俺は努力しないことにした
決意を新たにした鋼牙は、まず戦う手段を見つける事にした。
鋼牙の天職は鍛冶屋。言わずと知れた生産職だが、ドワーフに遥かに劣っていることや、上位互換の存在で役立たずとされている。
しかし鋼牙はスキルを見た感じそんなことは無いと感じていた。
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鋼牙はまず、町の鍛冶屋に行ってみた。
「こんちわ!!誰かいませんか!!」
反応は無い。
「こんちわーー!!!!!」
「うるせぇーーーーーーーー!!!!!」
おもいっきり大声を張り上げると店の奥の鍛治場から怒号が返ってきた。
「ったく大声出しやがって。やかましいんだよ」
鍛治場から身長は低いのにものすごい髭を伸ばしたおっさんが悪態つきながら出てきた。多分ドワーフと呼ばれる種族なんだろう。
「おっちゃんが鍛冶屋か?」
「おっちゃん言うな!!まだ25だ!!」
「す、すんません」
「まったく近頃の若い者は……」
そのセリフが出てくる25は無いだろ。
「で? 何の用だボウズ」
「俺、天職鍛冶屋何だけどさ、何が出来るのかわかんねーんだよ。教えてくれ」
「天職鍛冶屋、か。ボウズ、これまで結構苦労して来ただろ。理不尽だよなぁ、鍛冶屋への扱いは」
しみじみ、といった感じで同情的に言ってくれる。
「本当にな。だから強くなって、アイツらを見返してやるんだ。その為に鍛冶屋に何が出来るのか知りたい」
「鍛治屋に出来ることはそう多くねぇぞ。俺達ドワーフは鉄を打って鍛える事で強力な武器を作り出せるが、お前ら人間はそんなことできねえし、スキルもあんまり役に立たんしな」
「……鍛冶屋のスキルって何が有るんだ?」
「自分の見れば分かるだろ?」
「良いから教えてくれ」
「いいが……金属や石を少しだけ変形させる《錬成》と鉱石や金属の詳細が分かる《鉱物鑑定》だろ」
「!?やっぱりか……」
俺のスキルは《加工》《付与》《改造》《鑑定》だ。《錬成》やら《鉱物鑑定》なんぞ知らん。
「どうした、なんか違ったのか」
「おっさん、俺の天職は鍛冶屋なんだがスキルがおっちゃんが言った奴と違うんだよ」
「なに!?」
「俺のスキルは……」
俺は自分のスキルについて話した。 話を聞き終えたおっちゃんは顎に手を当て、真剣な顔で話始めた。
「ボウズ、その力については誰にも話すな。ボウズのスキルはおそらく加工がとんでもなく難しい金属でも難なく加工できる。国が欲しがらない筈がない。ボウズ、国のお抱えにはなりたくないんだろう?」
「そうだな。お抱えなんぞ願い下げだ。忠告ありがとう」
「いいって事よ。頑張るんだぞ」
この人絶対25じゃない。
鍛冶屋が不遇とされているにしてはスキルが優秀だと疑問に思っていたが、無事解決した。
続いて鋼牙は、付与や改造は魔道具に関係したものだと考え、町の魔法店を訪れた。
「こんちわー」
「はい、いらっしゃい。好きに見てっておくれ」
顔に深い皺が刻まれた胡散臭いおばあさんがいた。
「いや、物を買いに来たんじゃない。魔道具について聞きたいんだが……」
「あんた、魔道具に興味があんのかい?悪いことは言わないから、止めときな」
「何でだ?」
「理由は弱いからと、自分の力にならないからだよ」
「自分の力云々は置いといて、弱いってのは?」
「魔道具ってのはスキルや魔法が付与された道具や武器のことだ」
「うんうん」
「剣術のスキルが付与された剣を持てば赤ん坊でも剣が使える。火炎魔法が付与された杖を持てば赤ん坊でも適正が無くとも火炎魔法が使える。でも魔道具にはLv1までしか付与出来ないし、経験値を吸わないからLvは上がらない。強くないんだよ、魔道具は」
なんだ、そんなことか。
「それでもいい。俺は戦う力が欲しいんだ」
「魔道具に付与された力は自分の力じゃない。魔道具を失えばなにもできない無力な存在に成り下がる」
「……それでもいい。失えば最弱、失わなければ最強だろ?」
「そうかい、なにを言っても聞かないって感じだね。じゃあいいさ。魔道具と付魔方陣、買ってくかい?」
俺は様々なスキルと魔法の付与魔方陣と触媒を購入した。 出費は金貨4枚。 高い。
鋼牙は鍛冶屋に逆戻りし、普通の剣を購入。そのまま宿に帰った。
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とりあえず普通の剣に剣術を付与する。魔方陣の上に剣を置いて『付与~~!!』と念じればできた。
鑑定してみると
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鉄の剣 武器レベル3
剣術Lv1
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この剣を持てばある程度は剣が使えるってことか。
パッシブスキルのレベルは
Lv1 一週間くらい練習したレベル
Lv2 1ヶ月くらい練習したレベル
Lv3 1年くらい練習したレベル
Lv4 一人前レベル。一般的な兵士はこのくらい。
Lv5、Lv6 達人レベル。 エリート兵士はこのくらい。
Lv7 英雄レベル。かなり強い騎士がこのくらい。
Lv8 めっちゃ強い。騎士団長はこのくらい。
Lv9 めちゃくちゃ強い。伝説の勇者はこのくらい。
Lv10 引くくらい強い。現在の剣聖がこのレベル。
となっているとのこと。つまり俺は一週間練習したレベルの腕だ。
あの魔法店のばあ様の話だとここから強くなれないらしいが、俺は違う。
スキル《改造》だ。魔力があればLv10にもできる…はずだ。
確かに自分の力じゃないかも知れないが、知ったこっちゃない。俺は力が欲しいんだ。
剣に他にもいろいろ魔法を付与し、改造してみる。
「いくぞ……おらっ」
剣術を意識しながら全力で魔力を流し込む。
魔力がえげつない速度で失われていき、気絶寸前まできてやめる。
「ハア、ハア、どうだ?」
鑑定してみるがLvは上がっていなかった。代わりに剣術の下に5センチほどのゲージがあり、目を凝らして見ると0.1ミリくらいたまっていた。
「……これだけ魔力がいるってことか?」
スキル《改造》。魔力があればLv10にもできる。 魔力が、あれば。
「魔力がない!!」