ゴブリンアーミー
死闘の果てに10000近い狼を討伐し、討伐証明部位を剥ぎ取ると、すっかり夜になってしまった。
ウォーウルフの討伐証明部位は牙で、剥ぎ取りは簡単なのだが、剥ぎ取り初心者の俺の作業ペースが遅く、時間がかかってしまった。
大きめの皮袋がパンパンになって、100匹分ほど入らなかった。
非常に残念である。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
やっとこさ着いた冒険者ギルドはすごい騒ぎだった。
まあ、気にせずいくか。さっさと納品して帰ろう。
「おい、魔物を討伐して来た。鑑定を頼む」
俺はウォーウルフの牙を一本出した。一本だけなのは値段を確認する為だ。冒険者ギルドはいろいろ酷いので、商人ギルドや傭兵ギルドの方が高ければそっちに売るつもりだった。
「はい、ウォーウルフの牙ですね。一本なので大鉄貨1枚です」
そういえば金貨換算でしか金使ってなかった。相場が分からん。
「ジェントー、ちょっと金について教えてくんね?」
「知らないのですか?お金は……」
ジェントー曰く、
銅貨
大銅貨
鉄貨
大鉄貨
銀貨
大銀貨
金貨
大金貨
白金貨
大白金貨
となっており、だいたい価値が低いもの10枚で次の価値、銅貨10枚で大銅貨みたいな感じらしい。
つまり銅貨1000枚分の価値があるわけだな。
「ウォーウルフの相場ってどの位だ?」
「時期によりますが、だいたい大鉄貨くらいですかな」
おお、相場通りか。よし全部売るか。
「よし、じゃあこれ全部買い取ってくれ」
ドスンッと9900本ほどの牙が詰まった袋を乗せる。
「え?何ですかコレ」
「いや、ウォーウルフの牙だよ。買い取ってくれ」
「まさか、これ全部……!?」
「おう、だいたい9900本くらいだと思うが……」
「まあ、そのくらいでしたな」
「き、きゅ、きゅせん、はっぴゃっく……しょ、少々お待ちくだしゃい!!」
めちゃくちゃ取り乱した受付嬢は袋を抱えて奥へ入っていった。
「さすがに1万近くはヤバかったかな?」
「私は幼女の笑顔のために討伐しただけ…。幼女のためなら1万だろうが10万だろうが討伐して見せましょう」
「うん、そうね。お前はそういうヤツだったね」
しばらく待つと息を切らした受付嬢が帰ってきた。
「ぎ、ギルドマスターがお呼びです!!」
なんかめんどくさくなりそうな予感がした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ギルドの奥へ通され、マスターの部屋の扉をノックする。
「入れ」
扉を開けて入ると隣にいたジェントーが脂汗を流し始めた。
「どうしたジェントー、腹でも痛いのか?」
「こ、コウガ殿は感じないのですか?マスターがさっきからこちらを威圧していますぞ」
「マジで?なんも感じねえんだけど」
「フフ、私の威圧に顔色一つ変えんとは。ウォーウルフを1万匹討伐したというのも嘘ではないかもな」
ギルドマスターは美人な女の人だった。
「おろ?こないだギルマスに会ったら小太りのおっさんだったような?」
「あの男はある貴族と通じて不正な金を受け取っていたらしくてな。解雇になった」
「そうだったのか。で?何の用だ?」
めんどくさい話だったら帰ろう。マジで。
「うむ、君たちには国からの緊急クエストを受けてもらいたい」
「うっし、帰るぞジェントー」
「待て、話だけでも聞いてくれないか?」
「話ぐらいは聞きましょうよコウガ殿」
「……分かった。話を聞いた上で考えよう」
ギルドマスターの話はこうだった。
ある冒険者が、森の最深部にゴブリン要塞ができているのを発見したらしい。
ゴブリン要塞はボロボロだが石造りの要塞で、ゴブリンやホブゴブリンは勿論、ゴブリンソードやゴブリンアーチャー、ゴブリンナイトにゴブリンジェネラルといった上位種のオンパレードで、単体でも結構強力な上位種が全方向から一気に襲いかかってくるため非常に危険なのだ。
その上ほっとくと大増殖したゴブリン達がゴブリン軍団となって近くの街に進軍してくる。
そうなると数の暴力でかなり大きい街でも滅ぼされてしまう。
冒険者の話ではかなり増殖が進んでいたそうだ。
という訳で急遽国から緊急クエストが出されたらしい。
内容はゴブリンキングの討伐。
要塞には必ずゴブリンの最上位種であるゴブリンキングがおり、ゴブリン達を統率しているため、キングさえ打ち取れば進軍してこないのだ。
勇者いんだろが、そいつら使えよ。
とも思ったが、ゴブリン要塞攻略はA級冒険者でも油断すると危険なので、育成途中の勇者では危険と判断したのだろう。多分。
まあ、そんな危険な依頼受けるこたないな。さっさと帰ろう。きっと誰かやってくれる。
「おいジェントー、帰ろうぜ。誰かやってくれるって」
コンマ2秒位考えたから嘘はついてない。
「何をいっているのですか!!!」
「ゴハァ!?」
殴られた。痛い。
「ゴブリン共が攻めて来たらこの街も甚大な被害が出ますぞ!!そうなったら悲しむ幼女が何人いるか……!」
「えぇ……いや、そうだけどさ……」
「私は行きます!!一人ででも!!」
……こいつだけでいかせたら死ぬかもしれんな。
撤退とか考えなさそうだ。
「だぁ、分かったよ!!行きゃいんだろ行きゃ!!」
「では行きましょうぞ!!幼女の笑顔のために!!そしてあわよくば「おじちゃん、ありがとー」なんて言われるために!!」
「ろくでもねえ!!」
バンッ
いきなり扉が開かれ、息を切らした受付嬢が入って来て、言った。
「ゴブリン達が、進軍を開始しました」
めんどくさいことになったと、コウガはため息をついた。




