談しているところに、紺色の燕尾服を着、シルクハットを被った男が近付いてきた。
「いやはや、おめでたいですねぇ」
ニヤニヤと歯を見せて笑う姿は究極に怪しかったのだが、酒が入ったエルフは怪しみもせずに会話に入れた。
「怪物を倒したという人族の方はどちらにおられるのでしょうか?」
「ああ、コウガとかいう奴でな。あの人だかりの中にいるよ」
「あんな威力の攻撃を撃った奴なのに、なんか怖くないんだよなぁ」
「強者特有の威圧感とかが無いんだよな。大丈夫って感じ」
「あー、それそれ。あんたはどう思……あれ?」
男はいつの間にか消えていた。
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「ね、ねぇコウガ。あんたはいつ帰るの?」
「明日一番で帰るよ。世話に……はなってないな」
「明日、明日か……あ、あのね!!あんたさえ良ければその、私も着いて……いや、あんたの村に行きたいなーって……」
「そりゃ無理だな。爺さん乗っけたら定員オーバーで飛べなくなる」
「やっぱり無理かぁ……」
「っていうか、お前子供だろ?勝手に決めちゃダメだろ」
「失礼ね、私はこう見えて100歳越えてるわよ!!」
「マジで!?その割には芸術点低いな」
「芸術点って何よ」
「女性は胸、腰、尻のバランスが良いほど芸術点が高いんだよ」
鋼牙の父、堅吾の教えである。
「体が貧相だって言いたいの!?てか普通にセクハラよ!!」
「そうですよぉ。大きいも小さいもそれぞれ良さがありますよぉ」
「ジェントーみたいなこと言うな……って、誰だお前」
二人の後ろに突如燕尾服の男が現れた。
歯を見せてニヤニヤ笑う顔から、鋼牙は不思議の国のアリスに出てくるチュシャキャットを思い出した。
「おー、エルフにも変なやつってのはいるんだな。変態は人族の固有なのかと」
「……ちょっとまって。この人エルフじゃないわ」
「ワタシはここの怪物に用がありましてぇ。来てみたら封印されていた山は窪地になっていて困っていた者ですぅ」
「へぇ、怪物に用って、具体的になんだ?」
男はニィっと笑い
「兵器として運用できるかと考えましてねぇ」
「?ちょっと、兵器ってどういうことよ」
「対人族のための、ですよぉ」
「あーー、察したぞ。なんか分かっちゃった」
顔を手で覆い、仰け反る。
ぐいっと体制を戻し、男を指差して言う。
「お前、魔人族だな?」
「ご名答♪」
ーーボッーー
いきなり手のひらから炎を発射してきた。
瞬時に吸収し、衝撃砲で反撃する。
魔人は吹っ飛ばされたが、当たる寸前に障壁を展開していたのが見えた為、ガントレットを構える。
立ち上った土煙からゆっくりと浮遊しながら出てきた。
「フフフフフ、良い攻撃ですねぇ。やはりアナタは脅威になり得るぅ」
「なにいってんだお前」
「怪物が倒されてしまったのは残念でしたが、アレを倒すほどの力を持った者が人族側にいると、とても迷惑なのでねぇ。これ以上強くならない内に、潰しておかないと、でしょぉ?」
「そりゃ困ったな。俺は死にたくないんだよ」
ニヤリと笑い、声を張り上げた。
「エルフ共!!巻き込まれたくなきゃ離れとけ!!流れ弾に当たっても知らんぞ!!」
とりあえずゴーレムフィストを取り出し、周囲に浮遊させる。
(あれ、3つとも操れる……)
《私の精霊としての格が上がったからですかね?》
(そりゃ好都合だ)
「フム、面白い物をお持ちですねぇ」
「この程度じゃねぇぞ。見とけ!!」
ガションガションと音を立てながら鋼牙の背中からアームが伸びるアームの先には巨大な機関銃がくっついていた。
『機関砲 ソドム』
