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努力を知らない卑怯者  作者: 自宅警備員Lv9999
第三章:アロア
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勇者が来たりて笛を吹く



 一躍ヒーローとなり、とんでもなくイタい二つ名を拝命した俺達。


 それにしても、なんだよ『異常(ジョーカー)』って。考えた奴は絶対中二病だな。


 今回のスタンピード鎮圧の報酬として大金貨20枚、大体2億円をもらったので、ぶっちゃけもう金稼ぎなどしなくても生きては行ける。


 そんな人生楽しくないから冒険するけどな!!!(とか言って死ぬやーーーつ)


◆◇◆◇◆◇◆


「皆どっか行っちゃったな」


「そうですねぇ(コウガ様と二人きりコウガ様と二人きりコウガ様と……)」


「俺は冒険者ギルドにでも行こうと思うが、どうする?」


「私も行きます!!」


「じゃあ行くか!!」


 冒険者ギルドにファルと一緒に行くことにした。


 ギルドに向かう途中、不穏な噂が聞こえてきた。


「おい聞いたか?勇者様御一行がこの街に向かってるらしいぞ!!」


「あ?なんで勇者様がこんな街にわざわざ来るんだよ?」


「わかんねぇけど……とにかくスゲェじゃねぇか!!」


「幸せだな、お前……」


 勇者共が来てやがるらしい。どないしよ、逃げるか?


「ファル、俺と一緒に(勇者共から一時的に)逃げないか?」


「ふぇ!?」


「ファルが来てくれたら非常に嬉しいんだが……」


「ふぇぇ!?」


「どだ?」


「ふ、不束者ですがどうか末長く……」


「え!?」


「え!?」


{事情説明中}


「なるほど……そういうことですか……」


「な~に勘違いしてんだよ~」


「コウガ様……いつか後ろから刺してしまいそうです……」


「なんで!?」


◆◇◆◇◆◇◆


 ギルドに到着。

 

今は昼時なので冒険者の大半はクエストに出掛けており、あまり人はいなかった。


 適当にクエスト受けよっかなー、とか思いながらクエストボードを見ていると、職員さんが話し掛けてきた。


「すみません、Sランク冒険者のコウガさんですよね?」


「あ?ああ、そうだが?」


「少しお話を聞いて頂けないでしょうか?」


「今からクエストを……」


「指名依頼なのです」


「……分かった」


 仕方ないのでギルマスの部屋に行く。ファルは一緒に行くと言って聞かないので仕方なく同行させる。


「で?何の用だ?」


 結構切羽詰まった状況らしく、ギルマスは寂しい額からしきりに汗を拭っている。


「君には王から指名依頼が来ている」


「ほう、王からねぇ」


 王と聞くとあのクソ女が出てくる辺り俺も末期だな。


「王は俺に何をしろと?」


「勇者様がこの街に来られるこは知っているな?」


「あ~、やっぱり只の噂じゃなかったか~。なんでここに来るんだよ!!」


「ここにはダンジョンがあるからな。レベル上げするつもりなんだろ」


「あー、そういやあったねダンジョン。忘れてた」


 初回に潜って金にならないことが判明して以来行ってねぇわ。


「忘れてたって……一応この街がここまで発展した要因だぞ」


「どうでもいい。で、勇者が来るからなんだ?」


「しばらくここに滞在されるんだが、到着してまもなく武闘大会が開催されるんだが、そこでエキシビションとして勇者と戦って欲しい」


「ほーん、で?それだけじゃねぇんだろ?」


「……依頼内容は、わざと負けろ、と」


「却下。拒否。承りません!!帰るぞファル」


「は、はい」


 わざと負けろとかふざけてんのかな?かな?


 完全な推測だが、王とクソ女は、勇者の力を手っ取り早く知らしめたいと思ったのだろう。


 力をしめすなら強い奴に勝てばいい。そう考えて適当に強い奴を探したら、いい感じに新しくSランクになったガキがいた。


 だから俺に指名依頼を出したのだろう。わざとでなくても負けると踏んで。


 腹立つから受けない。ベインさん辺りに頼んでくれ。


「本当に受けないつもりか?王からの指名依頼を断ったら降格処分、または除名だぞ」


「あ?降格?除名?やるならやれ。どうでもいい」


 そう言い残してコウガは帰っていった。


 ベインさんは他国に旅しており、Sクラスはそもそも珍しいため代わりもおらず、結局勇者は一般の選手として出場することにしたらしい。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


『王族の指名依頼を拒否した為、SランクからBランクに降格処分とします』


 一気に転落してしまったな。過程は過酷、終わりは一瞬。この世は儚いねぇ。


「そんな訳でBランククランになっちまった。ごめんな」


「大丈夫ですぞ。幼女が護れれば称号などどうでもいいですからな」


「ああ!!筋肉に称号など不要だっ!!」


「ま、いいんじゃないか?」


「それもまた一興だろ」


「仕方ないわねぇ」


「コウガ様の判断を信じております」


 いい仲間をもった。俺ぁ幸せ者だぁ。


◆◇◆◇◆◇◆◇


【勇者サイド】


「皆、聞いて欲しい」


 昼食の席で正義が呼び掛ける。近頃は先生が完全に空気と化している。


「三日後に、アロアという街に行き、ダンジョンを攻略することになった」


 クラスメイトから歓声が上がる。ザ、異世界のダンジョンなので無理もない。


「で、街についてまもなく武闘大会というものが開かれるんだが、そこで僕達も戦うことになった」


 これまた歓声。


 彼らは街周辺の魔物を狩り、レベルを上げていた。


 おそらく一人一人がSランクの冒険者並みの力をもっているだろう。


 周辺では敵なしになってしまった為、かなり慢心しているのが正直なところだった。


◆◇◆◇◆◇◆


「コウガ様は大会には参加されないのですか?」


「そのつもりだが?」


「今年は優勝景品が豪華なんですよ~」


「へぇ、例えば?」


「第4位の人には、レベル7の装備一式。第3位の人には、ダンジョンの最高到達階層の魔物のドロップアイテム。第2位の人には、大金貨10枚。第1位の人には、昔の賢者のメモ帳と、なんと、なんと、あの有名な騎士団『ワルキューレ』と1日過ごせる権利、です!!」


「一位、ショボくね?」



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