到着
待たせたなぁ!!(ほんっとうに申し訳無い)
「ホンットにこの辺なんだろうな!?」
イライラを隠そうともせず怒鳴る鋼牙。
「だからそう言ってるじゃないですか!!さっきの岩に見覚えがあったし……」
言い返すが、現状を考えると自信がなくなったのか言葉が小さくなるリント。
「ま、まぁまぁ。もう少し探してみましょう」
幼女を庇うジェントー。
彼らはとてもぎすぎすしていた。いや、ぎすぎすしていたのは鋼牙とリントだけでジェントーは低次元な言い争いに半分呆れている。
しかしそうなるのも無理はない。リントが見覚えがあった岩を発見してから約5時間。ずっと周辺を駆け回って集落を探しているのだ。
見つけた時には高かった日がもうすでに沈みかけ、夕焼けが空をオレンジ色に染めている。
「岩だけじゃみつかんねーよ!!もっと思い出せホラ!!」
「無茶言わないで下さい!!こちとら掟で村の外に出たこと無いのに、初めての遠出がこれなんですよ!?迷子になって当然でしょう!?」
「うっせぇ!!帰りたいなら死ぬ気で思い出せや!!ホラ、村からはこんな山が見えたとか!!」
「家からもろくに出たこと無かったんです!!景色なんて知りません!!」
「うっわ、お前引きこもりかよww」
「引きこもりじゃないですー!!自分の家を警備してたんですー!!」
「その言い訳は無理あるぞお前!」
「二人とも!!下らないことで争ってはいけませんぞ!!そもそもコウガ殿は操作中なのですからよそ見してないでって前前前前前前前!!!!!!」
「「え!?」」
横に向き合って口論していた二人がジェントーの警鐘に前を見ると、ちょうど進行方向に薪らしきものを背負った人影が……。
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!??」
「キャァアアアアアアアアア!!??」
「ノォオオオオオオオオオオ!!??」
『ギイャアアアアアアアアアアアア!!??』
必死にブレーキをかけ、ターザンごっこの時のように魔力を放射して無理やり止める。
若干止まらずトンッと当たり、硬直していた人影はよろめきながら尻餅をついた。
「大丈夫か!?」
扉を蹴破る勢いで車外へ飛び出し、人影の正体と安否を確認する。
「あ、あう、あぁぁ……」
尻餅をついて口をパクパクさせ、目の前の理解不能な物体と鋼牙とを交互にみていたのは、薪を背負ったおじさんだった。頭にケモミミをのっけた、だが。
「お、おっさん、あんた獣人か?」
鋼牙としては普通に尋ねただけだったのだが、おっさんには恐怖に感じたらしい。ぶるぶると震え始めた。
「も、申し訳ございません…。の、乗り物の進行を妨害していたようで…」
震える声で何故か許しを乞ってくる。
「え、いや、轢きかけたのはこっちだし、全面的にこっちが悪いんだぞ?謝る必要なんぞないぞ?」
こいつも土下座しだすんじゃないかとヒヤヒヤしながら宥める鋼牙。
そこへ、心配したリントが降りてくる。
「さっきの人は無事でした、か……」
土下座一歩手前の低姿勢のおっさんを目に止めたリントが固まる。
「え、?もしかして、ジョーシンおじさんですか?」
「へ、え!?」
「やっぱり!!かなりやつれてますけどジョーシンおじさんですよね!!私です、リントですよ!!ラルガの娘の!!」
「……あいやぁ……!!本当にリントちゃんかいおえ!?」
「そう言ってるじゃないですか!!」
「いんやー、よくぞ帰ってきたのう!!人さらいにあったと聞いて、二度とは会えんと悲しみにくれとったわい!!」
「私もまさか帰れるなんて思ってませんでしたよ!!」
「そちらの兄ちゃんとおじさんが連れてきたくれたんかい?」
「はい!!途方にくれていた私を救って下さったお二方です!!」
「そっりゃぁ有難い!!お二方、心優しい方とお見受けした。リントが世話になったのう!!」
「おうよぉ!!(暇だっただけとか言えねーーーーー)」
「幼女護り隊、隊長として、人として当然のことをしたまでですぞ!!(下心90%とかは言わなきゃバレないでしょうな……)」
「では、どうぞ我らの村へ!!みすぼらしいですが、感謝の気持ちを……」
「おう、じゃぁお呼ばれしようかね」
「そうですな」
事故りかけたが、運よく案内人をゲットした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「「……oh……」」
「あー、すみません。お二人からしたらごみ溜めですよね……」
じいさんの案内をうけ、やっと念願の村に着いたのはいいのだが……
「…………」
道は舗装などしておらず、ぐったりした子供がチラホラ座り込んでいる。
立ち並ぶ家々も柱四本四角形に立てて適当に板くっ付けましたみたいな廃墟同然のボロ小屋だ。
道行く人々は老若男女全てが何かしらのケモミミをつけ、ケモシッポを生やしている。が、その目には生気がなく、足を引き摺るように歩いているしみんなガリガリに痩せている。
「あ、あぁあああああ!!」
いきなり叫び声が聞こえた。
「り、リントちゃん!?リントちゃんじゃないか!!」
いきなりの大声。声の方を見ると骸骨のように痩せたオバサンが駆け寄ってくる。
そしてリントをその浮き出たあばら骨に沈み混むほどキツく抱き締めた。
「く、クレアおばさん!?」
「人さらいに逢うなんて……だからあれほど子供だけで村の外へ行くなと言っているのに!!」
「うう……ごめんなさぁーーーい!!」
感動の再開なのだろう。オンオン泣きながら抱擁している。
「うぅっ……とにかく、早くラルガのとこに行ってやんな!!ショックでずっと引きこもっちゃってるんだ」
「うぇっ……あ"い!!すぐに向かいます!!」
馴染みがある人と会ったことで辛かった記憶と戻って来れた実感がやってきたのか、泣きながら家があるのであろう方向へ走っていった。
「ふぅ……で、あんたたち」
こっちに向き直るおばさん。
「連れて帰ってくれたんだね?。感謝するよ」
「まぁ、あの娘が諦めていなかったからですな。辛くても立ち向かって行動したから帰って来られたのですぞ」
「ジェントーが、まともなことを……!?」
ジェントーがマトモなことを言ったので隣に立つ鋼牙は戦慄した。
普段はマトモなことを言わないような反応をされている奴に、おばさんはどう対応していいのか分からなかった。
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「お父さぁーーーーーーーん!!!!」
「娘ぇーーーーーーーーーー!!!!!」
鋼牙達が家へ行ってみると、むせびなく筋肉男がリントと抱擁していた。
「すいませーん!!感動の再会しているところ申し訳ないのですが……」
「コウガ殿!!さすがに空気を読みましょう!!」
「嫌だ。早く帰りたい。というか早く帰らないとファルの機嫌が刻一刻と悪くなっちまう」
洋画で言うならハッピーエンドのラストシーンを、鋼牙は容赦なく妨害した。
「な、なんだお前らは!!」
こちらに戦闘態勢をとるお父さん。
「違うの!!この人達が私を連れて帰ってくれたの!!」
「え!?」
「私、拐われてからね……」
それからリントは父親に全てを話した。拐われたこと、逃げ出したこと、街に行ったこと、帰れなかったこと、鋼牙に助けて貰ったこと。
「本当に、ありがとう。君には感謝してもしたりない」
「おう、いっぱい感謝しなさい。そしてたっぷり恩返ししてね」
「あ、あぁ……」
「コウガさん……」「コウガ殿……」
二人はなんとも言えない顔で鋼牙を見ていた。




