まぁ、頑張って
鋼牙が飛び立ってから数日。
大森林周辺の草原にて。
二人の冒険者が連れ立って歩いていた。
一方が言う。
「いやー、清々したよな!!勇者様に追い出されるなんて!!!」
もう一方も言う。
「あんなクズと変態は追放されて然るべきだよな。ざまぁみろってんだ!!!」
彼らは鋼牙反対派らしく、お互い鋼牙がいなくなったことを喜び、追放した勇者を一層深く信仰した。
「お、森に着いたぞ!!」
「おう。気を引き締めろ!!」
大森林に入り周辺を警戒しつつ前へと進む。
『グギャギャ』
すると正面にゴブリンが一匹現れた。
「っ!!……んだよ、ゴブリンかよ」
「びっくりさせんなっての~」
ある程度のランクである二人はゴブリンの姿を見て安堵の声を上げる。
『グギャァーーーー!!!!!』
しかしゴブリンの方は飛び上がって驚き、脱兎の如く逃げ出した。
「ハーハッハッハ!!!見たかよ今の?傑作だな!!!」
「しかし、良いのか逃がして」
「大丈夫だって!!たかがゴブリンだぜ?」
恐れるまでもないと笑う男。もう一方は心配そうにしながらも男に付いて行った。
しかし、数分後……
『グギャ!!!』
またしてもゴブリンが一匹彼らの前に現れる。
「おい、また来やがったぜ」
「せっかく生き延びるチャンスだったのになぁ」
ハハハと笑いながら剣を抜いた男の動きが止まる。
『グギャッ!!!』
先ほどのゴブリンの横に新たなゴブリンが一匹現れていたのだ。
「仲間を呼びやがったのか?」
「だから逃がさない方が良いって言ったじゃんかー」
驚きはしたものの、仲間を呼ぶことは良くあることなので不思議には思わなかった。
しかし……
『グギャギャ!!!!』
「三匹目?」
「結構呼んだんだな」
「探しに行く手間が省けたな」
『グーギャッ!!!!』
「四匹目……?」
「な、なぁ。ヤバくないか」
『グギャ!!!』
『グギャギャギャ!!!!』
「ま、また……」
『グギギャァ!!!!!』
『グギャギャーーーー!!!!』
「う、嘘だろ……?」
『グギャギャ』『ギャグギャ』『ギャグゥ』『グゥギャ』『ギャガァ』
『ガギャギャ』『ギギャギャ』『ギィギャギュ』『グギュギャ』
『ギェギュヤ』『ギャギィギュ』『ギャギュァァ』『ガギョォ』
いつのまにやら周囲は完全に包囲されていた。
「な、なんでこんなに……?」
ニヤニヤと笑いながらにじりよってくるゴブリン。
「い、いやだ……」
「や、やめろ……」
「「ぎゃぁぁあああああああああああ!!!!!!!」」
二人の絶叫が周辺にこだました。
街の冒険者ギルドにて
「マスター!!!またゴブリンの巣窟の発見報告です!!!」
「マスター!!!ウォーウルフの群れが発見されました!!」
「マスター!!!ダンジョン中の魔物が異常に増えているとの報告が!!!」
ギルドマスターの部屋には次から次へと魔物の異常の報告が入っていた。
どうやら森やダンジョンで魔物が異常発生しているらしい。
マスターは一つ一つに頭を悩ませながら対策を立てていたが、ついに……
「大変です!!!ゴブリン要塞が数ヶ所で同時に発見されました!!!!」
並みの冒険者では対象できないゴブリン要塞が発見された。
この街にゴブリン要塞をなんとかできるクランは少なく、しかもダンジョンなどに出掛けているのがほとんどだった。
「……仕方ない。勇者様にお願いしよう!!!」
下された決断は『勇者に頼る』であった。
直ぐに領主の屋敷に通達され、勇者達が武装して出てきた。
「まったく、なんで俺達がこんなことを……」
「ホントだよな!!ゴブリンごときの対処に勇者向かわせるとか」
「トップがバカなんじゃね?」
『ゴブリンごとき俺達で十分』と言って勝手に出てきた男女二人のパーティーである。
全員がそう思っていたので止めなかった。
勇者達は『じゃあなんでお前らいんの?』とツッコミたくなる愚痴を溢しながら森へ向かう。
