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努力を知らない卑怯者  作者: 自宅警備員Lv9999
第五章:貧村活性化
87/164

農耕

短いです



「うーん……」


 考える。とにかく考える。この状況をどうするか……


「うん!!どうもしなくていっか!!」


 あの村の為にやったことだしな!!俺は間違ってない!!


「あ!!いた!!」


 この声は


「ファルか。どうしt」


「どうした、じゃないですよ!!!いきなりなにやってるんですか!!そしてこの惨状はなんですか!!村は大騒ぎですよ!?」


「いやな、この村って近くに川ないやん?だから川作ってやろうと思ってな!!」


「バカですか!?いいえ、バカです!!なんで一言の相談も無しにそんな危険なことするんですか!!」


「ムシャクシャしてやった。が、反省も後悔もしていない。つか、そこあぶねぇぞ」


「え!?なにが危ないって……」


 ドドドドドドドド……


「え!?え!?」


 ファルが立っている場所は、ちょうど俺が掘った川の底だ。


 まだ水が流れてきていなかったが、今ちょうど流れてきた。


 津波のごとき勢いで。


「い、いやぁあああ!!」


 あわてて反対に走りだそうとするが


「う、嘘」


 ドドドドドドドド……


 川と川を繋いでいる為、当然反対からも水が押し寄せてくる。


「よっと」


 川底へダイブ。おろおろするファルを抱え、飛び上がる。


 間髪入れず、さっきまでいたところを水が飲み込んだ。


「はっはっは!!危なかったな!!」


「…………」


 ファルは黙って俺に抱き付き、強く抱き締めた。


「痛い」


「…………」


「あの…ファルさん?」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ジェントーっ、さっきの振動と爆発音はっ?」


「多分、いえ、確実にコウガ殿ですな」


「まったくコウガちゃんは………」


「あのアホ……」


「鋼牙氏……」


「なにやってんでござる……」


 呆れ返っていたヘレティックスの幹部達。


「はっはっは!お騒がせしたようで!」


 ファルを抱え、意気揚々と戻って来た鋼牙。


「なにやらかしたの?怒らないから言ってごらんなさい?」


「なんでやらかした前提なの!? まぁ聞けよ。俺はこの村の為にやったんだって」


「というと?」


「この村はさぁ、食糧足りてないじゃん?それは分かってるだろ?」


「ええ、税と称して巻き上げられるから蓄えもないし、土地が痩せてるから作物も育たないんだって……」


「うむ。そんな訳で、俺はさっき川を作った。この村のそばを流れる川をな」


「へぇ」


 最早驚かなくなった幹部達。


「だから、森林開拓して畑つくっぞ!!!」


「おー……?」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「で、畑を作る訳だが……」


 集めた村民に演説する鋼牙。先ほどの爆発を起こした奴が鋼牙だと知り、みんな若干怯えている。


「俺は畑づくりの方法が分からん!!農作業なんぞやったことない!!」


 そう、指導出来ない。おそらく村にも農家はいないのだろう。かじった程度の人しかいないと聞いた。


「科学肥料もないですからなぁ……」


「石灰を撒いたら良いとかいってたでござるよ?」


「やり方わかんねぇじゃん」


 現代人三人組は悩む。


 ここで、「私知ってますよ?」「俺出来るぜ?」を期待していたのだが、生憎そんなに都合よくはなかった。


「こりゃ駄目だ。技術指導出来る奴がいるな」


「また仲間集めですかな?」


「そうなんだけど、今回は俺だけでやろう。お前らはこの村の環境をより良くしてくれ。畑も、潤えばマシになるはずだから」


「イエッサ!!」


「了解だっ」


「任せといて!!」


「仲間は男がいいぜ」


「これ以上変態はいりませんからね鋼牙氏」


「慎重に見極めるでござる」


 心配するところがおかしい者が数名。


「わーっとるわい!!」


 思い立ったが吉日。鋼牙はさっそく、その日の内に出発した。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 大森林、奥地にて。


「う、ううう……」


 薄汚れ、ボロボロになった男が、地を這っていた。


「ハラ、減った……」


 その切ない呟きは、彼を追う者達の声と足音にかきけされた。

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