バングに渡した物を巨大化&強化したもの。
秒間数百発の弾丸をばらまき、その一発一発が凄まじい威力を持っている。
実弾を飛ばす仕組みは脳内に図書館レベルの知識を持つ佐々木に協力してもらった。
ゴーレムフィストが拳を作り、突っ込んでいく。
すべてかわされるが、かわした先に機関砲を撃ち込む。
ーードゥルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルーー
避けきれなかった弾が障壁を削る。
このまま喰らっていてはまずいと思ったのか急に距離を詰めてきた。
阿弥陀は障壁があるので効果がないだろうと考え、ゴーレムフィストで進行方向に障害物をつくり、邪魔をする。
一瞬速度が緩んだ隙にソドムを目一杯撃ち込み、障壁を削る。
ついにパリンと乾いた音を立てて障壁が解けた。
と同時に、撃ちまくっていたソドムが弾切れを起こした。
墓掘人と同じ弾を使っているのでどちらの銃も使えなくなった。
「おや、弾切れですかぁ?」
ニヤニヤと気持ち悪い笑みをいっそう気持ち悪くする。
仕方がないのでゴーレムフィストを突進させ、ナイフを投げる。
ーードスッ ドスッーー
避けた先に飛んできたナイフを避けきれず、ナイフが食い込んだ。
「フフフフフ、この程度の攻撃は無駄っ!?」
無駄な攻撃を嘲笑う魔人だったが、急に顔色が悪くなった。
それもそのはず、刺さったナイフはいつかの魔力吸収ナイフなので、スポンジのごとく魔力を奪い取っていく。
「くうっ」
慌てて引き抜いたが、かなりの魔力を吸われたらしく、飛行がフラフラになっている。
「フフフフフ、なかなかやりますねぇ。しかし、やはりこの程度ではどうにも出来ませんよ?」
次の攻撃を考えていると上から煽りがきた。確かにそうだろう。チマチマ削ってもどうにもならない。
かといって近距離では勝ち目がない。魔人の真髄は凄まじい身体能力とさらにそれを強化する身体強化魔法のため、迂闊に近付いてただけで魔道具を破壊される恐れがある。
でも遠距離はもう当たってもくれないだろう。ガントレットの直線攻撃は浪費したせいで冷凍光線ぐらいしか使えない。
「フフフフフ、手詰まりですか?腰の剣を使わないのですか?」
近接戦に持ち込みたいらしい。
「アナタは、強力な魔道具でアウトレンジ攻撃をしたり、魔法を防ぐことが出来るのですねぇ。ですが」
ビシッとこちらを指差して
「自分自身の戦闘能力は皆無ですねぇ。いやぁ弱い弱い。まぁ、天職が鍛冶屋ではねぇ」
「……鑑定か」
「少し違いますねぇ。ワタシのスキルは『ミキリ』。相手の強さ、行動、攻撃を知ることが出来る。ワタシの天職『軍師』に相応しいスキルでしょう?」
バトルマンガの雑魚キャラのように自分の力を語ってくれたおかげで準備ができた。
「俺の力は、強力な武器を造り出すことだ。その武器の力で俺は強くなる」
「……どうしたんですか急に」
「もしものために、造っといて良かったよ」
力が無いなら強化しよう。耐久力が無いなら鎧を着よう。
そんな発想の下造られた、魔導の鎧。
ガシャガシャガシャと、金属が体を覆っていく。
ガントレットも金属に覆われ、義手は金属の部品を接続され、強化される。
下半身と右腕は金属のプレートに覆われ、細かいパーツが関節部分を繋いだ。
頭はフルフェイスヘルメットを被ったように全体が覆われる。
『魔導外装 アトム』
危ない橋を渡りたくない鋼牙が安全接近戦闘するために造られた鎧。
材料はもちろんタイタニウムなので強力な攻撃であっても内部にダメージを通さない。
鎧自体をゴーレムフィストのように動かすので下手すると関節が曲がってはいけない方向に曲がる。




