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努力を知らない卑怯者  作者: 自宅警備員Lv9999
第三章:アロア
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喧嘩の代償



 大会が思いもよらない事で幕を閉じてから数時間。勇者共は閉会式の間ずっと

こちらを睨んできていたが、世間の目や規則に縛られているため手出し出来ない

ので、悔しげに佇んでいた。


 まぁ勇者三人ボコってるから後々なんかあるだろうな。


 そこはしゃーない。甘んじて受けよう。


 まったく、賢者のメモ帳が欲しかっただけなのに、なんでこんな苦労してんだよ。


 しかしその苦労の甲斐あって、ようやく賢者のメモ帳をゲットした。


 ざっと見ただけでも知らない魔方陣が結構な数描かれている。


 良いものを貰ったぜ。やったね。


 ちなみに司会者へのお仕置きはデコピン一発で許してやった。


『ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"……』


『待って待ってエネルギー溜めないで私が悪かったから許し……』


 バシィン!!!!!!!!


『イダァアアアアアアアアアアアイ!!!!!!!!!』


 閉会式も終わり、勇者に絡まれる前にさっさと帰った。


「いやー、帰って魔道具作るのが楽しみだぁ!!!」


 満面の笑みで言う俺。


「そんなに凄い物だったのですか?」


 隣を歩きながら聞いてくるファル。


「ああ、浮遊魔法とかそんなのまであるし。夢が広がるぜ」


「ほどほどにしてくださいね?こないだ見たいに魔力の使いすぎなんかになったら、もう知りませんから!!!」


「はっはっは、まぁ気を付けよう」


「お願いしますよ?……勇者様の件はどうなるでしょう?」


「いきなり真面目になるなよ……そうだな、まぁ最悪この街を出てくかな」


「またですか……」


「こればっかりはしょうがない。権力的には俺は一般人アイツらは王族となんら変わらねぇ」


「ですが……なんだか悔しいです」


「それは俺もおんなじだ」


 早めに歩いたこともあってわりと早く帰れた。


「ただいまーーーー」


「おお、お疲れ様ですぞ。多分優勝したんでしょうが、勇者とのエキシビションはどうなったのですかな?」


「一応リーダーなんだよ俺。観に来てよぉ」


大事な用事(幼女ウォッチング)があるので(キッパリ)」


「……ういっす」


 まったく仲間甲斐のない奴らだよ。


 ちょっとは観に来てくれたってええやんか……。


「おお、お疲れ様ですぞ鋼牙氏」


「正義君との戦いはどうだったでござるか?」


「お前らも優勝確定かい……」


「「鋼牙氏が負ける訳が無いですからな(ござる)」」


「何故だ……?褒められてるのに釈然としない……」


「まぁまぁ、お疲れでしょう?ご飯にするですぞ!!!」


「腹がグウペコだぜぇ~~~~」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 夕食の席にて。


「そういやお前らのステータス見てなかったな。見せて貰っていいか?」


「「あ"……」」


 急に固まる二人。


「……どした?」


「……見ても、笑わないことを約束してほしいですぞ」


「お願いでござる」


「?いいけど」


「では……」



―――――――――――――――

タナカコウジ 天職;Youtuber


Lv65


ジョブスキル


【踊ってみた】

 一度見た剣技を完全に模倣することができる。


【歌ってみた】

 適正を無視して詠唱した魔法を使うことができる。


【個人情報秘匿】

 自分についての情報を隠したり偽ったりできる。


パッシブスキル

気配察知Lv5 魔力感知Lv4


――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――

ササキコジロウ 天職;オタク


Lv69


ジョブスキル


【オタ芸剣術】

 洗練された体の動きで攻撃をかわし、素早く鋭い振りによって反撃の隙を与えない。


【情報通】

 自分が見聞きした情報を完璧に記憶し、整理する。


【謎多き人】

 自分の情報を隠したり偽ったりできる。


パッシブスキル

危機察知Lv6 筋力強化Lv5


――――――――――――――――――――――


「…………」


 俺はしばし呆然としていた。


 いや、何だよヨウツベラーってオタクって。


 ヨウツベラーはともかくオタクは職業じゃねぇだろ。


 いやそれ以前にthe,ファンタジーのこの世界で何故地球の職業が出てくる?


