まさかの王族
「畜生……畜生……俺のバカ……」
部屋のベッドに腰かけて、俯いて泣く。
「なんでストレージストーンの存在を忘れてたんだよぉ……」
マジで完全に頭に念頭に無かった。
俺が忘れてたせいで思い出ある家が……。
本当に悔やまれる。
使いこなせてないってこういう感じなんだろな。
「まぁまぁ、言うほど思い出無いじゃないですか!!元気出して下さいよ!」
隣に座るファルが必死に慰めの言葉を掛けてくる。
「……確かに言うほど思い出無いな!!」
「そうですそうです!!早く何時ものコウガ様に戻って下さい!!」
そうだよな。ガキみてぇに落ち込んでどうなる。くよくよしてても始まんねぇ。
「ありがとなファル。お陰で復活出来た」
「ふふふ、良かったです。何時ものコウガ様ですね」
「うむ!!じゃあ何しようかな。当分着かないだろうし……アレ?」
「そういえばこの船どこ向かってるんでしょうね?」
「それ聞いて無かったなぁ……」
一番肝心なことを聞き忘れていた。
どっかに聞きに行こうかな。
コンコン
扉がノックされる。
『コウガ殿はおられるか?』
誰だ?
「おう、なんだ?」
扉を開けると、騎士の格好した人が立っていた。
「姫様が来てほしいとおっしゃっております。どうかお越し下さい」
なんか呼び出された。俺何もやってないよね?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【少し前】
「ねぇ姉様、大丈夫かなぁ?」
「きっと大丈夫よ!!テリルは強いもの。ドラゴンなんかに負けないわ!」
豪華に装飾された飛行船の一室で、ドレスを着た姉妹が身を寄せあっている。
妹の方は不安そうにそわそわし、姉の方も気丈に振る舞ってはいるが声が震えていた。
その理由は、先ほどから聞こえる
グォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
ドラゴンの鳴き声だった。
彼女らの護衛達が戦っているはずだが、相手は空の支配者で、空中戦において強さを発揮するドラゴンなので、どうしても不安は拭えなかった。
グァオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
今度は先ほどより大きく聞こえ、一層その身を縮こまらせる。
「ふえぇ……もうやだぁ……」
さすがに恐怖に耐え兼ね、しくしくと泣き始める妹。
その時
「大丈夫だから!!きっと無事に帰れるから!!」
キッパリと言い切る姉。
「どうしてそんなことが言えるの!?ドラゴンがいるんだよ!?怖くないの!?」
泣きじゃくりながら喚く妹。
すると姉は泣きじゃくる妹をヒシと抱き締めた。
体が密着することで妹にも分かった。
姉の体が小刻みに震えていることに。
「私だって、怖いよ……」
今にも泣きそうな声を出す。
「でも、でも、泣いたって何も変わらないよ?」
顔を妹の前に持ってきて、無理やり笑う。
ひきつってはいるが、強く、美しい笑顔だった。
「う"ん" 泣かない!!私泣かない!!」
その笑顔を見て、妹の顔にも決意が宿る。
今、少女は一つの壁を乗り越えたのだ……!
しかし、現実は非情である。
バガァン!!!!!!
『グルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』
いきなり部屋の壁が突き破られ、ドラゴンの巨大な頭が突っ込んで来た。
「キャァアアアアアアア!!??」
「う、嘘……」
少女達は、早くも次の壁、それもとびきり高い壁にぶち当たってしまった。
もはや越えることがバカらしく思えるほど高い壁に、絶望がのし掛かってくる。
『ゴァァ!!!ガォオオオ!!グガァアアアアアア!!!』
二人を認識し、喰ってやろうと体をさらに船体に突っ込み、顎を大きく上下させる。
姉妹は部屋の端の端まで追い詰められた。
扉から逃げようにも扉はドラゴンの射程圏内である為近付けない。
「ね、姉様ぁ……」
「大丈夫…大丈夫だから……」
この極限状態でも妹を庇おうとするところから姉妹愛の深さが伺える。
しかしドラゴンはお構い無しにグイグイ入り込み、安全圏を減らしていく。
そしてあと数十cmでバクッといかれる距離に来てしまった。
「あなただけは……」
「やめて姉様!!!」
自分が喰われている間に妹を逃がそうと、自分から一歩前に出る姉。
人間の鏡である。
最大の悲劇が訪れようとしていた。その時
『アーアアー!!!!!!』
なんとも言えない間の抜けた声が響き渡る。
ドラゴンも動きを止める。
そして次の瞬間
バガァアアアン!!!!!
