スタンピードだ!!! 【クラン無双編】
【住民サイド】
「おい、冒険者達が一斉に逃げていってるぞ!?」
「なんでも4万もの魔物が向かって来てるらしい」
「よ、4万!?そんな……もう、どうしようも……」
「『鋼の意思』と『異端者の集い』は残ったらしいぞ!!」
「Sランクとはいえ、4万じゃなぁ……」
「しかもあの変態クランが一緒なんだろ?」
「あんなふざけた集団に何ができるってんだ!!」
「もうダメだ……お仕舞いだぁ!!」
人生諦めムードが漂う避難所。
そんな時
ドゴォォォン……
避難所に爆音と振動が伝わってきた。
「な、なんだ!?」
「門が破られたのか!?」
謎の爆音と振動に慌てふためく住民達。
そこに様子を見に行った若者が転がるように帰って来た。
「み、皆大変だ!!!!」
「言わんでいい。門が破られたんだろう?」
「いや、違うんだ!!!ヘレティックスのリーダーが魔物を数百匹吹き飛ばしたんだ!!!!」
「は!?」
半信半疑で様子を見に外にでて、絶句した。
自分達が散々蔑み、忌み嫌ってきた変態達が、魔物をバッタバッタと薙ぎ倒していたからだ。
「え、えぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーー!?」
【幼女護り隊 ジェントーサイド】
「幼女を守る為に!!!!!」
『幼女を守る為に!!!!!』
掛け声と共に魔物へ斬りかかるジェントー。
スキルと愛がどこまでもジェントーを強化する。
ゴブリンを一薙ぎで5・6匹切り伏せ、ウォーウルフやラベジャーの牙を巧みにかわして真っ二つに切り裂く。
「ふふ、素晴らしい剣ですな。コウガ殿、感謝しますぞ!!!」
ジェントーの右手には、どこか穏やかな雰囲気を纏う、純白の美しい直剣が握られていた。これまで100匹程の魔物を切っているにも関わらず、その刀身には血の一滴も付着していなかった。
【愛が溢れる素敵な世界】
装備者の愛が強く深い程、この剣は鋭く速くなる。
愛が産み出す、優しい剣……
ジェントーの左手には、禍々しい雰囲気を纏う、黒く濁った直剣が握られていた。その剣はジェントーが魔物を切る度、その禍々しさを増している。
【絶望溢れる無慈悲な世界】
装備者の殺意が強く深い程、この剣は鋭く速くなる。
ゾウオガウミダス、サツイノツルギ……
幼女への異常な愛で『愛が溢れる素敵な世界』の効果がガンガン発動し、幼女を脅かす魔物への殺意も尋常ではないので『絶望溢れる過酷な世界』の効果もゴンゴン発動する。
もはや鎧も甲殻も意味が無かった。すべて豆腐のように切り裂かれる。
それにダメ押しのスキルの効果も合わさって、ジェントーは最早、手が付けられない化け物と化していた。
「隊長に負けてらんねぇ!!!俺達もいくぞ!!!!!!」
『おう!!!』
そして剣は無いものの、大体同じ力を持つ者が後32人……。
愛とは実に恐ろしいものである。
【鉄人隊 マッスルサイド】
「ふんっ!!!!」 ドグチャッ!!!!
全力で突き出された拳が、ゴブリン数十体を纏めて殴り飛ばした。
拳が当たった所は、大砲に撃ち抜かれたかのように原型を留めていなかった。
『ギィーキチキチキチキチ』
そこに、Gのような見た目のSクラスのモンスター、リノセウスが現れる。
リノセウスは全身がとてつもなく硬い殼に覆われており、拳はおろか剣も魔法も通さない為、出現したら軍隊が動く程の魔物である。
しかし……
「せいぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」
『ギチィ!?』
その殼を只の正拳突きであっさり粉砕した。
「ハッハッハ、コウガは良い物をくれたなっ!!!!!」
笑うマッスルの手には銀色に光るナックルダスターが嵌まっている。
【破壊の拳】
装備すると、打撃の衝撃を相手に直接伝える。
防御力を無視してダメージを通すという変態能力である。これで殴った為硬い殼でも粉砕出来たのだ。
いかにも脳筋ブンブン丸のマッスルに相応しい武器である。
魔物の群れに考えなしに突っ込むので大量の魔物に噛み付かれ、爪を立てられるが、マッスルの体には傷一つ付いていない。
装備とかスキルとかの効果ではなく、ただ単に鍛え上げられた筋肉が堅すぎるだけ。
魔法を浴びせかけてもターミネーターのように爆煙から無傷で出てくる。
そんな高笑いする筋肉ダルマがが後25人……。まさに悪夢のようだった。
【ホモ共 ピエールサイド】
冒険者も住民も驚愕していた。その男達の戦いに。
派手に魔物を吹き飛ばす訳ではない。凄まじい剣技を使う訳でも、殴った魔物が吹っ飛んでいく訳でもない。
ただ連携しているだけ。一見すれば只のパーティープレイだったが、よくよくみると衝撃を受ける。
連携が正解過ぎるのだ。
