サバイバル爺
全力疾走ランアウェイして、さっきのバカから逃げる。
今の俺はカス程の戦闘能力もないザコなので、戦闘とは死を意味する。要するにとてもヤバい。
《なんとか結界から出ねぇと死ぬ!!》
《惑わせる結界もありますから、多分難しいと思います》
《惑わせる結界って、簡単に言うとなんか迷う結界ってことっしょ?俺は精神干渉無効のスキルを持ってるから、その結界は効かないぞ!!》
《おお!!それならなんとかなるんじゃ……!!》
希望が見えたその時、
「待てやゴラァアアアアアア!!」
「げっ、追っかけて来やがった」
先ほどのバカが追っかけて来た。しかし、身体強化Lv10が良い仕事しており、距離は縮まない。
追っかけてくる足音もしなくなり、逃げ切ったかと思った矢先
――ビシュッ――
――ガスッ――
「ひぅっ!!」
風切り音がし、近くの木の幹にぶっとい矢がつきたった。
ゆっくり振り替えると、二本目の矢をつがえたアイツが不敵な笑みを浮かべていた。
「ショッ!!」
咄嗟に脇へ身を投げ出すことで二本目を回避。
それからは木々の間をジグザグに走り、なんとか回避しながら走った。
しかし、体力が底をつき、足に疲労が溜まり、だんだん危なっかしくなってきた。
気力と根性で走り続け、神様と仏様に外れることを祈りながら避けていたが、
――ガサッ――
なんと、進行方向から大きな狼が出てきた。
狼は俺を認識すると
――ウオォーーーーーーーーン――
遠吠えした。
その遠吠えに呼ばれたのか、追いかけてきている奴と同じような格好の奴がワラワラ出てきた。
その全員が俺を狙って矢を構える。
俺の人生ここまでかと諦めかけたその時
――ボン!!――
――ボン!!――
――ボン!!――
周囲で爆発音が連続して聞こえ、煙が当たりを埋め尽くした。
「グッ!?」
その煙は凄まじい刺激臭で、しかも目に染みる。
「こっちじゃ!!」
涙で滲む視界にガスマスクのようなものを着けた男が見えた。
その男に手を引かれ、俺はその場から逃げ出すことに成功した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「フォッフォッフォッ、危なかったのう。お若いの」
俺を助けてくれたのは、白い髪とひげに覆われ、、人当たりのいい笑みを浮かべる老人だった。
「ああ、助けてくれたんだよな?ありがとう」
「いいってことじゃ。人族どうし助け合わんとなぁ」
「早速だが、質問いいか?アイツらはなんだ?何故俺達を追いかける?」
「うむ、よく聞くのじゃぞ」
儂らを追ってきた奴ら。あれはエルフじゃ。この森のさらに奥深くに集落がある。
何故追ってきたか、じゃったな。話せばながくなるが...
儂は二週間ほど前まで、少し遠くの森で生活しとったんじゃ。
そしたらいきなり奴らがやってきて、捕えられてしもうたんじゃ。
奴らの集落に連れて行かれ、そこでエルフの少女に出会ってな。色々聞いたんじゃよ。
数年前、人族がエルフの集落に攻めてきた。エルフの奴隸は高値で売れるからのう。
しかし、知っとると思うがエルフは全員が魔法の達人。数ばかりが取り柄の人族は撃退された。
しかし人族は諦めんかった。自分の欲望を満たすため、凄まじい兵器をエルフの集落に向かわせたんじゃ。
その兵器はとにかく凄まじく、大魔法を物ともせずつっこんできた。
あっという間にエルフの集落は大ピンチに陥ったのじゃが、エルフ1の魔法の達人が、自らの命と引換えに発動した最強の封印魔法でその動きを止めたのじゃ。
しかし、封印の力が強すぎて、周囲で一切の魔法を使えなくなってしもうたんじゃ。
じゃから、破壊できんまま数年の時が流れ、封印の力が徐々に弱まってきてしもうとるんじゃ。
集落を守るためには封印を再度発動せんといかん。じゃが、封印はそれこそ命と引換え。
そこで目をつけたのが、森で生活している人族。つまり儂じゃ。
儂の命と引換えに、再度封印しようとしたんじゃな。
だが、儂は「じゃあしょうがないのう」とあっさり命をくれてやるような善人ではない。
だから儂は逃げた。必死に身をよじって、なわぬけしてな。
そしたら奴ら、必死こいて追っかけてきてのう。
こんなとこに追い込まれて、あげく結界まではられちまったよ。
まぁ、なんとか生きてきたがの。
「はえーー、頑張ったな爺さん」
「ああ。老体には堪えるぞい。でも、もう終いじゃろうなぁ...」
「なんで?」
「お前さんを助けるために、最後の煙幕を使ってしもうた。次見つかったら終わりじゃ」
「......すまん」
「なに、気にするで無いわ。前途ある若者を助けられたんじゃからな」
カッカッカッと、元気よく笑う爺さんを見て、俺は決心した。
「爺さん。あんた、農耕技術の心得はあるか?」
「ん?儂を誰じゃとおもっとる?五十年間俗世を離れ、この大森林で暮らして来たんじゃぞ?生き残るため、様々な技術をみがいてきた。農耕もじゃ」
「じゃあ丁度いい。爺さん、俺の仲間になれ」
「ええとも。よろしく頼むぞ、お若いの」
「腹減ったな」
「そこら辺の果物やらを食っちゃいかんぞ。すべてに毒があるからな。泉の水もだ」
「マジで!?こっわ……え、じゃあ爺さん何食って生きてきたの?二週間とかいってなかった!?」
「水は草木の葉についた朝露で。食料はこれじゃよ」
爺さんが取り出したのは、暗い茶色の羽を持ち、生意気な触角を生やした虫だった。
「え!?冗談だろ!?」
「いや、マジじゃ。コイツにだけは毒がないんじゃよ」
「だとしても、それ食って生きのびてんのは尊敬するよ」
「いやいや、以外といけるぞ?ほれ、食ってみい」
「いや、いらん」
「若いもんが遠慮するでない」
「これは遠慮じゃなくて拒否だかrモガっ!?」
容赦なく口に突っ込まれた。
「どうじゃ。プチプチした食感がたまらんじゃろ・・・おい、コウガ?コウガ!?」
鋼牙は泡を吹きながら、ビクンビクンと痙攣していた。
後に鋼牙はこう語った。
「まず、噛んだらブチブチって何かが潰れて、次にエビの尻尾の味がしたぜ!」
これを語ったとき、鋼牙はどこか、哀しそうな顔をしていたという。