いきなり飛んできた謎の黒い男が、ドラゴンの頭を素手で粉砕した。
男はこう言ったようだった。
『越えられない高い壁はー♪ぶつかってーぶっ壊してー♪』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「へぇ、ミグレアに向かってんのか」
「はい」
「っていうか知らずに乗ったの?」
さっきの女の子行き先を尋ねると、ミグレアだと教えてくれた。
ミグレアは俺達がいたメイザス王国の少し遠くにある小国である。
「事情が事情だったからな。それより、俺何で呼ばれたの?」
「コウガ様は冒険者だと聞きましたので、冒険のお話をお聞きしたいと」
「ふーん。まぁいいけどよ」
「やった!!」
「では早速……」
「いや、その前にだな」
「なんですか?」「なーに?」
「……近くね?」
俺は今ソファーの真ん中に座っているのだが、その両隣、それもそれぞれが腕に密着するほど近い。
「そうですか?」
「そんなことないよ?」
笑顔で言い、さらに密着してくる二人。
「そうかぁ?まぁいいや。じゃあそうだな……ゴブリン軍団とやり合ったときの話をしよう」
それから俺は二人に俺が経験したことを面白可笑しく語った。
そのうち妹の方がうつらうつらし始めた。
「さっさと寝た方が良いぞ?もう遅いし……」
「やだ……まだ寝たくない……」
「我が儘言わないの。早く寝なさい」
なぜか姉が協力的だ。
「じゃあベッドでお話してよ!!」
「!?」
いきなりとんでもない提案が出てきた。
「いやいや、倫理的な問題がだな……」
「それは名案です!ベッドでお話の続きを……」
賛同する姉。どないしよう……。
「いや、俺も眠いしおいとましようかなーと」
「じゃあ都合がいいね!一緒に寝ようよ!」
「悪化した!!」
ヤバいぞこれは。この要求を飲んだら俺も変態共の仲間入りを果たしてしまう。
よし!逃げよう!
「じゃあ俺はこの辺で!」
すっと立ち上がり、扉に向けて早歩き。
「待っ……」
バンッ!!
扉閉めたあとは全力疾走ランアウェイして自室に逃げ込んだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「はーあぁ、なんだよ。この世界の少女は全員チョロインか」
自分を救った人に惹かれたのか、乙女チックな考えを持つ子供か。
二人とも見た感じ15、6だけどなぁ。
「つかあの姉妹何なんだろ。身なりがいいから貴族かな」
そういえばあの姉妹について何も知らないや。
たぶんミグレアの大貴族だろうな。だからあんなに良い部屋が取れたんだろう。
「明日調べればいっか。寝よ」
布団に横になる。
その時!!俺に秘められし第六感が全力で警鐘をかき鳴らした!!
つまりは嫌な予感がした。
「……戸締まりはしっかりしとくか」
俺は予感に従い、ドアの鍵を加工で開けられなくしておいた。
その夜
『あれ!?鍵が刺さらない!?』
『鍵穴が無くなってる!?』
部屋の鍵を開けようとする二人の少女が、泣く泣く帰っていったそうな。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【翌日】
「おーい」
「ん?ああ、コウガ殿か」
俺は甲板で女騎士を呼び止める。
「どうしたのだ?」
「聞きたいことがあってな」
「なんだ?出来る限り答えよう」
「あの二人の身分についてだ」
「あの二人?ああ、姫様のことか」
「おう。ミグレアの大貴族だとは思うんだが……」
「は?なにいってるんだ?」
一瞬呆けた顔をした女騎士。
「え?」
「プリシラ様とミリアム様は国王レリック・ミグレアの娘、つまり王女だぞ?」
「…………マジで?」
「本気と書いてマジだ」
「今日1びっくりしたわ」
っていうかまて。王女だと!?
「……ヤベェ、不敬罪で捕まったりしないよな?」
「何やったんだお前は……」
「つーかなんで王族が飛行船にのってんだよ!?」
「そりゃこの船ミグレア王国の王室の船だしな」
「…………マジで?」
「本気と書いてマジだ。だからお前が乗せて欲しいと頼んだ時こいつはバカなんじゃないかと思ったな」
「ヤベェ、不敬罪で死刑とかないよな……?」
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