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努力を知らない卑怯者  作者: 自宅警備員Lv9999
第三章:アロア
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二つ名



【魔物を地面ごと消し飛ばしてから数時間後】


「すまんかったって。あんなに強力だとは思ってもなかったんだよ」


「もうちょっと考えて使うべきだったわねぇ」


「まったく。ベインさん達が私達と一緒じゃなかったら魔物と一緒に消し炭だったんですよ?」


「Ωを舐めんなよ?髪の毛一本残らんわい!!」


「…………」


 ファルは救いようがない人を見る目でドン引きし、マーガレットはやれやれと肩を竦める。



「ハァ…ハァ…、幼女を見ると戦った甲斐があったと思えますなぁ…!!」


「本当ですねぇ隊長!!」


 建物の陰に潜んで幼女を見つめる『幼女護り隊』隊長ジェントーと副隊長のジュール。


 今回の戦いでは奮闘していた二人だが、こうして幼女を見て息を荒げる様は正に変態だった。


 二人に見られている幼女は全く気付いていないらしかったが、いきなり振り向いた。


「うぇ!?」


「あ、いや、これは……」


 普段幼女に見つかると汚物を見るかのような目で見られるので、慌てて誤魔化そうとする二人。


 しかし幼女はトテトテと駆け寄ってくる。


 二人の足元まで来た幼女は二人を見上げて


「おじちゃん、ありがとう!!!」


 と、天使のごとき笑顔で言った。


 おじちゃん二人は一瞬固まり、天を仰ぐと、目頭を手のひらで押さえる。


「こ、こんなにも……美しい物体があるだろうか……」


「なんと愛らしい……」


 感涙にむせている。


「おじちゃん達がまものをやっつけてくれたんでしょ?だからありがと!!!」


 幼女は止めとばかりに最大級の笑顔を見せる。


「くっ、なんて眩しい笑顔なんだ……!!」


「直視したいですが……直視したら目が無事では済みませんな……!」


「ま、眩しすぎる!!!」


「「グァァアアアアアア!!!!!」」


 幼女が放つ輝きに浄化された悪魔のごとく蒸発してしまった。(死んではいない)



「フンッフンッ」


 路上で腹筋をする変態が一人。


「フンッフンッ」


 同じく路上で腕立て伏せをする変態が一人。


 だらだらと汗を流しながら一心不乱に己の筋肉を鍛える様は立派だったが路上なので迷惑この上なかった。


「隊長!!!よく暴れておられましたね!!!」


 小休憩とばかりに腕立て伏せをしていた方の変態が腹筋を続ける変態に声を掛ける。


「いや、僕などまだまだだよっ」


 腹筋をする変態も中断して汗を拭う。


「あの群れの中にいた魔物……凄まじい筋肉だった……。僕などまだまだだっ」


「そんなに凄かったのですか!!」


「ああ!!それにコウガはその魔物が全力で振り抜いた戦鎚を片手で小揺るぎもせずに受け止めたんだっ!!この世にはまだまだ上がいるっ」


 変態の言う凄まじい筋肉を持つ魔物とはサイクロプスのことであり、普通の人なら越えようなどというイカれた発想にはたどり着かない。


 それにコウガの力はアーティファクトありきなので多分もう越えている。


 しかし変態(マッスル)は黙々と筋トレを続けていたのだった。


 ……路上で……。



「あなたが生きてて、良かった……」


「いや、君が居たから頑張れたのさ……。君は命の恩人だよ……!」


 戦場に出向いた者の無事を喜ぶ者。待っていた者に感謝を伝える者。


 実に美しいシーンだった。


 お互い男性(ヤロウ)でなければ。


 このような光景が街の至るところで見られていた。



「よかったねぇ……ホントに……」


「お母さん?どうしたの?」


 生存を喜ぶ母と、よくわかっていない子供の微笑ましい光景。


 そこに近づく、モヒカン肩パッドの集団。母子を見ながら下卑た笑みを浮かべている。


 周囲の人々は警戒を見せるが


「ヒャッハー!見ろよ!!!あの微笑ましい光景をよぉ!!!」


「俺たちの働きの結果と思うと、笑いが止まらねぇぜぇ!!ヒャーハッハッハ!!」


 ただの善良な集団であった。


「連れて来たぜえ!!!!」


「止めてくれ!!!離してくれ!!!」


 皮ジャン肩パッドのモヒカンに腹部に傷を負った冒険者が文字通り担ぎ込まれる。


 強制的に。


「患部は魔法で消毒だぁ!!!」


「止めて、止め……優しい!?」


 皮鎧でスキンヘッドの大男がベッドの怪我人に手をかざす。


 怪我人は必死で声を上げるが、見た目とは裏腹な温かく優しい魔力に包まれる。


 バング率いる世紀末治療隊はスタンピードで産まれた怪我人を無理矢理連れて来ては無償で治療していた。


 全治何日何週の傷が一瞬で治るので結構好評。



 コウガはその様子を見ながら呟く。


「平和だなぁ……」


 以上、さっき地面ごと2万近い魔物を消し飛ばした男の一言でした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 一応街を守った事になるので冒険者ギルドに行ってみる。


カランカラン!!


