決闘
「僕と決闘してもらえないかなっ?」
ゴリマッチョの巨漢に決闘を申し込まれた。
「何でだよ。お前と決闘する理由なんぞない」
「いいや、僕にはあるのさっ!」
ビシィと俺を指差す。
「君はたった一人でゴブリンキングを二体も倒したそうだねっ!僕はそんな強者と決闘したいのさっ!」
ニカッと歯を見せて笑う。歯がキラーンと光る。
「俺がそれを受けるメリットは?」
「君が勝ったら、君の言うことを何でもきこうっ!」
「今なんでもっつったな?なんでもっつったよな今?」
「ああ!なんでもだっ!僕が勝ったら…」
「俺が勝ったら、俺の仲間になれ!」
「……ああ!いいだろうっ!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ギルドの訓練所。今は誰も居らず、俺と筋肉のみが間合いを開けて立っている。
「では……初めっ」
立会人のギルマスの声で俺は全力で踏み込み、筋肉に駆け寄る。
「オルァア!!」
ガギンといい音がして、筋肉の腹に俺の突きが決まる。
ん?ガギン?
「はっはっは、痛くも痒くもないぞっ!!」
筋肉はまったく堪えておらず、高い笑いしている。
「いや、おかしいだろ。皮膚から金属音がしたぞ今」
「では行かせて貰おうっ!マッスル·ボディービルダー、参るっ!!」
俺が名前に衝撃を受けている間にマッスルが踏み込んだ。
足の裏から蜘蛛の巣状にヒビが入り、地面が陥没する。
「ふんっ」
凄まじいスピードで迫ってきたマッスルは俺の鳩尾目掛けて拳を突きだす。
剣が胸の前に出て拳を受けるが、そのまま5メートルほど後ろに弾かれる。
腕がビリビリする。
「はっはっは、凄いなっ。ゴブリンジェネラルでも30メートルは吹っ飛ぶのにっ!」
「お前の防御力も相当おかしいけどな」
「では、本気を出すぞっ」
そう言ったマッスルはいきなり
バァァァァァァァン
という音が聞こえそうな程の二等上腕筋を強調する美しいマッスルポーズを決めた。
「……へ?」
俺は一瞬思考停止したが、マッスルの体が謎のオーラを放っていることに気づく。
「いくぞっ」
そう言ってマッスルは先ほどと同じく殴りかかるが、拳の威力が桁外れに強くなっていた。
「グッ…!」
受けきれずに腹に喰らった。バゴンという音と共に鎧が拳の形にへこむ。
「ゴフッ…」
硬い鎧を着けて、スキルで強化したとはいえ元はクソザコの鍛冶屋。一撃でもう瀕死だ。
そこからは避けることにすべての神経を使った。剣術Lv10の見切りでマッスルの大降りは簡単に避けられる。
しかしこの筋肉、一向にバテない。汗はかいているが息が上がった様子もない。体力も化け物だ。
らちが明かないと感じた俺は、後ろに飛び下がる。
「おい、後一発で決めようや」
「…わかったっ!!」
「よし……こいっ!!」
「ぬぅおおおおおおおおおおおおおお……りゃぁ!!」
ものすごい力を溜めてこっちに走ってくる。
そしてそのままの勢いで訓練所の地面に突如空いた大穴に吸い込まれていった。
「うわぁああああああああああぁぁぁぁぁ……」
「いや、そんな深くないだろ」
せいぜい数十メートルだ。ドップラー効果は発動しない。
この大穴は俺がスキル【加工】を使って開けた穴だ。良いね加工、大好きだ。
穴の底を上げて落ちていったマッスルを助け出す。
「俺の勝ち、だな?」
「はっはっは、負けたっ!!まさか落とし穴とはなっ!!」
おお、正々堂々の勝負でなにやってんだとかって怒るかなとか思ってたんだが。
イケメンだな。正義とは大違いだ。
まあ、これでいいのかっていう罪悪感も……無いな。
「じゃあ、俺の勝ちってことで……」
「ああ、分かっているっ」
「これからよろしくな」
「ああ、よろしくっ」




