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努力を知らない卑怯者  作者: 自宅警備員Lv9999
第一章:王都
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戦力増強と奴隷購入



 俺は今回、勇者と決定的に対立してしまった。この先ことあるごとに絡まれることになるだろう。



 勇者に対抗するには、この世界を敵に回しても大丈夫な程の強力な力が必要だ。



 そもそもこの世界は力がすべてだ。この世界では強い力があればこの世の80%の苦しみからは脱出できる。



 残りの20%は人の信頼とかのあれやこれやだ。



 このスキルやらステータスやらレベルやらがある世界では国家の戦力に匹敵する力を個人が所持できる。



 Sランクの冒険者やクランは普通にそこら辺の大きい街など蹂躙できるので、世界に対する発言力が強い。



 世界を救う勇者の発言力はけっこう強く、クソ女はその勇者を召喚した功績を得ようとしてたんだよな。



 まあ、そんなどうでもいいことはさておき、問題はどうやって世界をひっくり返すほどの力を手に入れるかだ。



 俺の場合魔力さえあればもっと魔道具を強化できる。現在は蓄魔石がチート性能になったことから着想を得て同列系統の蓄なんちゃら石を強化中である。



 魔法を付与した魔法石なんていうのも作れるが、蓄なんちゃら石の強化がけっこういい感じなので後回しにしている。



 ジェントーも努力している。剣術の鍛練に筋トレ、魔物討伐によるレベル上げと幼女とのふれ合いを日課にして実力を向上させている。



 街角で物陰から幼女を見ながらハァハァしているところを何度も通報されて、そのたびに高笑いしながら逃げて行く。この世界の法律では、“何もしていない”者は現行犯でないと捕まえられないのだ。



 そして俺がぶん殴って謝る。ジャパニーズDO☆GE☆ZAを発動すればだいたい何とかなる。



 マッスルは…………筋トレしまくってる。スキルの力でゴリゴリ強化されていく。それは良いのだがこの間様子を見るとなんか筋肉ダルマが増えているように見えた。目の錯覚だキットソウダ。



 まあそんな感じでどんどん戦力を増強させている訳だが、もっと可能性が欲しい。欲を言えば強い天職を持った冒険者あたりが望ましい。



 それにこの街はいつか出て行くので、さっさと仲間を増やしたいという思いもある。



「そんな訳で、仲間をふやすぞぉ!!」



「おぉ~~!!」



 俺の話を聞いたジェントーとマッスルは賛同の声を上げる。しかしジェントーが顔をしかめる。



「問題が一つあります」



「なんだ?」



「現在、コウガ殿が勇者に喧嘩を売ったという噂が広がっておりまして……」



「そうだなっ、随分な悪評が流れているらしいぞっ」



「完全にクソ女の仕業だな。まったくどこまで俺の邪魔をしたいのか……となると冒険者は厳しいかぁ」



「私にいい案がありますよ」



 ウエイトレスをしているリンちゃんが会議に混ざる。余談だがリンちゃんはあの後、気絶から覚めると俺に抱きついてきた。よっぽど怖かったのだろう。クソ女への殺意が3上がった。しかし役得もあったので少し感謝。