 ……やべぇ、吹きそう。どっちもイメージにマッチしてる。


「まぁ……強いんじゃね?」


「それはそうでござるが……」


「僕は良かったのですが、佐々木氏は色々苦労があったのですよ」


 ヨウツベラーにしてもオタクにしてもこの世界の人には完全に謎な天職なので、都合よくあったスキルでステータスを偽っていたが、やけに剣の上達が速かったり妙な動きをしたりでクラスメイトの嫉妬からの嫌がらせや『ふざけた動きをするな』と怒鳴られることもあったという。


「どっちも普通に強いだろ。勇者の戦力がダウンしたので俺は満足だ」


「そう言って貰えるとうれしいです」


「ありがとうでござる」


 なかなか強いオタクを仲間に出来た。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 冒険者ギルドにて


「『ジョーカー』コウガ。勇者への暴行により、除名処分とする」


 適当な依頼を受けに来たらこれだよ。薄々予想はしてたが悲しい。


「まぁ仕方あるまい、甘んじて受けよう。今まで世話になった」


 ぶっちゃけ冒険者じゃなくても生きては行けるので、思うところはあるがまぁよかろう。


「……すまん」


 心底申し訳なさそうに謝るギルマス。


「気にすんな。王からの圧力もあったろ?お前は悪くない」


「……それでも、すまん。街を救った英雄に……」


「いいってことよ」


「お前……いいやつだったんだな」


「どういう意味だコラ」


 これで俺の名前はギルドから消滅。じゃあやることは一つ。


「ちょっといいか?」


「はーい……あ、コウガさん。どうされました?」


「冒険者登録をお願いできるか?」


 もう一度始めるだけのことだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あーあ、またFランクからだよ」


「大丈夫です。私が稼ぎますから!!!」


 任せて!!と胸を張るファル。


「いや、冒険者ギルドに納品できねぇなら傭兵ギルドか商人ギルドに売ればいい。大したこたねぇよ」


「むーー、ならいいですけど……」


「なーにむくれてんだよ」


「コウガ様は乙女心が分かっていません!!!」


「そりゃ男の子だしな」


「いやそうゆうことではなくてですね……」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「鋼牙氏!!!!元クラスメイトが申し訳ない!!!!」


「除名されたぐらいだ。大丈夫だよ」


「それだけではないでござる!!!」


「?」


 どういうこっちゃ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『コウガは女を強姦したクズだ!!!』


『大会でも不正を大胆に行った!!!!』


『世界を救う勇者を攻撃した!!!!!』


『コウガは世界に仇なす敵だ!!!!』


 コウガに救われたと考えている一部の住民を除き、大部分の住民は勇者のいうことを信じ、コウガを敵として認識していた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「うーーん」


 首をひねって唸る鋼牙。


「どうしましたかな?」


「なにかあったのかっ?」


 珍しく家にいた二人が訪ねる。


「うむ。二人に質問だ。この国を出てくってったらどうする?」


「事情は分かりませんが、重要な質問なのですね?」


「おう。真剣に答えてくれ」


「私はコウガ殿に忠誠を誓いました。付いていきますぞ」


「僕は君のクランの仲間だっ。付いていこうじゃないかっ」


「お前ら……ありがとう……」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「この国を出ていくことに賛成の人!!!」


 全員挙手。反対なし。


「ありがとう。全隊員に通達しといてくれ。いつかこの国を出る」


「あの~~」


 おずおずと手を挙げるファル。


「どした?」


「百人規模でどうやって移動するのですか?メルカバには乗れませんし……」


「でっかい何かを飛ばす」


「でっかい何かって……」


「まぁ後々考えよう。あと、この街の奴らが勇者にあることないこと吹き込まれて俺のことをよく思っていない。ここも襲撃されるかもしれんから注意しろな」


 本当に面倒臭くなってきた。とっとと他の国に行って安心して暮らしたいよ。

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