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努力を知らない卑怯者  作者: 自宅警備員Lv9999
第一章:王都
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失ったモノ

「クロガネコウガ様、予言者、アリア様がお呼びです。どうかご同行ください」


 呼び出され、ついて行こうとすると


「無礼に当たりますので武器や鎧は着けずにお越し下さい」


 あからさまに怪しいが、下手に逆らって面倒臭いことになっても嫌なので大人しく従う。


 装備を外して戻るとおばちゃんとリンちゃんが心配そうにこちらを見て来る。


「大丈夫だ、すぐ戻るから晩飯用意しといてくれ」


 そう言って俺はローブの女について行った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 女について行くと街外れの老朽化した廃屋に連れて行かれる。


 そこにはローブを着た女が三人と、予言者ことアリア様がいた。 アリア様が浮かべる笑みが何やら恐ろしかった。


「よく生きていましたね」


 開口一番に“なんで死んでねぇんだよ”ともとれる言葉を投げ掛けてくる。


「俺は結構しぶといからな。ところで勇者達はどうしてる?」


「あなたは別の所で鍛冶屋の修行をしていると伝えましたが、あの聖女の女の子がなかなか信じずに会わせろとせがんで来ましたね」


「あいつらは強くなったか?」


「はい、勇者様はもうSランクの魔物を倒せるほどに、賢者様は宮廷魔術士長と互角に、聖女様は最大級の回復魔法を習得されました。それ意外の方達も、もう騎士団の団員より数段強くなりました」


「ほーう、それならもうこの世界は救われたようなもんじゃないか?」


「はい、今回の勇者召喚は大成功です」


 突然アリア様の顔が親の敵を見るような憎々しげな物に変わった。


「あなたさえ、居なければ!!!」


 予言者が合図すると、会話の最中に準備したのであろう巨大な火の玉が飛んできた。


「ッチ、予想はしてたよ!!」


 念のため持ってきていた蓄魔石で魔法を吸収しようとする。


 しかし威力が弱まっただけで完全に吸収出来なかった。


「超級魔法だと!?」


 こいついきなり超級魔法ぶっぱなして来やがった。


 魔法は中級魔法程度の威力に弱まったが、避け損ない、俺の横顔に端がかすった。


 タールのように炎が飛び散り、横顔にまとわりつく。


「ガアァァァァァッァァァァァァァァァア!!!??」


 凄まじい熱が痛みとなって俺の脳を焼く。


 パチパチと音を立てて眼球の水分が蒸発していく。


 獣のように叫びながら床を転げ周り、火を消そうとする。


 なかなか消えないので手が焼けるのも構わず手を押し付け、何とか消火に成功する。


「あらあら、外してしまいましたねぇ」


「ぐうぅ……何故だ?……俺が何をした!?」


「あなたさえ居なければ勇者召喚は完璧だった!!伝説の天職を三人とも召喚したことで永遠に称賛されるはずだった!!なのに最弱の鍛冶屋が居たことで完璧ではなくなった!!あんたのせいで、あんたのせいで!!」


 半狂乱になって喚きちらしてる。このままだと殺されるだろう。何とかしなければ。


「アリア様、先ほどのカースフレイムにより建物が炎上しております。早く避難しなければ危険です」


「あら、そう。じゃあ避難しましょうか。ああ、あなたは逃げられないように足を切り落としておきましょう」


 そう言って魔法の詠唱を始める。すぐに魔力を吸収しようとしたが、先ほどの吸収で満タンになっており、吸収出来なかった。


「ウインドカッター!!」


 しかし放たれた魔法は足ではなく、俺の左腕を切り落とした。


「ガアァァァ!?腕がぁ、う、腕がぁ」


「あらあら、少し手元が狂いましたわ」


 嗜虐的な笑みを浮かべて白々しく言う。


「アリア様、これ以上の滞在は本当に危険です。早急に避難を」


「あぁ、分かったわ。どうせ逃げられないでしょうしね」


 這いずる俺を放置し、女共は逃げていった。


 もうかなり火が進んでいる。木材が乾いて燃えやすくなっていたのだろう。


 徐々に火が近付いてくるが、痛みで動けない。


 万事休すかと諦めかけたとき、俺にある閃きが生まれた。


 自分の体に右手を置き、蓄魔石の魔力を流し込んだ。


 意識するのは俺が持つ唯一のスキル、身体強化。鍛冶屋では筋力強化の下位互換だと説明されたが、今はこれに賭けるしかない。


「ギギッガァァァァッァアァァァァァァァァァアッァァァ!?」


 意識しながら魔力を流し込むと、いきなりすべての痛みを吹っ飛ばすような凄まじい痛みが体を襲った。


 自分の体が作り替えられていく感覚。魔力が俺の体を侵食してくる。


 意識が遠退くが気合いと根性で堪え、改造を続ける。


 噛みしめすぎた歯茎から血が滲む。


 手応えを感じて魔力を止める。痛みが消えたことで気合いと根性で繋ぎ止めていた意識が遠退いていく。


 薄れ行く意識の中で己の死を感じる。


「おい、にいちゃん!?しっかりしろ!?くそっ死ぬなよ!!」


 何故か聞こえる鍛冶屋のおっさんの声を聞きながら、最後に聞くならリンちゃんの声が良かったと思う。


 俺の意識は闇の中へ沈んでいった。


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