「き、君達!!!ゴブリンをなめたら……」
付き添いのAランク冒険者が忠告しようとするが、
「あ~オッサン。俺らを君達とか言っちゃって良いわけ?」
「あーあ、なんかやる気無くすわー」
「く……すみませんでした。勇者様……」
増長した勇者は聞く耳を持たない。
彼らは知らなかった。たかがゴブリンであろうとも、千や万の数で来られたら脅威になると。
もしもあのゴブリン軍団のとき、アリアの計画通り勇者が出撃していたら、彼らも少しは警戒していたかもしれない。
いや、アリアがわざわざ妙な計画を立てて勇者の出撃を遅らせていなければ良かったのだ。
ちっとも警戒しない勇者達はのんびり歩きながら森へ向かっていた。
その時ギルドでは……
「ゴブリン要塞がすべて空っぽになっていました!!!」
「なに!?つまり、ゴブリン共は……」
「一斉にゴブリン軍隊となり、街に進軍しているかと……」
「……頼むぞ。勇者様……!!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「はぁ~~、これから森歩いてそのゴブリンのたまり場にいくんだろ?」
「ダルいな~~」
だらだらと進む勇者達。
そして彼らの前に……
『グギャ!!!』
ゴブリンが!!!!
「あれ?こんなとこにゴブリンが?」
「はぐれたのかな?まぁいいや」
ヒュッ!!!ザクッ!!!
一瞬で距離を詰め、ゴブリンの首を落とした。
「いい暇潰しになったな!」
「茂部君スゴーイ!!!あんな距離を一瞬で移動できるなんて!!!」
「へへっ。それほどでもねぇよ」
おだてられて調子にのる茂部。
「じゃあ気を取り直して行こうぜ!!!」
また進み始めるが
『グギャギャ!!』『グギュギャ!!』
「今度は二匹か」
「じゃあ私達にやらせて!!」
今度は二人の魔導士が前に出る。
『『~~~~~~~~』』
詠唱を終えるとバスケットボール大の火球と水球が一直線に飛んでいき、ゴブリンを吹き飛ばした。
「おう、やるじゃんか」
「えへへ~、私達も結構強いっしょ?」
余裕たっぷりで進む勇者達。
しかし……
『グギャギャ!!!』
「あ?まただよ」
「いい加減しつこ……」
『グギュギャ!!!』
「……もう一匹?」
「!!??いや、違うぞ茂部!!」
彼らの前の林には、暗がりに潜むように凄まじい数のゴブリン達が……。
「う、うおぉ!!!」
「やべぇ!!おい、魔法でなんとかしろよ!!!」
「え、きゅ、急に言われても」
「それにあんな数どうにも出来ないよ!!」
テンパる勇者達。
「落ち着いて下さい!!!数はいますがただのゴブリンです!!落ち着いて取り組めば……」
冒険者が宥めるが
「うっせぇ!!!俺に指図すんじゃねぇ!!」
「言われなくても分かってんだよ!!!」
激昂してオッサンにつっかかるアホ。
「と、とにかくやろう!!」
「おう!!」
茂部ともう一人が剣を構えて突進。
女子二人は大魔法の準備を始める。
程なくしてゴブリンは全滅した。
「はぁ、はぁ、どうだ。やってやったぞ」
「はぁ、結構な数だったな」
「うちら、すごくない?あんな数のゴブリンをやっつけるなんてさ」
「おう。こりゃ正義レベルになるのもすぐだな!!」
冒険者のオッサンはあれぐらい自分一人でもなんとか出来るとか鋼牙はあれの数倍を一瞬で消し飛ばしたとかは言わなかった。オッサンは空気の読める人だった。
しかし、喜びも束の間。
『グギャァァァァァア!!!!!!!』
大きな雄叫びに勇者達が振り替えると、
そこには先ほどのゴブリン達の数百倍の数、しかも上位種がぞろぞろと森からでてきていた。
ゴブリン軍団の『斥候部隊』が殺されたので、『本隊』が到着したのである。
もはや彼らだけではどうしようもなかった。
おもろかったで、続き気になる。
少しでもそう思って頂けたらブクマ・感想お願いします。