 ウエスタンゲートを通ると


「来たぞぉぉぉぉぉ!!!!!」


『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』


 大歓声で迎えられた。


「兄ちゃんすげぇじゃねぇか!!!あんな数の魔物を吹っ飛ばすんだもんなぁ!!!」


「あ、いやそのあれは事故といいますか……」


「あんちゃんはこの街の英雄だ!!!」


「いやホントそんなんじゃなくて……」


「どうやってあんな魔法撃つんだ?」


「話聞かんかいゴラァ!!!!」


 まるで話を聞かない。


 仕方ないので無視して受付にいく。


「おう」


「はい……ぅええええええ!?いっ今マスターに……!!」


 慌てて走りだそうとする受付嬢を慌てて止める。


「まてまてまて!!めんどくさいって。このままでいい」


「ふぁ、ふぁい!!ではカードを……」


 受付嬢がカードを持って奥へ行く。


 数分後に帰ってくるとおずおずと切り出す。


「あのぅ……マスターと会って頂くことは……」


「めんどい。却下」


「はいぃ……」


 すまんな受付嬢よ。早く帰らないと、ファルとマーガレットだけじゃ抑えきれないんだ……!


「で、ではコウガさん。今日からSランクにアップです」


 ふんふん、Sランクね、って


「Sランクだと!?」


「は、はい。明らかな超級魔法を使ったり、魔物を圧倒的な剣技で倒したり、更には2万もの魔物を一瞬で消滅させる。確実にSランクの実力があります」


「そ、そうか?なら貰っとこう」


「Sランクが一人加わったことになるので、クラン『ヘレティックス』はAランククランに昇格となります。おめでとうございます」


「ありがとさん。そういえばクランのメンバーはクラスアップとかは……?」


「ああ、それが……お仲間さんはランクアップ出来ないんですよ……」


 なんでもジェントー、マッスル、ピエール、バングは問題の起こしすぎ、ファルとマーガレットは他のクランと戦ったことであまり貢献していないと判断されたらしい。


 可哀想に。


「Sランク冒険者となったコウガさんには指名依頼が持ち込まれる場合があるので注意して下さい」


 指名依頼?まぁ記憶の隅っこにでも置いとこう。


「じゃあな~」


 冒険者ギルドを後にし、変態共を押し留める戦いに参加した。


◆◇◆◇◆◇◆


「さて、どうする?」


 ものものしい雰囲気に包まれた会議室。そこにいるのはギルドマスターから街の権力者まで色々だった。


 彼らが真剣に考えている事、それは……


「彼らの、二つ名の案はあるか?」


 冒険者にはランクの他に与えられる物がある。それが二つ名だ。


 大きな武勲を立てたり、勇敢に戦った者に送られる称号。。


 これは一流冒険者の証のような物であり、二つ名を持つだけでかなり畏怖される。


 二つ名はその人そのままを表すので、ヘタにおかしな二つ名を決めると腹いせに冒険者ギルドに殴り込んで来ることがあるので慎重に決めなければならないのだ。


(わたくし)に案があります」


 手を挙げるのは領主の娘であるリング・アロア。


 彼女は領主の屋敷からヘレティックスの戦いを終始じっくりと見ていた。


 なので二つ名の案は既に出来上がっていたのである。


「私の案は……」


 かくして、その案は採用され、冒険者ギルドの伝言板にでかでかと貼り出された。


 それを見たコウガは


「イッテェェェェ!!!」


 と叫んで寝込んでしまったそうな。


 ファルが看病と称して添い寝していた。


◆◇◆◇◆◇◆


 アロアの酒場に新人冒険者がやって来る。ベテラン冒険者は数日前のスタンピードを語る。


 そして、新人冒険者に語る。その時戦ったクランの話を。




【怪物】マーガレット・リリエル


【異端の良心】ファルリア


【世紀末】バング・ゲリゾン


【薔薇の花園】ピエール


【人型要塞】マッスル・ボディービルダー


【幼女の守人】ジェントー・ローリエ


 そして……


異常(ジョーカー)】クロガネ・コウガ




 マーガレットが冒険ギルドに殴り込み、マスターは生死の境をさ迷ったそうな。


 回線の不具合で何回か『ふりだしにもどる』をくらって心が折れかけました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 降格か除名のどっち? [一言] 王族相手とはいえ依頼を断っただけで2階級降格って Sランクの地位も冒険者ギルドの独立性はなく 社会的権力も大したことはないことも分かった。 ならば地位に…
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