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努力を知らない卑怯者  作者: 自宅警備員Lv9999
第三章:アロア
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鎮火



 燃え盛る屋敷を前に放心していたが、ハッと気が付き、周囲を見渡す。


 俺はファルに屋敷が火事だという報告を受けてすっ飛んできたが、そのファルがいない。


 つまりファルはまだ……。


「コウガ殿!!!」


「大丈夫!?」


 ジェントー達が駆け寄って来る。


 時間的に業務(・・・)を中断してきたのであろう。


「一体どういう……」


 ジェントーが説明を求めてくるが


「説明は後だ!!まだファルが中にいるらしい!!救出すんぞ!!」


「なっ……分かりましたぞ!!」


「まずマーガレット!!舎弟達と共に野次馬を追っ払え!!」


 どこの世界でも人は同じような行動をとるらしく、屋敷の周辺には野次馬が溢れていた。


「分かったわ!!さぁ行くわよ皆!!」


「次に薔薇の花園と田中!!魔法で風を防げ!!とにかく火の粉を逃がすな!!」


『おう!!』


「ええ!?そんな高等テクニック出来るわけが……」


「勇者だろうがなんとかしろ!!そんで幼女護り隊!!屋敷周辺の燃えそうな物を退かせ!!火から遠ざけろ!!」


「分かったですぞ!!さぁ、やりますぞ!!」


「んで鉄人隊!!俺と一緒にファルを救出に行くぞ!!各自行動開始!!着いてこい!!」


『おお!!!』


 皆が己の仕事を全うしようと行動を開始する。


 俺はドアを蹴破り、筋肉共を引き連れて燃え盛る屋敷へ突入した。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「姿勢を低く!!煙を吸わないようにしろ!!」


 学校での火災訓練も役にたつな。


「それぞれバディを組んで、一部屋ずつ念入りに捜索しろ!!」


 とにかくファル見つけて救出せんと。


 念話石に応答が無いため意識失っているらしい。


 一階は筋肉共に任せ、二回へ。それぞれの部屋を見ていく。


 俺の部屋。いない。


 ジェントーの部屋。いない。


 マーガレットの部屋。いない。


 マッスルの部屋。いない。


 そして、ファルの部屋に……いた。


 炎に囲まれてぐったりしている。


「ファル!!!しっかりしろ!!」


 呼び掛けるが応答なし。


 とりあえず抱えて、部屋の壁を破壊して脱走。


 念話を飛ばしておいたので筋肉共も出てくるだろう。


 ファルをバングに預ける。


 素人の俺でも分かる迅速で的確な措置で、たちまちファルの呼吸は落ち着いた。


「とりあいずこれでOKだ。しっかし……」


「誰がやったのか、だろ?んなもん勇者か勇者信者に決まってんだろ」


「何故だ?」


「動機がはっきりしてるし、何よりこの街で俺相手に自信満々でケンカを売れる奴はあのバカ共しかいないだろ」


「……そうだな」


 よくもやってくれたなあのスットコドッコイ共め。


 しかし証拠は無し!!目撃者も恐らく権力で揉み消されて無し!!


 よって摘発出来ない。


 ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"トテツモナクムカツク~~~!!!!!!!


 血管切れそうだ。ファルをこんな目に会わせやがったのに罪に問えないとは。


 つくづくこの世界がいやになる。


 天職といいクソ女といい勇者といい俺に優しい奴がいない。


 ファルは別です。ケモミミ最高!!


「さて、こりゃもうダラダラしてらんねーな。できるだけ早く出発だ」


「……逃げるのか?」


 バングが低い声で聞いてくる。


 ふ、愚問だな。


「そうだけど?」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「はい、という訳でこの街からなるたけ早く出ていくことにしましたー」


 屋敷の焼け跡で円になって座り、緊急会議を開く。


「異論はありませんぞ」


 ジェントーは賛成。


「僕もだっ」


 マッスル賛成。


「アタシもよ」


 マーガレット賛成。


「おうよ」


 バング賛成。


「いいぜ。新しい出会いがあるってもんだ」


 ピエール賛成。


 はい、満場一致で賛成。


「とにかく家財道具を集めとけと伝えろ。3日以内には出てくからな」


『おう!!!』



 静かになった焼け跡で、一人座り込む鋼牙。


「はぁ。めんどくせぇことになったな」


 勇者と対立しているとはいえ放火されるとはな。


 ちなみに放火したのが勇者という根拠は近所の子供の目撃証言である。


 ジェントーには感謝します。 


「まったく、俺達をこの街から追い出していいのかねぇ。まぁあいつらが良いならいいけど」


 

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