勇者が来たりて笛を吹く
一躍ヒーローとなり、とんでもなくイタい二つ名を拝命した俺達。
それにしても、なんだよ『異常』って。考えた奴は絶対中二病だな。
今回のスタンピード鎮圧の報酬として大金貨20枚、大体2億円をもらったので、ぶっちゃけもう金稼ぎなどしなくても生きては行ける。
そんな人生楽しくないから冒険するけどな!!!(とか言って死ぬやーーーつ)
◆◇◆◇◆◇◆
「皆どっか行っちゃったな」
「そうですねぇ(コウガ様と二人きりコウガ様と二人きりコウガ様と……)」
「俺は冒険者ギルドにでも行こうと思うが、どうする?」
「私も行きます!!」
「じゃあ行くか!!」
冒険者ギルドにファルと一緒に行くことにした。
ギルドに向かう途中、不穏な噂が聞こえてきた。
「おい聞いたか?勇者様御一行がこの街に向かってるらしいぞ!!」
「あ?なんで勇者様がこんな街にわざわざ来るんだよ?」
「わかんねぇけど……とにかくスゲェじゃねぇか!!」
「幸せだな、お前……」
勇者共が来てやがるらしい。どないしよ、逃げるか?
「ファル、俺と一緒に(勇者共から一時的に)逃げないか?」
「ふぇ!?」
「ファルが来てくれたら非常に嬉しいんだが……」
「ふぇぇ!?」
「どだ?」
「ふ、不束者ですがどうか末長く……」
「え!?」
「え!?」
{事情説明中}
「なるほど……そういうことですか……」
「な~に勘違いしてんだよ~」
「コウガ様……いつか後ろから刺してしまいそうです……」
「なんで!?」
◆◇◆◇◆◇◆
ギルドに到着。
今は昼時なので冒険者の大半はクエストに出掛けており、あまり人はいなかった。
適当にクエスト受けよっかなー、とか思いながらクエストボードを見ていると、職員さんが話し掛けてきた。
「すみません、Sランク冒険者のコウガさんですよね?」
「あ?ああ、そうだが?」
「少しお話を聞いて頂けないでしょうか?」
「今からクエストを……」
「指名依頼なのです」
「……分かった」
仕方ないのでギルマスの部屋に行く。ファルは一緒に行くと言って聞かないので仕方なく同行させる。
「で?何の用だ?」
結構切羽詰まった状況らしく、ギルマスは寂しい額からしきりに汗を拭っている。
「君には王から指名依頼が来ている」
「ほう、王からねぇ」
王と聞くとあのクソ女が出てくる辺り俺も末期だな。
「王は俺に何をしろと?」
「勇者様がこの街に来られるこは知っているな?」
「あ~、やっぱり只の噂じゃなかったか~。なんでここに来るんだよ!!」
「ここにはダンジョンがあるからな。レベル上げするつもりなんだろ」
「あー、そういやあったねダンジョン。忘れてた」
初回に潜って金にならないことが判明して以来行ってねぇわ。
「忘れてたって……一応この街がここまで発展した要因だぞ」
「どうでもいい。で、勇者が来るからなんだ?」
「しばらくここに滞在されるんだが、到着してまもなく武闘大会が開催されるんだが、そこでエキシビションとして勇者と戦って欲しい」
「ほーん、で?それだけじゃねぇんだろ?」
「……依頼内容は、わざと負けろ、と」
「却下。拒否。承りません!!帰るぞファル」
「は、はい」
わざと負けろとかふざけてんのかな?かな?
完全な推測だが、王とクソ女は、勇者の力を手っ取り早く知らしめたいと思ったのだろう。
力をしめすなら強い奴に勝てばいい。そう考えて適当に強い奴を探したら、いい感じに新しくSランクになったガキがいた。
だから俺に指名依頼を出したのだろう。わざとでなくても負けると踏んで。
腹立つから受けない。ベインさん辺りに頼んでくれ。
「本当に受けないつもりか?王からの指名依頼を断ったら降格処分、または除名だぞ」
「あ?降格?除名?やるならやれ。どうでもいい」
そう言い残してコウガは帰っていった。
ベインさんは他国に旅しており、Sクラスはそもそも珍しいため代わりもおらず、結局勇者は一般の選手として出場することにしたらしい。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『王族の指名依頼を拒否した為、SランクからBランクに降格処分とします』
一気に転落してしまったな。過程は過酷、終わりは一瞬。この世は儚いねぇ。
「そんな訳でBランククランになっちまった。ごめんな」
「大丈夫ですぞ。幼女が護れれば称号などどうでもいいですからな」
「ああ!!筋肉に称号など不要だっ!!」
「ま、いいんじゃないか?」
「それもまた一興だろ」
「仕方ないわねぇ」
「コウガ様の判断を信じております」
いい仲間をもった。俺ぁ幸せ者だぁ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
【勇者サイド】
「皆、聞いて欲しい」
昼食の席で正義が呼び掛ける。近頃は先生が完全に空気と化している。
「三日後に、アロアという街に行き、ダンジョンを攻略することになった」
クラスメイトから歓声が上がる。ザ、異世界のダンジョンなので無理もない。
「で、街についてまもなく武闘大会というものが開かれるんだが、そこで僕達も戦うことになった」
これまた歓声。
彼らは街周辺の魔物を狩り、レベルを上げていた。
おそらく一人一人がSランクの冒険者並みの力をもっているだろう。
周辺では敵なしになってしまった為、かなり慢心しているのが正直なところだった。
◆◇◆◇◆◇◆
「コウガ様は大会には参加されないのですか?」
「そのつもりだが?」
「今年は優勝景品が豪華なんですよ~」
「へぇ、例えば?」
「第4位の人には、レベル7の装備一式。第3位の人には、ダンジョンの最高到達階層の魔物のドロップアイテム。第2位の人には、大金貨10枚。第1位の人には、昔の賢者のメモ帳と、なんと、なんと、あの有名な騎士団『ワルキューレ』と1日過ごせる権利、です!!」
「一位、ショボくね?」




