農耕
短いです
「うーん……」
考える。とにかく考える。この状況をどうするか……
「うん!!どうもしなくていっか!!」
あの村の為にやったことだしな!!俺は間違ってない!!
「あ!!いた!!」
この声は
「ファルか。どうしt」
「どうした、じゃないですよ!!!いきなりなにやってるんですか!!そしてこの惨状はなんですか!!村は大騒ぎですよ!?」
「いやな、この村って近くに川ないやん?だから川作ってやろうと思ってな!!」
「バカですか!?いいえ、バカです!!なんで一言の相談も無しにそんな危険なことするんですか!!」
「ムシャクシャしてやった。が、反省も後悔もしていない。つか、そこあぶねぇぞ」
「え!?なにが危ないって……」
ドドドドドドドド……
「え!?え!?」
ファルが立っている場所は、ちょうど俺が掘った川の底だ。
まだ水が流れてきていなかったが、今ちょうど流れてきた。
津波のごとき勢いで。
「い、いやぁあああ!!」
あわてて反対に走りだそうとするが
「う、嘘」
ドドドドドドドド……
川と川を繋いでいる為、当然反対からも水が押し寄せてくる。
「よっと」
川底へダイブ。おろおろするファルを抱え、飛び上がる。
間髪入れず、さっきまでいたところを水が飲み込んだ。
「はっはっは!!危なかったな!!」
「…………」
ファルは黙って俺に抱き付き、強く抱き締めた。
「痛い」
「…………」
「あの…ファルさん?」
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「ジェントーっ、さっきの振動と爆発音はっ?」
「多分、いえ、確実にコウガ殿ですな」
「まったくコウガちゃんは………」
「あのアホ……」
「鋼牙氏……」
「なにやってんでござる……」
呆れ返っていたヘレティックスの幹部達。
「はっはっは!お騒がせしたようで!」
ファルを抱え、意気揚々と戻って来た鋼牙。
「なにやらかしたの?怒らないから言ってごらんなさい?」
「なんでやらかした前提なの!? まぁ聞けよ。俺はこの村の為にやったんだって」
「というと?」
「この村はさぁ、食糧足りてないじゃん?それは分かってるだろ?」
「ええ、税と称して巻き上げられるから蓄えもないし、土地が痩せてるから作物も育たないんだって……」
「うむ。そんな訳で、俺はさっき川を作った。この村のそばを流れる川をな」
「へぇ」
最早驚かなくなった幹部達。
「だから、森林開拓して畑つくっぞ!!!」
「おー……?」
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「で、畑を作る訳だが……」
集めた村民に演説する鋼牙。先ほどの爆発を起こした奴が鋼牙だと知り、みんな若干怯えている。
「俺は畑づくりの方法が分からん!!農作業なんぞやったことない!!」
そう、指導出来ない。おそらく村にも農家はいないのだろう。かじった程度の人しかいないと聞いた。
「科学肥料もないですからなぁ……」
「石灰を撒いたら良いとかいってたでござるよ?」
「やり方わかんねぇじゃん」
現代人三人組は悩む。
ここで、「私知ってますよ?」「俺出来るぜ?」を期待していたのだが、生憎そんなに都合よくはなかった。
「こりゃ駄目だ。技術指導出来る奴がいるな」
「また仲間集めですかな?」
「そうなんだけど、今回は俺だけでやろう。お前らはこの村の環境をより良くしてくれ。畑も、潤えばマシになるはずだから」
「イエッサ!!」
「了解だっ」
「任せといて!!」
「仲間は男がいいぜ」
「これ以上変態はいりませんからね鋼牙氏」
「慎重に見極めるでござる」
心配するところがおかしい者が数名。
「わーっとるわい!!」
思い立ったが吉日。鋼牙はさっそく、その日の内に出発した。
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大森林、奥地にて。
「う、ううう……」
薄汚れ、ボロボロになった男が、地を這っていた。
「ハラ、減った……」
その切ない呟きは、彼を追う者達の声と足音にかきけされた。




