来やがった
Bランクに降格処分になり、クランのランクもBになってしまった。英雄を降格にしたことで市民からの反発もあったらしいが、領主さんが鎮圧したらしい。
絶対王政がまかり通るこの世界。王様の機嫌を損ねたら理不尽死刑もあり得るので、賢い判断だと俺は思う。
SSランク位になると『ケンカ売ったら死ぬ』という認識をされるが、Sランクだと『かなり強い奴』ぐらいの認識なので、利用するだけ利用しよう、となる。
そもそも騎士団がいるから低級のクラン敵にまわしても大丈夫なんだろう。
まぁ地位には拘らないし、この街でのメンバーの奇行も笑って許して貰えるようになったので満足している。
信用とは大切なのだ。
◆◇◆◇◆◇◆
「さっそくですが皆さん!!!俺は三日後の武闘大会に出場しようと思います!!!」
「勇者が出るって奴か?」
「何か欲しい物でもあるの?」
「一位の景品は知ってるだろ?どうしても欲しいんだよ」
「え……?」
何故ショックを受けるんだファルよ。
「あらあら、コウガちゃんも男の子ねぇ」
「クッソ、お前にゃあファルちゃんがいるだろが!!まだ足りねぇのか!!」
「フフ、コウガ殿も隅に置けませんなぁ」
「あ?何言って……」
ニヤニヤしたり悔しがる奴らに?を浮かべていると、急にファルが腹に抱きつき、涙目で訴えてくる。
「コウガ様はファルではダメなのですか?捨てないでください!!お願いしますぅぅ!!!」
「いや捨てないよ。なんだよお前ら」
閑話休題
「あー、成る程。一位のメイン景品はワルキューレって奴らと1日過ごせる権利だから、俺がワルキューレのファンだと思ったと」
「あ"い"」
「そんなに泣くな。でもよ、仮にそうだとしてもファンだからってワルキューレって奴らに恋は無いだろ」
「コウガ様、それがあり得るのですぞ。そもそもワルキューレというのは……」
ジェントー曰く、ワルキューレは団員全員が女性、それも超絶美女、美少女で構成された騎士団なのだそうな。
そんな美の集団にはファンもおり、アイドルのような立ち位置なのだが、そのファンというのがとにかく過激で、駐在所に乗り込んで会おうと考える奴はまだいい方で、道場破りのようなマネをして会おうとする奴、戦闘中に体を触る奴、手で掴んで止められる為に暗殺しようとする奴、「俺だけの物にぃぃ!!!」とか言って殺そうとする奴、「今目が合ったよね?やっぱり俺のこと好きなんだ!!」とか言ってくるアタマ沸いてる奴。
極めつけは農村やら商人の馬車やらを襲い、出動してきた彼女らに会おうと考える奴。
『ワルキューレのファン』=『キチガイ』という謎の方程式が成り立つ程に過激なのだという。
「へー、でもワルキューレには興味ないぞ俺」
「本当ですか!?」
ガバッと体を起こし、生気が戻った目で喜びを訴えるファル。
「ホントホント。俺が欲しいのは『賢者のメモ帳』ってヤツだ」
「珍しいもの欲しがるわね……。あれ多分とっても適当に突っ込まれた景品よ?」
「賢者だぞ?なんか凄い魔法の魔方陣が書いてあるかもしんねぇだろ」
「なるほど……?」
「ワルキューレのファンじゃないなら安心です」
◆◆◆◆◆◆
ついに……この日が来てしまった……。
「遂に来られる日が来たな!!」
「ああ!!この世界を救う勇者様だ!!きっと話のネタになる!!」
「一目でも見れれば自慢できるかもな!!」
「勇者様御一行は正午に到着なさるらしい。おもてなしの準備を急がせろ」
『ハッ』
|勇者共《二度と会いたくない奴ら》がやって来る。逃げたい……。
絶対クソ女もくるやん。見っかったらめんどくさなるやん。イヤやイヤや。
「コウガちゃんは外出しない方がいいかもねぇ」
「それだとなんか負けた気がする」
「コウガちゃん……」
正午。
街の住民は門に殺到し、巨大な人団子が出来ている。パッと見虫がえげつない数群れてる見たいだ。
「あっ!!!来たぞ!!!」
一人が叫び、空のある一点を指す。
そっちを見ると空に黒い点が見える。その点は徐々に大きくなっていき、グングン近づいていることが分かった。
「oh……ファンタジーだぜ……」
街を覆う黒い影。巨大なガレオン船が上空に浮かんでいるのだ。
凄いな。どうやって造ったんだろ。いつか造りたい。
ガレオン船は門の外、近くの草原に着陸し、中からぞろぞろ人が出てきた。
騎士、魔術師、かつてのクラスメイトの面々、そして憎きクソ女。
勢揃いでやってきやがった。
◆◆◆◆◆◆◆
「さーて、イヤやとか言ったけど、奴らに会わなきゃいいんだよ。そして奴らがここを彷徨くはずがない」
「コウガ様、それは『ふらぐ』というヤツです」
立った、フラグが立った!!てか?
