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努力を知らない卑怯者  作者: 自宅警備員Lv9999
第三章:アロア
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さらば、我が家よ



「さて、諸君」


 フライング・ホームの幹部会議室(大きめの部屋)で、鋼牙が重々しい声で切り出す。


「突然だが、このままでは俺達は死ぬ!!」


「本当に突然ですな!!」


「なにがあったのコウガちゃん?」


 驚きはしたが狼狽えない仲間達。


「うん、最初から話すと、今俺達は昔の賢者さんが作った浮遊魔法でこの家を物理法則に逆らって飛ばしてるんだが、問題が発生してな……」


「問題とは?」


「思ったより建物の強度が無かった。あの核一個だとこの巨大な飛行物体は支えられない」


「つまり……?」


「分かり安く言うとこの家は今上昇し続けようとする核に必死でしがみついてる状態だ。だけど強度的な問題でもうすぐ崩れる」


「く、崩れる!?そんな簡単に!?」


「この家急いで適当に作ったから柱とか結構ユルユルなんだよ」


「ユルユルなの!?」


「ど、どうするのですかコウガ様!?」


「ぶっちゃけどうしようもない。補修しようにも材料ないし、核をもう一個作るだけの魔力もないし……」


「……どうすんだ?」


「まぁマッスルあたりは地面に激突しても死なないだろ?」


「俺達は死ぬんだよ!!!」


「なんとかならないの!?」


「うーん、どっかで他の物に乗り移るとか?」


「世界に数えるだけしかない飛行船が都合よく飛んでる訳……」


「大隊長!!!進行方向に飛行船が!!!!」


「…………」


「じゃあ交渉に行くか!!」


 ご都合主義で助かった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「おお!!本当に飛んでるな!!」


 小さくではあるが確かに飛行物体が見える。


 しかし……


「なぁあれ……襲われてね?」


 側にウルトラスーパーファンタジー生物ドラゴンが飛び、飛行船は若干傾いて煙を吹きながら飛んでいる。


 応戦しているのであろう魔法の閃光がチカチカしているのだが、完全にドラゴンの領域なのでいいようにあしらわれている。


「やべぇ!!あれが墜落したらこっちも終わりだ!!」


「じゃあ急いで向かいましょう!!」


「無理だ!!もうこの家全力全開で『浮いてる』だから前に進めない!!」


「どうするんですか!?」


「えーと、えーと、自分達で動かせばいい!!」


「一体どうやって……」


 ファルと俺の視線が田中に止まる。


「ええ!?僕ですか鋼牙氏!?」


「よし!!田中エンジンだ!!」


「エンジン呼ばわり!?」


 早速家の裏にまわり、田中を先頭に一列に並ぶ。


「よしやれ!!とびきりでかいやつ!!」


「いきますぞ!!『天翔るは天空の覇者 一息で全てを吹き飛ばす』『龍の息吹(ドラゴンブレス)』!!!」


 詠唱を終えると同時に田中の手から凄まじい勢いで風が吹き出す。


 俺の魔力を譲渡することで超強化された上級魔法の反動を皆で押さえる。


 すると少しずつ前に進み始めた。


 しかしまだ遅い。


「俺だけ先に行って助けてくる!!後は任せた!!」


「任されたぁ~~!!!!」


 列を抜け、急いで正面に行く。


 そしてゴーレムフィストにながーーーい綱を持たせて飛行船と家の間の上空に飛ばす。


 そう、ちょっと大きいターザンごっこロープである。


「あーー、ゴホン!!!ああーーゲフン!!!よし!!」


 地面を蹴って空中に飛び出した。


『アーアアー!!!!!!』


 お決まりのセリフも忘れずに。


 凄い勢いで飛行船に近付いて行く。


 そのとき、ドラゴンが飛行船に突っ込み、飛行船の一部が大きく破損した。


「げ!!急がんと!!」


 しかし凄く大きい振り子なので、まだ半分に来た辺りだ。


「あ!!」


 破損したところがちょうど部屋の壁だったらしく、ドレスを着た二人の女の子が喰われかけている。


 見てしまったからには助けたいが、ドラゴンが飛行船に張り付いているため熱線が撃てない。


 仕方ないのでありったけの魔力を後ろに噴射して加速するという脳筋な手法を使う。


 そしてやっぱり『アーアアー』と叫びながら、振り子の加速を利用して下投げの要領で飛ぶ。


「ぜりゃい!!!!!!」


パァン!!!!!


