スタンピードだ!! 【鋼牙無双編】
遅れて申し訳ございません
シーンと、静寂が響く。静寂なのに響く。
ちょうど夜が明けて来ていた頃だった。
「来たぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
見張りに立っていた冒険者の声が響き渡った。冒険者達は一斉に門へと向って行く。
見ると地平線の所に蠢く黒い物が見える。目を凝らして見ると……
「あれ全部魔物かよ……何が1万だコンチキショウ」
魔物の大群が地平線を埋めつくして迫っている。
ざっと見た感じ……4万はいるな。
「う、うわぁぁぁあああああ!!」
一人の冒険者が叫びながら逃げ出した。それをかわぎりに冒険者が一斉に逃げ始める。
「か、敵うわけねぇ!!!!」
「あんなにいるなんて聞いてねぇ!!!」
「逃げろ、逃げろぉ!!!!!!」
周りの人を扇動しながら逃げるから質が悪い。
「ま、待て!!!!お前達が逃げたら作戦が……」
ベインさんが必死に呼び止めるが聞く耳をもたず、我先にと逃げて行く。
結局俺のクランとベインさん達しか残らなかった。
「クソッ!!!たったこれだけで敵う訳が……」
ベインさんは絶望し、地面に手を突いた。
俺はどうすっかな。正直この街がどうなろうがどうでもいいが……。
メンバーに問う。
「どうする?逃げるか?メルカバ使えば逃げ切れるぞ」
その問にメンバーは
「ふ、愚問ですな。私が逃げたら、誰が幼女達を守るのですか!!!!」
「俺の恋人は冒険者以外にもいるんだ。見捨てて逃げられるものか!!!」
「いい鍛練になるなっ!!!」
「私は大丈夫よ」
「俺も問題ねぇ」
「コ、コウガ様について行きます!!!」
逃げる意思は無し、と。
「分かった。じゃあやるか!!!!」
『おう!!!!』
「作戦は実行不能だ!!とにかく魔物を狩れ!!数を減らせば何とかなる!!!」
『了解!!!』
各々が部下を率いて出発していった。
「死ぬなよ。お前ら」
俺の呟きを聞いていた者はいなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
皆行ってしまったので単独で行動を開始する。
「さて、お待ちかねのメインウエポン初披露だぞー」
独り言である。
コウガの右手には金色の籠手が装着されていた。
「さーて、まずは試し撃ちがてら数減らすかな」
魔物の大群に籠手の掌を向ける。
キィィイイイイイ……
籠手の親指の付け根部分に付いている赤い石が光始める。
掌の窪みに赤い光が収縮し
「喰らえや」
ヂュゥウウウウウウウウウウウウン!!!!
赤い光線が発射された。
放たれた光線は魔物の先頭集団を薙ぎ払う。
そして……
ドゴォオオオオオオオン!!!!!
ラ○ュタのロボットの光線を受けた壁のように赤い線をなぞるように爆発していく。
【熱石】
吸熱LvEX 無限蓄熱
発熱LvEX
『蓄熱石』という熱を吸収する魔道具だった物だが、それを『改造』しまくった成れの果てである。
さっきの光線は溜め込んだ熱を圧縮して線上に放出した熱線である。
熱を圧縮って自分でもよく分からん。
まぁ強いからいいや。
そろそろ俺も行くか。
左手に阿弥陀、右手に銃を持って魔物に飛び掛かる。
阿弥陀の一薙ぎで十数匹のゴブリンを切り伏せ、狼の牙を咄嗟にかわし、すれ違い様に腹を裂く。
後ろからスケルトンナイトが斬りかかって来たので銃をぶっ放す。
打ち出された弾丸はスケルトンを容易く砕き、その後ろの魔物を何十匹も貫いていく。
と、ゴブリンウィザードとスケルトンウィザードが魔法を詠唱し終えたらしい。
初級、中級魔法が雨霰と飛んでくるが、マナストーンで吸収して無力化。
好機と見たのか一斉に大量の魔物が駆け寄ってくる。
「よっ」
またガントレットの掌を付き出す。今度は人差し指の付け根部分に取り付けられた青色の石が光る。魔物に掌を向けながらぐるっと回転。
キュイン!!!!!
今度は青白い光線が発射される。そしてその光線に当たった部分はミシミシ言いながら凍り付いていく。
【冷石】
吸冷LvEX 無限蓄冷
冷却LvEX
『蓄冷石』という魔道具だった物。溜め込んだ冷気を冷凍光線にして撃てる。
こいつも結構チート。
凍り付いた魔物を粉砕し、殺戮を再開。
今度はワイバーンやロックバードなどの飛行する魔物が集まってきた。
「メインウエポン大活躍じゃねぇか。初使用のくせに」
メインウエポンが初使用とは一体何を言っているのか。
天に向かって右手を掲げると、今度は中指の付け根部分に取り付けられた黄色い石が光る。
「十万ボルトォォォォォォォ!!!!」
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!!!!