現在俺はファルと街を散歩している。会いたくない。でも引きこもってたらなんか負けた気がする。
なので散歩という形で落ち着いた。
皆自由にどっか行っちゃったのでファルと一緒だ。
「コウガ様コウガ様、鶏肉の串焼きですよ!!」
「ん、確かにうまそうだ」
「コウガ様コウガ様、オーク肉の丸焼きですよ!!」
「香ばしいな」
「コウガ様コウガ様、あそこにジェントーさんがいますよ」
「んあ?」
『グフフフ、見られているとも気付かずに……ああーーー可愛い!!愛らしい!!抱きしめたい!!無理やり押し倒してペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ……』
「……見なかったことにしなさい……」
「……はい……」
記憶から汚い部分を抹消して再び歩き出す。
『アーーーーーーーーーーーーー!!!』
「コウガ様、今裏路地から叫び声が……」
「キノセイダヨウンホウントウニキノセイナンダヨ」
「は、はい。あっ、マーガレットさんだ!!」
「おお、やっとマトモなヤツが……」
『ふふ、見てこの唇』
『えぇ~、スッゴいプルプル~』
『どこで買ったのぉ~』
『うふふ~、これはね~』
『あ、あなた!!この服素敵ねぇ!!』
『わかっちゃう?お姉さまに仕立ててもらったのぉ~』
『え~~、う~ら~や~ま~し~い~』
引き締まった大柄なオネェ達が野太くたくましい声でギャルのようにペチャクチャ喋っている。
「あ、マーガレットさんじゃありませんでした」
「そうだな。間違えても仕方ない」
さらに進む。
『フンッフンッフンッフンッフンッフンッフンッ』
「ペースが落ちてるっ。もっと踏ん張れっ!!」
兎飛びをする上半身裸の筋肉ダルマ共とすれ違ったが、どちらも、何も、言わなかった。
「……帰るか」
「そうですね」
『ヒャッハァーーーーーー!!!怪我人はいねぇかぁ!!!』
『病人いんなら出てこいやぁ!!!!』
はいはいスルースルー。
もはや気にせずスルーする。
◆◆◆◆◆◆◆
帰り道。
「あいつら普段あんな感じなんだなー」
「なんていうか、個性的でしたね。マーガレットさんに至っては舎弟ができてますし」
「ありゃ店作ってんな。いつの間に……いいけどさ」
ぼやきながら帰る。今日の晩御飯はステーキがいいなーとか思いながら歩いていると
「……!!?コウガ様!!」
急にファルが声を上げる。
「あ?どうし……」
見ると、頭から流血して地に伏すおじさん、腕を押さえる皮ジャンを着たモヒカンの青年、それらを庇うように立つ筋肉ダルマ、そしてニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべる三人の少年がいた。
俺の中で、何かが弾けた。
ブクマ、感想誠にありがとうございます。
おもろかったで、続き気になる。そう思って頂けたら是非ブクマ、感想よろしくお願いいたします。