スケルトンナイトと戦っていた剣士は何故かいきなり後ろに飛び退く。すると間髪入れずに魔法がスケルトンナイトに当たる。
剣士が避けなければ当たっていた軌道。しかし嫌がらせで放った訳ではない。完全にお互いの行動を読んで剣士は飛び退き、魔導士は魔法を放った。
その隣では重戦士が少し屈むと、その上を弓士が放った矢が通過し、魔物の頭にクリティカルヒットする。
これらの連携が30人全員、一言も言葉を発さずに行われていた。
まるでプログラムされた機械か、綿密にセッティングされた映画のように。
理由は単純、『愛し会って』いるから。愛し合う故に謎の以心伝心が確立していたのだ。
30人が円になり、その完璧な連携で魔物を寄せ付けない為、まるで要塞の様だった。
やっぱり愛とは恐ろしい物である。
【世紀末共 バングサイド】
「いいかぁ!!!!!自分の傷は自分の傷、他人の傷も自分の傷だぁ!!!!!なにがなんでも直せ!!!.分かったなぁ!!!!」
『うっす!!!!!!!!』
「いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
『ヒャッハーーーーーーー!!!!!!』
勢い良く飛び出して行くスキンヘッドとモヒカンの集団。
彼らが向かう先には、ヘレティックスに触発され、戦いに戻った冒険者達が……
「グハァ!?」
「リ、リーダー!!!!」
「くそ、数が多い!!!」
「へへっ、俺達じゃどうにもできない、か」
「リーダー!!!!すぐに街に運びますから……」
「無理すんな。おめぇも腕とアバラ、逝ってんだろ」
「リ、リーダー!!!寝てて下さい!!!傷が……」
「止めてくれるな。数にビビって逃げちまった俺の、精一杯の罪滅ぼしだ……」
「リーダー……!!!!」
なんかドラマが生まれていた。
「寝とけやクソが!!!」
「ゴフゥゥウウウ!!!!」
しかしコウガに負けず劣らずKYな世紀末の一人が容赦なくタイキックで沈める。
「リ、リーダー!!!!!!!!」
「怪我人が、動こうとしてんじゃねぇぞ!?」
世紀末は地に付したリーダーをゲシゲシと足蹴にする。
「腹に大きな切り傷、んで特にヒデエのが背骨だな。魔物に後ろから蹴られでもしたか?」
お前のタイキックだよ、とは誰も突っ込まない。怖いから。
「おい、覚悟しろや?」
そう言って手に持っていた鉄パイプを振り上げる。
「ひ、ひぃ!!!」
殴られると思い目を瞑るリーダー。しかし痛みは来ず、代わりに温かく、優しい魔力に体が包まれる。
薄く目を開けると、世紀末が鉄パイプを掲げて詠唱していた。
鉄パイプは杖だったのだ。
【慈愛の聖杖】
装備者の治癒魔法の力を超強化する。
見た目が完全に鉄パイプなのは事故である。製作者が「ジコダヨ」と言っていたので間違いない。
超強化された治癒魔法は強力で、リーダーは一瞬で完全復活した。
満身創痍を一瞬で回復させるヒーラーが30名。
いずれも世紀末。治してくれるのはありがたいがとても怖い。
【鋼の意思 ファル マーガレットサイド】
「おりゃぁぁぁ!!!」
ベインウルフが振った大剣が一気に数十の魔物を切り裂く。
「ふんぬぅぅぅ!!!!」
全身に炎を纏ったマーガレットが一気に数十の魔物を吹き飛ばす。
「やるなマーガレット!!」
「ベインちゃんもなかなかよ!!」
マーガレットのスキル『魔纒装』により様々な魔法を服のように纏って戦うマーガレット。
そして
「いつの間に仲良くなったんですか!!」
ピシュン とピンポイントで急所を射抜いて確実に仕留めるファル。
お互い部下がいない為急遽『鋼の意思』に加わって魔物を狩っていた。
そしてもう一人。
「ヒャッハァァァーーーーー!!!!汚物は機銃で一掃だぁ!!!!」
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!
狂ったようにガトリングガンを乱射するバング。
【機関砲・ソドム】
魔力を消費して魔法の弾丸を飛ばせる。威力は使用者の魔力依存。
魔法を簡単に乱射できるトリガーハッピー向けのアーティファクトになった。
バングは回復魔法を弾にして乱射し、広範囲の味方を治すというよくわからない使い方をしていた。
もちろん攻撃に火炎魔法も使っていたが。
「あっ……え?」
「あら?……ん?」
「あ?……お?」
いきなり三人が眉をひそめて唸る。
「どうした!?何かあったか?」
「いや、それが……」
「リーダーから集合命令が来たの」
「おめぇらも来い。多分危険だ。奴はこの辺り一帯を全部焼け野原にする位普通にする男だぜ」
「あ、ああ……」
なんで伝えられたんだろうとか思いながらクランメンバーと三人と一緒に撤退し始めた。
そのあと一体が焼け野原どころかクレーターになるとはつゆとも知らずに……。




