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努力を知らない卑怯者  作者: 自宅警備員Lv9999
短章 やっちまった人達
113/164

vs黒龍

長い



「……?」


 ふと、何かを感じた。


 思わず足を止めてしまう。


「?団長、どうされました」


 副団長のリティカが不思議そうに聞いてくる。


「あ、いえ。なんでもありません」


 いや、確かに感じた。あれは強者の気配。


 それもとんでもない強さを持った……


「だんちょーーーーーーー!!!!!」


 私の部下のコレットが叫びながら全力疾走してくる。


「うわっ!!」


 どべちゃっ、と転び、勢いそのままに私の足元まで滑ってきた。


「相変わらずそそっかしいですね……」


「え、えへへ……いや!!そんなこと言ってる場合じゃないんですよ!!大変なんです!!」


「一体何が大変なんですか?」


「大森林の方からとんでもなく凶悪な見た目の黒いドラゴンが現れたんです!!」


「えぇ!?」


「それだけじゃなく、大森林から凄まじい量の魔物がこの街に向かってきてるんです!!」


「はぁ!?コレット、あんたさっきから何言ってんの?魔物の大発生だったらコウガさんが鎮めてくれたじゃない」


「本当なんですよ!!早く出撃しないと民間人に被害が……」


「そうですね。早急に出撃しましょう」


「えぇ!?信じるんですか!?」


「聞いた話によると、師匠はこの街を追い出された時に、一つの石像を置いて行ったそうです」


「石像?それって、あの勇者が話も聞かずに粉砕しちゃったやつですか?」


「はい。そしてあの石像を設置してから魔物の大発生は収まった……」


「……絶対あの勇者が戦犯ですよね?」


「そうですね。事が済んだらぶん殴りましょう」


「団長!!コレット!!行きますよ!!」


 いつの間にか会話から離れ、団員達を集めて来たリティカが二人を呼び寄せる。


「おや、仕事が早いですね」


「はいはい、コレットの話だと民間人が危ないんでしょ?早く行きましょう」


「副団長……!!信じてくれるんですね!!」


「だ、団長が信じたからに決まってるでしょ!!早く行きましょう!!」


「フフ、そうですね。皆さん、我々は今から街の外の緊急パトロール出動します。いつ魔物と戦闘が始まるか分からないので、気を引き締めていきましょう」


『はい!!!』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 膨大な魔力をその身に取り込み『進化』した、人間で言うところの大量レベルアップを果たした元ドラゴン。


『凄い……力が湧き上がってくるぞ……!!これが力か……!!』


 いきなりの変化に呆然としていた正義は我に帰り、聖剣エクスカリバーを呼び出す。


「大丈夫だ!!さっきは勝てたんだから、少し強くなったぐらいじゃ負けやしない!!」


 その勇ましい声にパーティーメンバーの硬直も解け、戦闘態勢に移った。


「ぜりゃぁ!!」


 エクスカリバーを振りかぶり、高速で斬りかかる。


 エクスカリバーは聖剣と呼ばれるだけあって、高い耐久性と切れ味をもっている。岩でもこんにゃくのように切り裂けるほど。


 しかし


――ガギィン!!――


「なっ!?」


 全身を包み込む鱗に弾かれてしまった。鱗には傷一つ付いていない。


『残念じゃったのぉ。小僧』


「く、クソッ!!」


 仕方なく離脱しようと後ろに飛ぶ。


『遅い』


――バシィン!!!――


「がっ!?」


 空中に飛び上がった正義を凄まじい勢いで振るった尾で弾き飛ばされた。


 水平に吹っ飛ばされ、数回バウンドしてやっと止まる。


「あ……が……」


 死んではいないようだが、かなり大きなダメージを受けたようだった。


『さて、次はどいつじゃ?』


「「「ひっ……」」」


 戦力的にも精神的にも柱だった正義が一瞬でログアウトしてしまった為、後退るハーレムメンバー達。


 そこで、彼女らの前に出る男達がいた。


「嬢ちゃん、ここは任せな」


「えっ……」


「俺達もSランクの端くれ、時間稼ぎくらいは出来る」


「今は逃げて、街の連中とワルキューレを呼んできてくれ」


 それは、洞窟で助けられた冒険者3人だった。


「で、でも……」


「早く行け!!」


「これ程の魔物だ、下手すりゃ街が消えちまう」


「さっさと逃げろ!!」


「わ、分かったわ!!」


「頑張ってください〜!!」


「任せたわよ!!」


 少女達&アリアは街の方へと走り出した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「あ、あれは……!?」