 ちょうど口を開けている途中のドラゴンの頭を衝撃を纏わせたガントレットで粉砕した。


「あ、ああ!?」


「い、一体何が……」


 いきなり自分を喰おうとしてた奴が爆発四散したので戸惑う二人。


「よう、大丈夫か?」


 とりあえず声をかけてみる。


「あ、え、えと、ありがとう、ございます……?」


「助けていただいた……んですよね?」


 いきなり飛んできた俺にも戸惑っているご様子。


「まぁそういうことになるかね」


「姫様!!!ご無事ですか!!!」


 バン!!と扉を蹴破って女騎士が部屋に入ってきた。


 そして俺を見ると


「貴様!!何奴だ!!姫様には指一方触れさせんぞ!!!」


 と言って斬りかかって来た。


ガギィン!!!


 上段からの降り下ろしを左手で受ける。


「な……!?」


「おいおい、いきなり酷いなネーチャン」


 素早く刀身を掴み、剣を押さえる。


「き、貴様……!」


 めっちゃ力を込めているらしいが、ちょっと前に強化した俺の握力はマッスルの半分だぞ!!(十分凄い)


「待って待って!!!」


「その方がドラゴンから助けて下さったのです。乱暴は止めなさい」


「え!?」


 先ほど姫様と呼ばれていたドレスの二人の声で、女騎士が力を緩める。


《少女説明中》


 事情を説明すると女騎士は全力の土下座をしてきた。


「申し訳ない!!姫様の命の恩人にとんだ非礼を……!」


「ええねんええねん。お前やったことは騎士として正しいことだ。まぁ少し事情を聞いた方が良かったがな」


「う、その通りだ。面目ない……」


 とりあえず誤解は解けた。


 部屋は大破崩壊しているので場所を移し、事情を説明する。


「なるほど。そういうことでしたらどうぞ乗り移って下さい」


「恩人の恃みですからね!!」


 快く了承してくれた。やっぱ助けて良かったね。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「足元に気ぃつけてな~」


 さっそく家を飛行船に横付けし、乗り移る。


 しかし人数増えたなぁ。最初6人だったのがもう100人規模だもんな。


 結構な数だぜ。マジで国滅ぼしに……いや、止めよう。


「コウガ殿、全員乗船完了ですぞ」


「そうか。では総員一列に並べ!!」


 家に向かって一列に並ぶ。


「総員、敬礼!!!」


 そして先ほどまで乗っていた我が家に敬礼する。


 数秒後


バキバキバキバキバキバキ!!!!!


グギギギギギギギギギギギ!!!!!


ゴォオオオオオン!!!!!!


 家や円錐部分を突き破り、核は飛び出して来た。


 そして支える物がなくなった家はヒューーーーーーーーッと落下していき、


ゴシャ!!!


 という音が遥か下から聞こえた。


 すまない。我が家よ。俺が未熟だったばっかりに……。


 みんなで仲間の死に涙を流す。


 そして全員でもう一度、仕事を終えた我が家に敬礼した。

















「コウガ様、思ったんですけどストレージストーンに入れておけば良かったのでは?」


「……ちょっと取りに行って来るわ」


「待って待ってここめっちゃ上空なんですよ!?マッスルさんじゃないと死にますって!!」


ふと思い出して誤字脱字報告見てみたらめちゃくちゃ来ててびっくりしました。


ホントありがとうございます!!!!


あと宜しければブクマ・感想よろしくお願いします!!!

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