今度の方針と呪いからの解放
宿にて。
「と、いうわけで今から俺達の奴隷になったファルリアさんでーす。ホレ、挨拶しなさい」
「ファ、ファルリアです。よろしくお願いいたします」
「ジェントー·ローリエですぞ。よろしくお願いしますぞ」
「マッスル·ボディービルダーだっ。よろしくっ」
「んで皆のリーダー、クロガネコウガだ。まあ、よろしく。んじゃ自己紹介も済んだし、今後の方針を立てるぞ」
「この間言っていた、街を出ることについてですかな?」
「おう、お前らはどう思う。この街を離れることについて」
「私はコウガ殿に忠誠を誓いました。コウガ殿の意思に従いますぞ」
「幼女数人助けたぐらいで大げさだけどな。マッスル、お前はどうだ?」
「僕も構わないぞっ。そもそも僕はこの街出身ではないからなっ」
「そかそか、異論はないってことでいいんだな?」
「はい」「ああ!!」
「ではこれからの予定を話すぞ。これから数日は取り合いず皆で金を稼ぐ。そんで東の『深淵牢獄』へ行く」
深淵牢獄は石を特殊な形に組んで、明かりをつけなければその名の通り深淵の如く真っ暗闇なのだ。
なので入れられた者はよっぽど精神が強靭でないと3日で狂うと言われている。
この世界の子供の躾に『いい子にしないと深淵牢獄にいれちまうよ!!』というフレーズがある位恐ろしい所として有名である。
「『深淵牢獄』へ、ですかな?」
「なぜだっ?あそこは犯罪奴隷待ちの犯罪者か、犯罪奴隷にもなれない異常者しかいないぞっ」
「お前らも気を付けろよ。いつ入れられてもおかしく無いんだから。それはさておき、理由は一つだ。仲間を探す。これだけだな」
「なぜわざわざあんな所で!?キチガイか変態しかいないような所ですぞ!!」
「激しくブーメランだぞ。まあ、聞け。まず俺はこの国にガチギレしてるわけだ。喜んで滅ぼすレベルでな」
「はい」「ああ」
「んでこの国のトップは基本的にクズが多い。だから囚人の中にはそんなクズに嵌められた哀れな人もいるだろう。そういう国を憎んでそうな奴の方が都合がいいんだよ」
「なるほど?」「そういうことかっ」
「んで、同時にこの国は金がありゃだいたいなんとかなる。保釈金を払えば解放してくれるはずだ。囚人に交渉を持ち掛けて、交渉成立したら保釈金を払って解放してもらうって感じで冒険者を漁るより遥かに効率がいい」
「な、なるほど」「おそれいったぞっ」
「そんな訳で深淵牢獄に行く。これからは保釈金を稼ぐぞ」
「わかりましたぞ!!」「了解だっ!!」
「で、お前に話がいく訳よファルリア。略してファル。」
「ふぁ、ふぁいっ!?」
急に呼ばれて飛び上がっている。そんなにビビらんでも……。
「うおっほん、でな、俺はお前を戦力にする。これからは戦ってもらうぞ」
「へ?は、はい」
「返事が小さい!!」
「は、はい!!」
◆◇◆◇
とりあえず金稼ぎは二人に任せ、俺はファルの戦闘訓練を監督する。
と、その前にすっかり忘れていた呪いのスキルを撤去する。
宿の俺の部屋に入り、とりあえず鑑定してみる。
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ファルリア 天職;巫女
Lv15
ジョブスキル
【神力変換】
魔力を神力に変換する。
【神術】
神力を消費して強力な術を使う。
【神結界】
神力を消費してさまざまな結界を張る。
【祈祷】
祈祷の対象者、もしくは半径50メートル以内の者の体力を回復し、状態異常を打ち消す。
パッシブスキル
危機察知Lv3 気配察知Lv4
薬物耐性Lv6 物理耐性Lv6
痛覚耐性Lv7 腐食EX
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うん、強い。かなり強い。勇者要るんかな。
それはさておき、この腐食EXというのが問題のスキルだな。
鉄貨を持たせて見るとあっというまに赤茶色に錆び、崩れてしまった。
それを見て驚いていると、ファルが泣き出した。
「やはり、私は呪われているんです。この呪いのせいで親に捨てられました。私を買ったご主人様も私を気味悪がって散々痛め付けて奴隷商に戻されるを繰り返していました」
ファルはこれまで、かなりの辛い思いをして来たのだろう。
親は自分を化け物だと罵り、捨てた。奴隷になってからも化け物扱いだったのだろう。
辛かったろうな。
「大丈夫だ」
ファルの頭に手を乗せる。びくっとなったが、優しく撫でると落ち着いてきたらしく、ケモミミがペタンと伏せる。
「大丈夫だからな。俺が助けてやる。俺なら助けてやれる」
そういいながら俺はスキルを使用する。使用するのはこないだ派生した大改造に次ぐ改造の派生スキル『改悪』だ。
いつかクソ女に使ってやるつもりだったが、こんな所で役に立つとは。
スキル腐食を意識しながらゆっくり丁寧に魔力を流し込む。こうすることで俺の様に発狂寸前の痛みを味わう事も無い。
ゆっくりと、だが確実に腐食のレベルは下がっていき、遂にレベル1になった。
さらに続けるとスキル腐食は消滅した。これでファルは呪いから解き放たれた。
「よしファル、俺の手を握ってみろ」
ファルは顔を伏せる。
「無理です。怖いです。もしご主人様の手が腐ったら……。ご主人様は私なんかに良くしてくれました。苦しめたくありません!!」
「だーいじょぶだって。ホレ!!」
さっと手を伸ばしてファルの手を掴む。
「え!?い、いや!!」
ファルは必死で振りほどこうと暴れるが、俺は手をしっかりと握って離さない。
しばらく経ったが、俺の手に変化は無かった。
「ああ、腐ってない……何ともなってない……」
ポロポロ泣きながら手をいろいろな所に当てている。
「よかったな。これでお前は呪い子じゃない」
ファルは俺の言葉でせきをきったように泣きじゃぐり始め、俺に抱きついて来た。
「う"え"ぇ"ぇ"ん"、ご主人様ぁ!!」
「おう、泣け泣け。大変だったな。もう大丈夫だからな」
俺はファルが泣きつかれて寝るまでずっとファルの頭を撫で続けた。