 門から出たワルキューレ達が見たのは、大森林とアロアの間の荒野に居座る巨大な黒い龍だった。


「黒龍……!!」


 ワルキューレの団長、リュー・ローズは苦々しげに顔をしかめる。


「こ、黒龍ってあの団長の故郷を滅ぼした……」


「一匹で国を滅ぼすっていう、災害級の!?」


「な、なんでそんな怪物がここに……!?」


 強大な存在への畏怖はワルキューレの全員に伝播し、士気が下がる一方だったが


「大丈夫です。あの黒龍はおそらく進化したばかり。自分の力を制御できません。警戒してかかれば勝てるはずです」


 彼女らが心から信頼する団長。そのコトバによって払拭された。


「団長がそうおっしゃるなら大丈夫ですね!!さっそく掛かりましょう!!」


「コレット、団長の話を聞いてた?警戒して掛かりなさいよ!!」


「危険なことに変わりはありません。ペリエさん」


「は、はい!!」


 名前を呼ばれた新入り団員が慌てて返事をする。


「あなたは冒険者ギルドへ行って、ギルドマスターに事の次第を伝えて下さい。冒険者達の協力が必要です」


「りょ、了解しましたっ!!」


 元気に走って行った。


「さぁ皆さん!!私達は冒険者が来るまで私達だけで黒龍を食い止めます!!」


『はい!!』


「では、行きましょう!!!」


『はーい!!!』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「正義、しっかりして!!」


「気絶しているだけですよ」


「う〜、あのドラゴンめ〜」


「許せない……」


 正義を回収し、街へと走る勇者パーティー。


「あ、あれってワルキューレって人達じゃない?」


 街の方から走ってくる集団に気付いた。


「あなた達は……?」


 立ち止まった団員が尋ねる。


「わ、私達は冒険者よ!」


「あのドラゴンに襲われちゃって……」


「なるほど……では早くここから離れ、街の中に居てください」


「わ、分かったわ!!じゃあ頑張ってね!!」


 会話を終え、黒龍に向かって走っていくワルキューレの団員。


 会話を終えた勇者パーティーは、街に向かわなかった。


 向かったのは自分達が乗ってきた飛行船。


 彼女らは龍を他人に任せ、逃げる気満々であった。


『むう?』


 地面に転がって動かない3人の男から目を離した龍は、自分を殺そうとしてきた勇者パーティーが飛行船に向かって走っているのを目撃した。


『まったく、それでも勇者を名乗るのか……ま、逃さんがの』


 牙の隙間から覗く口内が、溶鉱炉のように真っ赤になる。


 火花を散らしながらエネルギーを口内に蓄え、ブレスを吐いた。


 ドレッドドラゴンの頃のような、炎のブレスではない。


 極太のレーザービームのブレスを。


――ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!――


 大地を抉りながら進んだブレスは、飛行船をたやすく破壊した。


「あ、あぁ!?飛行船が……」


「に、逃げられないですよ〜」


「ど、どうしましょう……」


「とりあいず街の中へ!!」


 希望を打ち砕かれ、呆然となる少女達。


『さーて、ジワジワ追いかけて……』


「はっ!!」


――ギャリィ!!――


『ぬぅ?なんじゃ小娘、引っ込んどれ』

 