大気中に大量の電気を放電し、青白い閃光が瞬く。
空にいた魔物は感電して落ちてきた。
【電気石】
電気吸収LvEX 無限蓄電
発電LvEX
蓄電石っていう魔道具だったけど、今はチート装着だな。
『グォオオオオオオオオ!!!!!』
「ッたく次から次へと……」
Aランクの魔物、サイクロプスが巨大な戦槌を振りかぶって突進してくる。
サイクロプスはバットをフルスイングするように戦槌を横薙ぎに振ってきた。
しかしその超重量の槌は右手に触れた瞬間
ピタッ
っとばかりに止まってしまった。
『ウガァ!?』
サイクロプスも混乱しているらしい。
「いい攻撃だ。じゃあ返すな」
強化された脚力で懐に飛び込み、腹にガントレットの掌を当てる。
ドゴォォォォォォォォン!!!!
サイクロプスの腹に衝撃波が叩き込まれ、後ろに吹っ飛んで多くの魔物巻き込みながら絶命した。
【衝撃石】
衝撃吸収LvEX 無限衝撃蓄積
衝撃波発生LvEX
防具に付ける『対衝石』だった物だ。やっぱりチート装着だな。
これの力で戦槌が当たった時の衝撃を丸っと吸収して無効化、そんで吸収した衝撃を丸っとサイクロプスに返してやった。だからあのサイクロプスは吹っ飛んでいったんだな。
ちなみに『墓掘人』のトンデモ威力で発生する反動もこれで吸収していたりする。
これ無しで撃ったら100%肩が外れるかアバラが逝く。
『熱石』『冷石』『電気石』『衝撃石』と後『魔力石』と『収納石』がそれぞれ親指、人差し指、中指、薬指、小指、手の甲に取り付けられた籠手。
これが俺のメインウエポンこと『元素の籠手』である。
◆◇◆◇◆◇◆
ガントレットの動作確認を終え、殲滅に移行する。
お久し振りねの爆魔石やガントレットを駆使して広範囲の魔物を滅していく。
爆魔石ポイポイしながら考える。
ちょっと前までゴブリン一匹殺して吐いてたガキが、よくここまで来たよな。感慨深い。
そういえばアイツら大丈夫かな。一応巻き込まんように離れた所で暴れてるが。
まあ死んでは無いだろ。最新装備を渡したし。
……魔物減らねぇな。どんだけいんだよ。
ギルドカードを確認するともう8千位倒している。なのに全然減ってない。
(冒険者ギルドのカードは倒した魔物を記録してくれるのだ!!!!)
「一気に消すか。『お前ら、ちょっと門まで戻れ』」
念話石で呼び掛け、俺も門に向かう。
門に着くと既に全員集まっていた。
「どうしたのですかな?かなり調子よく狩っていたのですが……」
「というかあの爆発とか雷とかサイクロプス吹っ飛ばしたのとか全部コウガ様ですよね。地形変わってましたよ?」
キコエナイキコエナイ。
「コウガ君、君があんなに強かったとはな」
「いやいやベインさん。俺は1ミリも強くないっすよ」
魔道具の力だもんなぁ。
「で、何をするつもりなんだい?」
「ちょっと数が大杉君だから間引こうとおもってな。危険だから集めとこうと」
「何する気よ……」
「まさか……ナニか!?」
「ちげぇよ」
ストレージストーンからでっかい魔石を取り出す。
「そ、それは……?」
「『爆魔石 Ω』だ。こいつを喰らわせれば1万は減るだろ」
ジェントー達の奮闘もあって魔物の残りはあと2万程度になっていた。
「では早速」
「マッスル先生、お願いします」
「よーし、いくぞっ」
マッスルが満身に力を込め、おもいっきり振りかぶって、投げた。
「どうりゃぁぁあああああああああっ!!!!!!!!」
ギューンと放物線を描いて飛んで行く。
魔物の大群の真ん中辺りに着弾。
「うーし、1万位は吹っ飛んで欲しい……」
カッ
夜明けの薄暗い空が夕焼けの様にオレンジ色に染まる。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン
凄まじい爆発音が大気を揺する。民家のガラスがビリビリ震え、大地が揺れる。
爆風で皆の髪が後ろになびく。
魔物の大群がいた地平線からは、巨大なキノコ雲が立ち上っていた。
「…………」
俺はそれをじっと見詰めながら考える。
人間は何故存在するのだろうか と。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
煙が晴れ、地面が現れる。巨大隕石が落ちてきたかのように痛々しく抉られた大地。
もはや魔物の姿はなく、地面と共に消し飛んだことを如実に物語っていた。
「いや、あの、アレだ」
コウガは誰にでもなく話す。
「スタンピード鎮圧したやん」
「コウガ様」
やけに低いトーンでファルが言う。
「ちょっとそこ座って下さい」
「はい」
流石のコウガでもファルが怒っていることは分かったらしい。
コウガ達の働きを見ていた住民が来るまで大人しく怒られていた。
なんか中二中二してきましたが、私は中二ではありません。お願い信じて。




