なんだコイツ使えねぇ
俺は今、大森林の上空を飛行している。
ミグレアへ向かっているのだが、ぐるっと大森林を回って行ったからあんなに遅くなったのであって、直線距離だったら3日もかからんだろう。俺は飛んでいるから数分ですけどね。
ん……?大森林の方から謎の気配を感じる。(って、精霊が言ってた)
精霊曰く、とても禍々しい気配で、そしてとてつもなく強力な魔物の気配だとさ。
まぁ俺には関係ないね。誰か倒してくれるやろ。
そう思って、俺は気配を無視して飛び続ける。
その時
「うぇい!?」
いきなり浮遊魔法の効果が消えた。浮遊力を失い、推進器のせいで大回転しながら樹海へ墜落した。
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「まだ見つからないのか!!あの人間は!!」
豪華な衣装を纏い、勲章を着けた男が怒鳴る。
彼が怒鳴っているのは、ヘマをやらかした自分の部下達である。
「も、申し訳御座いません!!狩狼や狩鷹を動員して捜索しているのですが、地面の足跡は勿論、匂いまで誤魔化されており、捜索は困難を極めております」
「それでも!!奴を包囲して一週間だぞ!?そして奴が潜んでいる森には食糧となるものはない!!飢え死に寸前のはずだ!!何故出てこない!?」
「わ、分かりません!!泉や果樹などもすべて監視しているのですが、まったく姿を表さないのです!!」
「何か、別な物を食べて生きているとしか……」
「あの地の生物、植物は全てに毒があるのだぞ!?人間が食えるはずがあるまい!!」
「いえ、毒がないものもいますが……」
「それはあのっ……その、アレだろう!?」
「ですが……」
「とにかく探すのだ!!もう封印は持たん!!ヤツが解き放たれれば、我らは終わりだ!!」
「はっ!!」
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「い、いでででで……」
《大丈夫ですか?》
「ああ、なんとかな。ったく、なんで落ちたんだ?」
《どうやら、この地区全体に強力な結界が複数張られているようです》
「結界だぁ?」
《はい。結界から出られないように道に迷わせる結界、如何なる魔法も発動しなくなる結界、その他色々ですね。どれも中の人に害があるものです。しかも、人族にのみ効果を発揮するようですね》
「なんだよその嫌がらせ。……うん、確かに発動しねぇわ」
飛べないことを確認。魔力を込めたが、抜けていく感覚だ。
《泉とかに行ってください。水を介してウィンディーネ様に助けを求めましょう》
「そうだな。助けてもらっちゃお」
鋼牙は泉を探して歩き出した。
そんなに行かないうちに、変な感覚が襲ってきた。 なんか、えも言われぬ不快感だった。
「なぁ、なんかすごいイヤーな感じがするんだが……」
《うーん、それは分かるんですけど、原因は解んないですねぇ》
「マジかぁ」
なんかやだね、なんかあると分かっていながら進まなきゃいけないの。
「おっ、泉があったぜ」
《じゃあ、泉に魔力を流してもらえますか?ウィンディーネ様に呼びかけてみます》
「おっけ、ちょっと待てよっと」
発見した澄んだ水を湛えた泉にガントレットを浸そうとした。
その時
「かかったなアホが!!感知結界にも気付かんとは、とんだマヌケよのう!!」
なんかうるさいのが飛び出して来た。鎧を纏っていて、手には短剣、背には巨大な弓を背負っている。
敵意、というより獲物を見つけたかのような目で短剣を構え、戦闘態勢をとっている。
なんだよ全く、こっちは忙しんだっての。
「あー、すまん。そこどいてくれるか?今ちょっと忙しくてな」
「数日間、どのような手を使って生き延びていたか知らんが、このアルフ様に見つかったのが運のつき!!覚悟せよ!!」
「話を聴け。なんでお前に捕まってやらんといかんのだ」
「貴様は貴重な生け贄なのだ!!なるべく傷つけたくないので、無抵抗でお縄につけ!!」
あ、こいつバカだわ。人の話聞かねぇもん。で、生け贄だと?なおさら捕まれねぇよ。
「悪いが、死にたく無いんでな」
墓掘人を構え、足に狙いをつける。
ガキン!!
引き金を引いた。のだが、発射されない。
撃鉄が薬莢を叩く音が響いただけだった。
「あ、あれ?」
何度も試みるが、ガキンガキンと鳴るだけで、魔石は爆発しない。
「おい、何をやってるんだ?」
「うっせぇ黙れ!!今忙しいの!!見てわかんない?!」
「す、すまん……」
どうしたことだ?何故発動しない?
《いかなる魔法も発動しないんですよ?付与してある爆発が発動しないんですよ》
うわ、マジか。結界の中じゃ銃使えないのか。
まぁいい。俺にはまだスキルを付与した武器が大量にある。
「これはなし」
銃を腰に戻し、阿弥陀を抜く。
構えをとり、切りかかる……切りかかれない。
いつもみたいに体が自動で動かない。
どうしたことだ!?
《……大変言いにくいんですが、付与したスキルも魔法扱いみたいです……》
「oh may god」
あれ?じゃあガントレットも
《使えないですね》
もしかしてヤバい?
《もしかしなくてもヤバいです》
「あー、お前」
「あ、ああ。終わったか?」
律儀に待っていたバカに呼び掛ける。
「あれ、なんだ?」
バカの後ろを指さす。
「え?」
後ろを向き、頭をキョロキョロ動かす。
今だっ!!!!!
「おい、何もない…ぞ……」
振り返ると、そこには誰も居なかった。