「そうはいきません。仕事なので」


『やれやれ……』


 面倒臭そうに体の向きを変え、まずはコイツを片付けて行くかとしたとき、


「今です!!」


 攻撃してきた騎士に気を取られ、気付かなかった。


 隊列を組み、魔法を準備していた者達の存在に。


『くっ!!』


 慌てて防ごうとしたときには、目の前に色とりどりの魔法が迫っていた。


――ボゴゴゴゴゴゴゴゴォン!!!!――


 正面からの中級、上級魔法直撃。普通ならばそこで終わるはずであった。


 誰かが呟いた。


「やったか?」


――ゴァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!――


 怒りの咆哮で土煙が晴れる。


『もう許さんぞ人間め!!』


 鱗が数枚剥がれ、傷づいたものの、ピンピンしていた。


「そ、そんな……」


 ほとんど効いていないことに絶望するが


「少しですが、効いています!!これを繰り返しましょう!!」


 勇ましい団長の声によってまた士気が回復した。


 魔法部隊を狙って尻尾を振るう。


「ふんぬっ」


 重厚な鎧と巨大な盾を持った団員数名が、薙ぎ払いを食い止める。


 1例に並んで壁を作るが、あえなく弾き飛ばされた。


 しかし、勢いを緩めることには成功し、魔法部隊は守られた。


『クッ』


 体が大きい為ゆっくりとしか動けず、追撃が出来ない。


 体制を整える間に剣を持った攻撃役にチクチクと攻撃され、そちらを追い払うと準備が完了した魔法が飛んでくる。


 こちらが攻撃しても大盾で防がれ、大盾を持った騎士を弾き飛ばしても後衛の回復部隊が治療してしまう。


 まさに理想のムーブ。龍にとってはウザいパターン。


『ああ、面倒臭い!!』


 また口内にエネルギーを溜め始める。


「ブレスが来ます!!」


「障壁用意!!」


 上級魔法の障壁は、物理攻撃・魔法攻撃共に防ぐことができ、更に耐久性もかなり高い強力な魔力の盾である。


 使用するための魔力が多いので強力な一撃を防ぐ為の奥の手である。


「「「「「魔導の盾よ、我らを守れ『魔導障壁』!!!」」」」」


 ブゥンという重低音と共に龍と騎士団を隔てる巨大な魔法陣が現れた。


 間髪入れず、飛行船を破壊したレーザービームブレスを吐いた。


――ゴォオオオオオオオオオオオオオ!!!!――


 ビームブレスが魔法陣に直撃した。


 ブレスの凄まじい熱と圧力に ビキリ と魔法陣に亀裂が走る。


「うそでしょ!? この人数の障壁が!!」


「喋ってないで、魔力を籠めなさいよぉ!!」


 ビキビキと亀裂が拡がり、魔力でその亀裂を修復していく。


 壊れる速度、直っていく速度はまったく同じ。


 走った亀裂が元通りになり、また亀裂が走ってを繰り返すこと30秒程。


 徐々にブレスが細くなっていき、遂には止まった。


「防ぎ切ったぁ!!」


「今です!!一気に押し切って……」


 そこで、騎士団はやらかしてしまった。


 気を抜いたら一瞬で死ぬほどの敵に対し、ずっと気を張っていた。その為、チャンスの到来に魔法部隊が気を抜いてしまったのだ。


 その結果


『まだじゃぁ!!!』


 30秒も高火力のブレスを維持し、煙を吹いている口が再び真っ赤に光る。


「もう一度障壁を!!」


 気付いた団長の叫びに反応し、ほとんど反射的に障壁の詠唱を開始する。


 しかし、さすがに間に合わなかった。


――ゴォオオオオオオオオオオオオオ!!!!――


 無慈悲な光線が魔法部隊の少し前の地面を吹き飛ばした。


 華奢な体の騎士達は宙を舞い、大部分が気絶、もがく者はいたが起き上がる者はいなかった。


『ぬぅりゃぁ!!!』


――ゴッ!!!――


 龍が素早く1回転し、大盾を持った者と副団長も蹴散らされた。


「み、皆さん………」


『お主一人になってしもうたのぉ。さて、どうする?』


「……たとえ一人でも、あなたを討伐するには十分です!!」


