昇格
【王城にて】
「アリア!!ゴブリン共が迫って来ているそうじゃないか!!」
『勇者』正義が怒鳴る。
「ええ、そうですね」
「それも異常な数でこの国の騎士団では敵わないそうじゃないか!!」
「ええ、そうです」
「何をしてるんだ!!俺達勇者はこんなときの為に居るんだろ!!早く行かないと……」
「正義様、大丈夫です。街の冒険者や傭兵達が騎士団と共に戦うでしょう」
「そ、そうなのか?」
「はい、ですので勇者様達が出る必要はありません」
嘘である。冒険者や傭兵達はその逆、勇者様達が出るから自分たちは必要ないと聞かされていた。
アリアの企みはこうだった。
騎士団の新人達だけを派遣する。
いくら騎士団とはいえ新人が150人ほどでは1万を超えるゴブリン軍団に敵うはずもない。
そして騎士団は全滅。街の人々には騎士団が全滅したという噂を立てる。
街の人々は危機に陥り、絶望する。そこで勇者登場。
ゴブリン軍団を30人程度で退け、一躍ヒーローに。
人々は『危機を救った』勇者に心酔する。
その力は他国への抑止力にもなる。
祭り上げられた勇者達の士気も上がる。
一石五鳥の快挙になるはずであった。
「そろそろ勇者達を出そうかしら」
ゴブリン軍団の数が異常で騎士団が全滅した。とでも言えば正義は突っ込んで行くだろう。
しかし……
「アリア様!!」
騎士が息を切らして走って来る。
「どうしたのよ、騒々しい」
「ご、ゴブリン軍団が……」
「ああ、今から勇者様達が……」
「いえ、全滅しました」
「……え?」
「名も知らぬ隻腕隻眼の少年と異常に強いロリコンの紳士によって、ゴブリン軍団は全滅したそうです」
「き、キングは?」
「5体ともその二人が」
「い、今すぐその者を呼びなさい。命令よ!!」
「は!!」
アリアの頭には先日、殺したはずの少年の顔が浮かんでいた。
「まさか……」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ゴブリン軍団を下した俺達は、ゴブリン共の魔石を取りだし、討伐証明部位の右耳を剥ぎ取って(騎士団の人達に手伝ってもらった)冒険者ギルドへ帰った。
「おう、ゴブリン軍団を殺戮して来たぞ」
ギルマスに言う。そういえばずいぶん魔物を殺すことに抵抗がなくなった。
自分も異世界の住人になりつつある。
「フッ、たった二人でゴブリン軍団を退けるなんてな。私の目に狂いはなかったという事だな」
「まあ、そうだと思うぜ。で?報酬には何をくれるんだ?」
「とりあえず君たちのランクをBまで上げよう。本当はAにしたいんだが他の冒険者の手前、そういう訳にいかなくてなそしてゴブリン軍団討伐とウォーウルフ9953匹の討伐報酬として大金貨10枚を送ろう」
大金貨10枚。金貨100枚。銅貨では1億枚。
「おっおう、だだだ大金貨じゅじゅじゅ10枚ななな」
「ココココウガ殿メメメメッチャふふふ震えてますぞぞぞぞ」
「あー、なんかすまん」
そんな訳で一気にBランクに昇格。日本円で1億稼いでしまった。
宝くじに当選した様なもんだ。この運に感謝。
余談だが、俺は一度宝くじで5億当てた。現在は妹達の生活費になっていることだろう。
冒険者のランクごとの強さは、
Fランク 武装した一般人
Eランク 新米冒険者
Dランク 駆け出し冒険者
Cランク 一人前冒険者
Bランク かなり強い冒険者
Aランク 達人冒険者
Sランク 化け物冒険者
SSランク冒険者 人外冒険者 世界に四人しかいない。
SSSランク冒険者 世界を相手に戦えるレベル 世界にはいない。
となっている。俺達はかなり強い訳か。
ジェントーは異常に強いだとおもうがな。
宿で少し呆ける。
「なあ、これからどうするよジェントー」
「コウガ殿の望みと幼女の望みが私の望み。コウガ殿はどうされたいのですかな?」
「そーだなぁ……」
別になにかしたい事はない。俺の目的はクソ女の討伐だ。
「よし!!!!!」
大声を上げて立ち上がる。
「決まったのですか?」
「金は後で考えよう。今は仲間が欲しい」
「仲間ですな。わかりましたぞ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
冒険者ギルドへ行くとなんか静かになって、ひそひそと喋り声が聞こえるだけになった。
まあ、Bランクだもんな。一躍有名人か。
「あんちゃん、俺のクランに入らねえか?」
いきなり戦士らしい男から勧誘を受ける。
「抜け駆けすんなよ!!!にいちゃん、ウチのクランがいいぜ?」
「あら、あたし達のクランよね?」
「お、俺のパーティーに入ってください!!」
一人をかわぎりに勧誘合戦になった。
俺達の力がバカみたいに強いせいでゴブリン軍団が弱く見えたが、凄まじい数で畳み掛けられるとSランクの化け物クラスでないと厳しい。
そんなゴブリン軍団を二人で殲滅したんだから仲間にしたがるのは当然か。
「わりぃが、俺はこいつとパーティー組んでてな。他当たってくれ」
当然断る。
周囲は尚も食い下がるがバッサリ断る。
クランというのは大人数の冒険者が作る家族のような物で、強いクランに入れば虎の威を借ることができる。
クランにもランクがあり、Sランクのクランは世界に名を轟かせるほど有名。
構成しているメンバーがSランク、たまにSSランクなので、軽く国家の戦力を上回るからだ。
俺の目的はクランに入ることではなく、クランを作ることだからな。
なのでクランやパーティーの勧誘はバッサリ断る。
ああ、いい仲間いねぇかな。
「ちょっと良いかな?」
後ろから声を掛けられる。
振り替えると上半身全裸のゴリマッチョの巨漢が外国の歯磨きのCMのように爽やかな笑みを浮かべていた。
「君がゴブリン軍団を退けたんだってねっ」
「お、おう、そうだが?」
「僕と決闘してもらえないかなっ?」
「何でだよ」




