捕まってから逃げる高度なテクニック
「で、俺が考えた作戦だが」
「うむ。どうやって逃げるんじゃ?」
「まずステップワン。一旦捕まる」
「フォッ!?」
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「ハッハッハッハッ!!!まさか自分から捕まりにくるとはな!!」
大笑いするバカ。確かに落ち着いて見ると耳が尖っている。エルフ耳というやつだ。
「俺は善意の塊だからな。困っているお前らを助けてやりたくなったのさ」
「それは有り難いぜ!!なあケイオス!!」
上機嫌のバカは隣のエルフにも同意を求める。
「二週間も逃げ延びていた人族が、急に逃げるのを止めるなど、何か企んでいるに決まっていますよ」
至って冷静に、冷たくあしらうケイオス。
「そうかぁ?逃げるのが無駄だって気づいたんじゃないか?それに、なにか企みがあったとしてもアレがついてりゃ何にもできねぇよ。ハッハッハッハッ!!」
そう言ってまた大笑いするバカ。
そう、鋼牙達の手には金属の手枷がはまっていたのだ。前に捕らえたときは縄を抜けて脱走された反省を生かしてきたのだった。
確かに金属の手枷がはまっていれば、何も出来なくなるであろう。
だがしかし不運なことに、囚われているのは鋼牙であった。
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《結界を出ました!!すべての魔道具が使用できます!!》
よし。やっぱ一回捕まった方がよかったな。爺さん説得するのにゃ苦労したが。
油断したら、やつらはきっと結界の外まで案内してくれると思ってたんだよ。
「爺さん、奴らの集落についたら仕掛るぞ(小声)」
「了解じゃ(小声)」
森を数時間進んで到着したエルフの集落は、まさに森の人が住んでるって感じの村だった。
地球では考えられないほど太い木に建てられたツリーハウスが視界内の木のすべてにあり、地面にもオシャレなログハウスが沢山建っている。
さながらお伽噺に出てくる秘境の村であった。
健全な男の子である鋼牙はテーマパークに来た子供のようにワクワクしていた。
二人のエルフに引っ張られながら村の中を進むと、大勢のエルフがゾロゾロと家から出てきた。
みんながみんな喜んで、「私達助かったのね」「ああそうだよ、もう大丈夫だ」的な会話が聞こえてくる。聞こえた感じ俺達を哀れむ、申し訳無くおもう奴はいなかった。
その時進行方向に偉い人オーラを醸し出す老エルフがでてきた。
「「長!!只今戻りました!!」」
そう言って跪く二人。やっぱ偉い人だったな。
「うむ。二人共ご苦労じゃった。本当によくやってくれたな」
「「ハッ!!」」
「お前たちも申し訳無く思うが、運が悪かったと思ってくれ」
鋼牙は思った。絶対に申し訳無いとか思ってないと。
「では早速儀式を始めると・・・」
「待って!!」
長と呼ばれる爺さんの声に待ったがかけられた。
「んん?何故止める?アルティスよ」
待ったをかけたのはファルと同年代に見える少女だった。
「やっぱりおかしいよこんなの!!その人達は何も悪くないのに生贄だなんて!!」
お、優しい人もいるんだねぇ。
「コウガよ、あの子じゃ。儂に色々教えてくれたのは」
「ほーう。じゃあ意識があっち向いてる間にやるぞ」
「了解じゃ」
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「アルティス。そもそもこんなことになったのは奴ら人族があんな怪物をけしかけてきたからだぞ?」
「そうだ。だから同情など不要だ!!」
「確かにそうだけど、それをやった人族はあのふたりじゃないじゃない!!」
「だとしても、あいつらの命を捧げないと俺達が滅ぼされるんだぞ!!人族の!!兵器によって!!」
「・・・じゃあ、私が生贄になる!!それでいいでしょ!?」
「だめじゃ!!」
「だめだ!!」
「絶対にだめだ!!」
「えーっと、すんません。お取り込み中悪いんすけど」
急に会話に割って入る鋼牙。
「なんじゃ生贄。貴様はすっこんどれ」
「まぁまぁ、そうカッカッしなさんな。面白いもん見してやるから」
「ああ?」
「はーい、ここに一枚の布がありまーす」
コートの懐からそこそこ大きい一枚の布を取り出す。
「この布を腕にかけまーす」
ちょうど手枷が隠れるように布を被せる。
「アーブラカターブラッとやって布を取ると・・・」
意味ありげに布をもぞもぞ動かし、サッと取る。
ゴトン!!と、手枷が落ちた。
「んなっ・・・え?」
一瞬動揺する一同。
「今だ爺さん!!」
「おうっ!!」
俺の影で準備していた爺さんが飛び出し、俺たちとエルフの間に速攻で作った爆魔石を放る。
ボゴォオオオン!!!!!!!
いきなりの爆発に吹き飛ばされるエルフ達。
俺はふっとばされて横たわるバカに近寄り、捕まった際に没収されたガントレットを取り返す。
「さぁお前ら」
動揺するエルフ達に向かい、ガントレットの衝撃砲を当たらないように放つ。
ゴガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!
強力なエネルギーの波動が飛んでいき、地面に巨大な傷をつけた。
「逆らおうなんて思うなよ?」




