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努力を知らない卑怯者  作者: 自宅警備員Lv9999
第三章:アロア
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『降参』の使い方



「どないしょ……」


 俺は過去最高に焦っている。あと10分したらあのなんちゃって勇者と戦わないといけない。


 前に王城に乗り込んだ時正義と剣を交えたが、俺は既に剣術Lv10を持ち、筋力強化もしていたのに押し負けた。


 理由は恐らく奴のスキル『正義漢』。ジェントーと同じようにアイツは己の正義をどこまでもバカみたいに信じている上、己の愚行をも正当化してしまう為超強化されているのだろう。


 それに田中が俺のレベルを見て『正義君より……』と言っていた。俺の方がレベルは高いんだろうが、それでも近いのだろう。


 恐らく100は軽く越えてるだろうな。


 なので俺の『KY』の如く進化しているに違いない。


 もうやだぁ~~~。めんどくさい~~~。


 『本気』でやれば勝てる。多分とか恐らくとかではなく勝てる。


 その場合の『本気』は『爆魔石Ω』のラッシュだがな。


 この町は地図から消える。


 生半可な威力では効かないだろう。俺のガントレットの欠点その1は『手加減が出来ない』なのだ。


 マナストーン以外は対魔物用なのだ。ヒートストーンの熱線を人間相手に撃ったらよっぽど強者でないと致命傷だろう。


 クールストーンにしろエレキストーンにしろインパクトストーンにしろ威力が高すぎる。


 過ぎたるは及ばざるが如しってな。


 『せかいのきゅうせいしゅ』のゆうしゃさまをぬっ殺した日にゃ全世界との敵対は免れまい。


 そんなのは勘弁だ。


 さて、どうするか……。アイツ絶対容赦なく(タマ)狙ってくるだろな。クソ女も居るし。


 戦いたくな……あ、


「戦わなくてよくね?」


 ニヤァ、とワルい笑みを浮かべる鋼牙だった。



◆◆◆◆◆◆◆◆



『さぁさぁ、エキシビションの始まりですよぉ!!!!』


『私、正直コウガさんは逃げるかバックレると思ってました』


『フッフッフ、コウガさんにはまだ景品を渡していないのです!!!つまり戦いを終えない限り帰れない訳です!!!!』


『……コウガさんが物凄い顔で睨んできてるんですが……』


『早く始めましょう!!!コウガさんと勇者様はフィールドへ!!!(ダラダラダラダラダラダラ)』


 あとで覚えてやがれ司会者ぁ……。


 待たせても悪いので早く降りる。俺がフィールドへ着くと正義は既に位置に付いていた。


「やっと来たな。鋼牙」


「言うほど待たせてないだろ」


「そんなことより鋼牙、茂部君を襲ったというのは本当かい?」


「あー、俺が襲ったことになったのか。まぁそうするわな」


「質問に答えてくれないか」


「俺が違うと言ったらお前は信じるのか?」


「いいや……」


 すらりと聖剣を抜く正義。


「勇者として召喚された身でありながら、アリアを強姦し、年端もいかない奴隷の少女をいたぶり、世界の救世主である勇者を攻撃。君は既に許されない次元にいる」


「最後の以外でっち上げだけどな」


「はぁ、もう喋らないでくれないか。君の支離滅裂な言い訳なんて聞きたくないし、その声を聞くだけで怒りが込み上げてくる!!!」


 整った顔を歪めて不快感を露にする正義。


「そう言うな。しかしおかしいな。八雲さんがクソおん……アリアさんの件は冤罪だと証明してくれたが?」


「あの後アリアの使用人、衛兵、近所の住民、全ての情報が一致したんだ。それで、君がやったことが確定したんだよ」


 本当に頭大丈夫かなこいつ。そんぐらいアイツの権力でどうとでもなるだろ。


「ほんっとうに救いようがないなお前」


「五月蝿いな」


 さらに顔を歪める。


「君は知っているか?アリアはあの後悔し泣きしていたんだぞ!!!床に突っ伏して、嗚咽を漏らしながら惨めに泣いていたんだ!!!お前に一生消えない傷を付けられたことでな!!!」


「泣こうと思えば泣けるって八雲さんは言ってたが?」


「あのとき僕の胸の中で流していた涙はそんな偽りのものじゃない!!!僕には分かる!!!」


「……ア、ハイ……」


「あんなに僕達勇者のことを考えていて、いつでも笑顔で話ていたアリアが泣いたんだ!!!この償いはしてもらう!!!」


「へぇ、どうやって?」


「死刑だ」


「厳しい!!!」


 やれやれ、随分面倒くささが加速したなぁ。


「やってみろよ……」


「?」


「てめぇごときがこの『ジョーカー』様に傷一つ付けられる訳があるまい?」


 挑発に乗りやすい正義の眉間に深いシワが刻まれる。


「貴様!!!!五体満足で帰れると思うなよ!!!!!」


 手に握られる聖剣が輝き始める。


 どうでもいいけど俺の呼び方が


君→お前→貴様


 になってる。


『始めますよぉ~~』


 今回も親切に予告してくれるらしい。


 いきなりは不味いからな。


 よーし、おもいっきり息を吸ってぇ~~。


『始め!!!!!』


「覚悟しろ鋼……」


「降参しまーす!!!」


 始まると同時に両手を上に上げ、声高らかに降参を宣言。


「え?お、おま、何故……?」


『おーっとぉ?コウガさんが降参!!一体どうしたのでしょう?伝説の勇者を前に恐れをなしたかぁ?』


 理解が追い付かない正義と騒ぐ実況。


「さーてさてさて」


 俺は自分に出来る最大級のウザイ顔で言った。


「俺を死刑にするんだろ?ほらやれよ。俺は避けねぇぞ?」


「グゥゥウウウウ!!!!!!」


 歯ぎしりして唸る正義。


「どうした?怖じ気づいたのか?ヘイヘーイ」


「あぁああああああああ!!!!」


 地団駄を踏む正義。


「どうしましたかぁ?言語を忘れてしまいましたかぁ?なんちゃって勇者の正義くーん」


「グァアアアアアアッッッ!!!!!!!!!!」


 髪をかきむしって悔しがる正義。


 煽って煽って煽って。


 おそらく俺へのヘイトは限界を振り切っているだろう。


 しかし正義は俺に何も出来ない。


 俺が降参したから。


 降参した相手に攻撃することは卑怯だとして禁止されているからだ。


 つまり今アイツは俺に一切危害を加えられない状態にある。


 だからいくらでも煽れる。


 フヘヘヘヘヘヘ、人をおちょくるのは楽しいなぁ!!!!!

勇者フルボッコを望んだ方も居るかもしれませんが、許してください。

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