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努力を知らない卑怯者  作者: 自宅警備員Lv9999
第一章:王都
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静かな強盗

 仲間に引き込もうとした剣士がゴリゴリのロリコンだった。


 契約を破棄しようかとも思ったが、何かの縁だと諦めて解決策を考え始めた。


 俺は今腕一本しかなく、体も万全とは言い難い。


 剣術Lv10ならそこいらの輩には負けないが、貴族の屋敷の警備が薄い訳がない。


 確実に敵を無力化するにはどうするか?


 戦略を使えばいいんだよ。


 とりあえず雑貨屋にいき、入り用な物を買い込む。そして夜になるまで屋敷の周囲の地形を確認する。


 屋敷は貴族街に建っており、警備は厳重と考えた方がいいだろう。


 襲撃してガキ共奪って逃走は現実的じゃない。


 それよりも………。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 夜、真っ黒い服を着た男が二人、こそこそと貴族街を歩いていた。


 コウガとジェントーである。


「じゃあ作戦通りいくぞ。いいな」


「コウガ殿、本当に大丈夫なのか?腕も一本なく、病み上がりだと……」


「俺には力は無いが知恵はある。見てろって」


 そういってコウガはジェントーの実家の塀を乗り越え、内部に侵入した。


 侵入者察知の魔方陣があったので無力化。


 そのまま進み、正面玄関へ。 そして謎の黒い玉を玄関の守衛に向かって投げた。


 すると


 ボンッ


 と玉が弾け、粉が辺りに舞う。


「うおっ、なんだ!?」


「げほっげほっ、粉か?ん?ハ、ハ、ハクシュン!!!」


「おい、どうし……ハ、ハ、ハクシュン!!!」


「ハクシュン!!」「ハクシュン!!」「ハクシュン!!」


 猛烈にくしゃみを始める守衛。そう、さっきの粉はコショウである。


 玉の中に初級魔法ウインドボムを付与した魔石と大量のコショウを入れ、玉が割れると風でコショウがばらまかれる寸法だ。


 本当にコショウばらまいたぐらいでこんなことになんのかよ、とか言ってはいけない。


 この世界はファンタジーなのだ。


 そしてくしゃみ爆弾を喰らった守衛は扉を開け、叫ぶ。


「ハクシュン!!襲撃だ!!ハックショ!!であえであえーークション!!」


 たちまちぞろぞろと出てくる警備の人達。


 その人達もくしゃみをし始めたあたりで俺は裏口からゆうゆうと侵入をはたした。


 そしてスニーキングしながら廊下を進む。


 目的地はペドー子爵(ジェントーの親父さん)の私室。


 ジェントーの話ではけっこうな不正を働いているらしい。


 その証拠の書類をゲッダウェイしてマスコミに暴露。


 子爵失墜!!これが作戦である。


 廊下の途中でこんな場面を見かけた。


「おらっ、このグズ!!床掃除も出来ないのかい?」


 恰幅のいい噂広めてそうな腹黒おばちゃんって感じのおばちゃんに罵倒される年端もいかない幼女がみえた。


 おそらくあれが奴隷にされたガキ共の一人だろう。


 そう考えている間にもおばちゃんが幼女を殴り始めた。


 まさにケルナグールって感じで。


 ぐぞう、あんのオバタリアンめ!!今にみてやがれ……!


 怒りに燃えながら進み、途中冷や汗かきながらなんとかペドー子爵の私室に到着。


 引き出し漁りを開始する。


 鍵がかかった引き出しを加工でこじ開けると、出てくるわ出てくるわ。


 国家予算の横領に犯罪の揉み消し、幼女誘拐、不当な金、公文書偽造、今回の奴隷の件と凄かった。


 ささっと持ち出し、ささっと逃亡。


 するつもりだったが、


「くっそ、コショウ爆弾がフェイクだと気付いたか!」


 廊下にはしっかりと警備の人が配置されていた。


 警備の人達は一人で一本の廊下に立っている。


 俺はゆっくりと警備の人に近づき、肩を叩く。


 振り返った警備の人の目に、


 シューーーーー


 レモン汁を吹き掛けた。


 悶絶する警備の人の鳩尾に一発。気絶。


 これを何度も繰り返して5分くらいで脱出した。


「やったぞ!!親父さんの弱みを握った」


「脅すのですか?」


「このままマスコミに投下するつもりだったが、それがいいならそうしよう」


「……いや、マスコミに投下?してくだされ」


「いいのか?親父さんなんだろ?」


「勘当されて赤の他人だ。どうなろうと知った事ではないし、自業自得だよ」


「……脅す方向でいくか」


「……感謝しますぞ」

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