「いい案とは?」



「奴隷を買えばいいのです。奴隷なら無条件で仲間になります。出費は嵩みますが……」



「奴隷か……。金はどうとでもなる。しかし倫理的にな~~」



「コウガ殿の世界……チキュウといいましたかな、奴隷はいないのですか?」



「昔はいたらしいが、今じゃいないな。代わりに社畜っていうのがいた」



「なんか嫌な響きだなっ」



 そんな感じで話がそれたが、結局奴隷を買うことになった。



 さっそく奴隷商へ向かう。向かう途中で勇者が街に降りて来ているという噂をきいた。鉢合わせだけは止めてほしい。



 奴隷商はスラム街に近い路地裏にあった。かなり豪華な見かけで、イメージの奴隷商とぴったりはまる。



 さっそく入る。今回はジェントーとマッスルは付いてきていない。二人は奴隷購入にあたって大幅な出費が出ると踏んでギルドに金稼ぎに行った。



 中に入ると小太りのおっさんが手を揉みながら話し掛けてきた。



「いらっしゃいませお客様……失礼ですが、奴隷をお求めですよね?」



 こちらを品定めするように見つめてくる。ああ、金が心配なのか。



 今の俺の格好はパッと見ただの市民だからな。



「おう、こんな格好してるが、金はある。さっそく見せてくれ」



「了解しました。それではこちらへ」



 案内された所は薄暗く、檻が通路をつくる様に並んでおり、その檻には一人ずつ奴隷が入れられていた。



 とりあえず見て回る。鑑定を使えばステータスが見られるが、あまりいい奴がいない。



 亜人率が高い。というか亜人しかいない。ケモミミだらけだ。癒されるぅ~~。



 それはともかく



「おい、奴隷ってのは亜人しかいないのか?」



「はい、亜人は昔人族に戦争をしかけ、敗れて人族に支配されるようになったのです。なので主な奴隷は亜人ですね。人族の奴隷もいますが、この国では法律で禁じられておりますので、他国へ行くしかありませんな」



「うーん、ここにはめぼしいのはいない。他にいないのか?」



「いることはいるんですが……難有りでしてね」



「構わん、見せろ」



 そうして連れて行かれた場所はひどい所だった。



 奴隷が亜人なのは変わらないが、耳が無い奴、目が死んでる奴、叫びながら鉄格子に頭を打ち付ける奴など、見てると精神が持たない。だって日本人だもの。



「難有りってこういうことかよ……」



「はい、お客様にも色々いましてね。時々こうして返って来るのですよ。嗜虐趣向の人に虐待され心と体に傷を負った者、錬金術士に新薬の実験台にされたり、体をいじくり回されて狂った者、腕や耳が無い者など様々です」



「胸糞悪いな。ほんっとにこの国は……」



「この国だけのことではありません。全世界で亜人は虐げられています」



「訂正、ほんっとにこの世界は……」



 鋼牙の中で世界の価値が100円下がった。(もともと10000円 現在8500円)



 とりあえず見て回る。そして、見つけた。


―――――――――――――


ファルリア 天職;巫女


―――――――――――――


 金の毛並みの耳に大きな目、見た感じ16歳くらい。



 しかし、おかしい。五体満足だし、目も死にかけてはいるが感情はある。特に問題は無いようにおもえる。



「おい奴隷商、こいつはどこが問題なんだ?」



「ああ、その天弧族はおかしなスキルを持っていましてな。触れた物を腐らせてしまうのです」



「へー、スキルねぇ」



 天職の巫女は本に載っていた。天弧族の女だけがもつレア中のレア職。勇者ハーレムの聖魔導士の秋風に肩を並べるほどの聖魔法への適性を持つ。



 こいつがいてくれれば当分回復は安定するし、何よりアンデッドが敵じゃなくなる。是非とも欲しい。



「うっし、こいつにする。幾らだ?」



「はい、金貨1枚ですが……よろしいのですか?何も持てない上、触られれば体が腐ってしまいますが……」



「いんだよ。客が欲しいっつってんだ。大人しく売っとけ。あと追加で銀貨1枚払うから格好をマトモにしてくれ」



「承知しました。待合室でお待ち下さい」



 豪華な造りの部屋に行かされ、待つこと数分。



「お待たせしました。お買い上げ頂いた奴隷でございます」



 ようやくやってきた奴隷商を見ようとして顔を上げた俺は絶句した。



 視線の先に天使のような少女が立っていたからだ。



 ケモミミはしっかりブラッシングされ艶を放ち、白が基調のシンプルなワンピース風の服が凄まじく似合っている。



 ワンピースの生地を押し上げて存在を主張するお胸様もポイントが高い。



 スキルがなければどっかの変態貴族に買われ、愛玩奴隷又は性奴隷にされていただろう。



 スキルに感謝。ありがとう。



「お客様?どうされました?」



 奴隷商の声で現実にカムバックする。



「お、おう、何でもない。じゃあ代金の金貨と銀貨だ」



「はい、確かに。では契約を致します。こちらに血を少々……」



 言われた通り、差し出された首輪に血を2、3滴垂らす。



 すると首輪に刻まれた魔方陣が血を吸って輝き始める。



 その首輪をファルリアの首に付けた。ファルリアの首に首輪と同じ魔方陣が浮かび上がる。



「はい、これでこの者はお客様の奴隷でございます。お買い上げありがとうございました」



「おう。よし、行くぞ」



 奴隷商に別れを告げてさっさと宿に戻った。

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