ある意味一瞬で終わった試合
『さてさて、続いての試合にいきましょう!!!対戦するのは～～』
ガサゴソと紙を漁る音がする。
『はいっ、『コウガ』と……おっとぉ!!出ました『セドリック』!!コウガ選手は不戦勝となります!』
『素晴らしい強運ですね。二回戦に期待です』
トイレから帰ってきた鋼牙は
「あれ、なんか勝ってる。やった」
首を傾げながらも喜んだ。
一方その頃セドリックは……
「う、うう……ここは……?」
「あらぁ?ここに可愛いいコが座り込んでるわよぉ?」
「あらあら、どうしちゃったのぉ?」
「ひっ、わ、私は卑怯者のコウガに決闘を申し込もうと……」
「あらあらぁ、悪いコねぇ」
「悪いコには、オシオキが必要よねぇ?」
「え、ちょ、離せ!!!嫌だ!!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……」
―――彼の冥福を祈ろう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
大会は進み、名前も知らない人たちが激戦を繰り広げ、新たに3人が二回戦に進出した。
皆が騒いだりざわめいたりしてたから有名人なんだろうが、生憎俺は一人も知らない。
『では、二回戦の組み合わせを発表させて頂きます!!』
今まで完全にランダムだった組み合わせが急に決められる。
なんでもどっかの誰かが無双しすぎて面白くないとの声が上がり、急遽戦力で調整することにしたらしい。
その組み合わせがこちら。
俺 vs ダンカン
アリメロ vs ゴリアイナ
シード ゼリア
『ではでは、早速試合にいきましょう!!コウガ選手とダンカン選手はフィールドへGO!!』
早速出番である。もうちょっと後でも良かったんやで?
これ以上印象を悪くしたくないのでさっさと行く。
ダンカンさんも同時に位置に付いた。
格好からして魔導士かな。
『では、初め!!!』
先手必勝とばかりに魔法をぶっぱしてくるダンカン。
吸収する俺。
ちょっとびっくりしたのか動きが止まったダンカン。
その隙を逃さず阿弥陀で斬りかかる。
「だらぁ!!!!」
思いっきり振り抜くが
ガキン!!!
ダンカンが抜いた剣で防がれる。
『ダンカンさんは珍しい『魔法剣士』の天職を持っておられます。彼は魔法を放ったことで接近してきた敵を剣で斬るという戦法をとっております』
「先に言えよ!!!!」
間髪入れずに斬りかかってくるので気合いでかわす。
「か、髪の毛数本持ってかれた……」
「ふふ、見かけに惑わされていきなり斬りかかって来るとは。ずいぶん頭がお悪いですねぇ」
いきなり毒を吐くダンカン。
「あ?てめぇ、俺をあの脳筋共と一緒にすんのか?」
「脳筋共?ああ、街に来たときにいた馬鹿のことですか?なるほど、あなたが大隊長という訳ですね」
マッスル達を知っているのか薄ら笑いを浮かべるダンカン。
「なるほどなるほど、馬鹿な脳筋共の飼い主はさらに上をいく馬鹿な脳筋というわけですね?」
うざったらしくニヤニヤ笑いながら手を広げる。
「住民達は騙されているようだ!!こんなに馬鹿な集団が街を救えるはずがない!!私のように剣と魔法を両方使いこなす超優秀な人間でないと、そんなことは出来ない!!ましてや最底辺の鍛冶屋ごときが出来る筈がない!!!」
なんか、めんどくさい奴だな。勇者と友達になれそうだ。
「確かにそうだ。俺ぁ剣も魔法も使えない」
「ふふ、まだまだ己の愚かさを思いしってもらいますよ!!」
「でも、こーんなことを出来るぞ?」
俺は煙幕を数個発動させる。
「ふん、愚かな……」
風魔法で吹き飛ばすダンカン。だが、鋼牙の姿は無かった。
「一体どこに……」
そう呟いたダンカンの直ぐ後ろには拳を構える鋼牙が……。
ゴチィン!!!!!
後頭部を籠手で殴られ前に転がる。すぐに立ち上がるもののフラついて真っ直ぐ構えられていない。
「こんなこともできる」
墓堀人を構え、発砲。
ダンカンの剣が弾き飛ばされる。
もう一発発砲。
威力調整された弾丸がダンカンの胸当てにヒットし、後ろに弾き飛ばされた。
「ほれ、どうだ?たかが鍛冶屋、か?」
「ぐ、ま、まだまだぁ!!!」
お、以外と根性あんじゃん。と思ったのだが、
「私が鍛冶屋に負ける筈がない!!!剣と魔法を両方使いこなす超優秀なこの私が最底辺の鍛冶屋ごときに負ける筈が……」
ただの意固地だった。いるよねこーゆー奴。めんどくせぇ。
上段からの降り下ろしを阿弥陀で受け止め、すかさず腹にタイキック。
ダンカンの体がくの字に曲がって吹っ飛ぶ。
「グ、フウ……」
仰向けに倒れて動かなくなった。
『はい、勝者はコウガ選手!!!いやー、容赦ない蹴りでしたねぇ』
『見てるだけの私も痛かったですね』
『ダンカン選手はこないだ話したんですが、自分超優秀他全部馬鹿という残念な思考の持ち主でした。大方戦闘中にコウガ選手を煽ったんでしょうね。それで容赦なく蹴られたと』
『馬鹿ですねぇ。というかコウガ選手はあの謎攻撃を使いませんでしたね。お陰で見せ場が出来て大変満足なんですが』
『そこところも含めて話を聞いて……え?帰った!?』
『またかよぉおおおおおおおおおお!!!』
何者にも縛られない。そんなんだからユニークスキルが自己中になるのだ。
