勇者との対立
「はい、そこまでです!!」
その声で全員の動きが止まる。
声の主は『聖女』八雲楓だった。 聖女らしい純白の修道服を着、同じく修道服を着た女の子達を連れている。
正義の力が緩んだので一気に立ち上がり、正義を弾き飛ばす。
「楓!!なぜ止めた!?あいつはアリアを強姦した……」
「その証拠はどこにあるの?」
「アリアが鋼牙に襲われたと……」
「強姦は冤罪が多い犯罪なんだよ。女の人がやられたって言えば周りは完全に女の人を信じちゃうから。今回もそうだよね」
「でも……アリアは泣いてたんだぞ!?何も無いのに泣けるか!?」
「泣けるよ?ほら……」
楓が手で顔を覆い、少しして手を離すと真珠のような涙がポロポロ零れていた。
「かなり練習すれば思い通りに泣けるようになるんだよ?知らないの?」
まて、その理論でいくと八雲さん練習したの?
「そ、それでも……」
「それでも、なに?まだ証拠はあるの?まさか泣きつかれたから信じたとかじゃないよね?」
「……」
あ、泣きつかれたから信じたんだ。馬鹿じゃねぇのあいつ。女の涙は信用するなと古事記にもそう書かれている(嘘です)。
「はあ、もういいよ正義君。取り合えずなんの証拠もないから鋼牙君は無罪ね」
「八雲さん!!何を言っているのです!!そこの男が私を押し倒して……」
「嘘は良くないよアリアさん。そもそも貴女は鍛治場に様子を見に行ったら襲われたって言ってたけど、調べたら鋼牙君は鍛治場になんか行かされて無かったよ?戦力にならないから捨てたんだよね。この時点ですでに嘘だよ」
おお、的確にクソ女の嘘を見破っている。凄い凄い。
「そ、それは思い違いでしたわ!!夜道を歩いていたら襲われたのでした!!」
「はぁ……小学生みたいな嘘言わないでよ。聞いてる此方が恥ずかしい」
「な、なぜ嘘だと分かるのです?証拠なら私の従者の目撃情報が……」
「あのね、アリアさんはなんで夜道を歩いてたの?」
「そ、それは……」
「アリアさんは犯されたのに従者の人は犯されなかったの?」
「わ、私に恨みがあったから……」
「従者の人は人も呼ばずにアリアさんが犯されているのを傍観してたの?」
「う…」
「嘘だらけだね。アリアさん」
見事だなぁ。正義にも見習わせたい。あの正義は無条件で女を信じるからな。
クソ女を論破した八雲さんが解放されたリンちゃんを抱えて駆け寄ってくる。
「鋼牙君!!大丈夫だった?ゴメンね皆がバカやって」
「大丈夫だよ。ありがとな八雲さん。危うく性犯罪者にされるとこだった」
「ううん、いいの。本当にゴメンね」
「いいってことよ。クソ女となんちゃって勇者は許さんが」
「あ、あはは……」
「じゃあな。また会えたら会おう」
回れ右して扉へ向かう。
「待って!!」
腕を掴んで引き留められる。
「鋼牙君、どんな手段を使ったのか知らないけど、私達より強いよね。戻って来て一緒に戦おうよ」
ああ、あいつら強いけど弱いもんな。全員S級ぐらいの力があるけど多分ジェントーとマッスルの方が余裕で強いだろう。
「いや、せっかくのお誘いだが、断らせてもらう。俺の目的はクソ女への復讐だからな」
「……そう、残念。気が変わったらいつでも来てね」
「おーう。じゃあな」
扉へ歩きだすと背後から魔法が飛んでくる。
すかさず吸収。
「逃がさないぞ鋼牙!!」
「冤罪だっつってんだろ!!」
「うるさい!!喰らえ『天翔閃』!!!」
キラキラ光る斬新撃が飛んでくる。阿弥陀で反らす。
「な!?俺の必殺技が……」
「正義よぉ……」
救いようがないな。どうしろってんだこんな奴。
「何故だ!!どうやってそんな強さを得た!!教えろ!!」
うーん、めんどくさいし、教えてやるか。
「魔道具ですね?鋼牙君」
「!?バレたか」
見破ったのは先生か。ああ、生産職だから鑑定が使えるんだな。
「魔道具ですって!?魔道具があんなに強いはずが……」
「鋼牙君の持つあの刀、剣術っていうスキルが付与されています」
「はい、ですがLv1しか付与できないはず……」
「俺はできるんだよ。Lv1のスキルをLv10にすることがな」
「Lv10!?そんな……勇者様より……!」
「鋼牙ぁ!卑怯じゃないか!」
「その通りだな。だからなんだよ」
そう吐き捨てて城を後にする。
この日、俺と勇者との対立が始まった。