『ハッハッハ!!面白い!!やってみろっ!!』


――ゴッ!!!――


――ガギィン!!!――


 また尻尾による薙ぎ払い、それを剣で止める団長。


――ゴッ!!――


「がっ!!!」


 しかし、高速で逆回転した尻尾に背中から弾き飛ばされ、草原を転がっていった。


『その程度か?』


「ぐぅっ!!」


 ズン!!と団長の下半身を踏み付け、爪で頭を押さえ付ける龍。


『ほれほれ、どうしたぁ!!』


――ググッ――


――メキメキィ!!――


「ガァアアア!!」


 踏み付けた下半身にゆっくりと体重をかけ、押し潰していく。


 叫び声を上げ、苦悶の表情を浮かべる団長をドラゴンの顔でも分かるほど嗜虐的な笑みを浮かべて見つめる龍。


 長く苦しみ続けるように、ある程度潰したら緩め、またゆっくりと潰していく。


「おいおい!!ワルキューレがやられちまってるぞぉ!!!」


「急げ!!!助けるんだ!!!」


 そこに、新入りが呼んできた冒険者達が駆けてきた。


『邪魔するでないわ!!!』


 弱めの、しかし十分強力なブレスで冒険者の集団を足止めする。


『貴様ら、動けばこの小娘がぺちゃんこになるぞ?』


 強大な力を持ちながら、無意味に人質を取る黒龍。


「わ、私のことなどいいので」


――メキメキメキ――


「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」


「クソッ、俺達の憧れを……」


「なんて卑劣な……」


「ああっ、団長さん!!苦しむ顔もまた美しい!!!」


 最後の発言をしたものは他の冒険者にリンチされていた。


『クックック、絶望に歪んだ顔はいいのぉ……』


 その時、さらなる絶望が全員を襲った。


「あ、あれを見ろ!!!」


 一人の冒険者が指し示した方向には、大森林があった。


 その大森林から、いつかのスタンピードや、ゴブリン大発生の時のように魔物の大群が押し寄せてきていたのだ。


 正義が破壊した石像から漏れ出た魔力によって産まれた魔物と、石像が無くなったことによって再発した魔力災害によって産まれた魔物の大群。


『おお、森におった奴らか……さらなる絶望じゃのぉ。ええのぉ』


 満足げな表情を浮かべる黒龍。


「終わりだ……前のスタンピードの、3倍はいやがる……」


「もう駄目だ……おしまいだぁ……」


 絶望に屈し、武器を落とす者。膝を付き、頭を抱える者。現実から逃れるように、蹲って頭を抱える者。


『いいぞいいぞぉ!!もっと絶望せい!!もう貴様らは終わりなんじゃ!!』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



街中にて


 逃げてきた冒険者によって伝えられた黒龍の出現、ワルキューレの敗北、魔物の大群。


 その事実を知った住民達は軽い暴動を起こしていた。


「おいコラァ!!何商品盗ってんだゴラァ!!」


「うるさいねぇ!!どうせ死ぬんだから最後くらいおしゃれさせてよね!!」


「なぁ、お前」


「なぁに、あなた」


「こんな時だから言うけど、俺宿屋のランちゃんと不倫してるんだ」


「そうだったの。私も、鍛冶屋の親方さんと不倫してたのよ」


「まぁ」「もう」


「「どうでもいいけどね」」


「へっへっへぇ……」


「え!?ちょっと、何すんのよ!!」


「前からお前とヤりたかったんだよ!!この際だ!!いい思いして死んでやる!!」


「だ、だれか助けてぇ!!!」


「へっへっへっぇ」


「ん!?何するんだ!!」


「親方ぁ……僕、ずっと親方とヤりたかったんですよ!!最後にいい思いして死んでやります!!」


「だ、誰か助けてくれーーー!!!」


 白昼堂々行われる犯罪。精神に異常をきたす者。ホモ。


 正にこの世の地獄のような有様だった。


 しかし、そんな喧騒を鎮める声が上がった。


「あんた達!!!!!止めなさい!!!!!!」


「そうだ!!!!!静かにしろ!!!!!!」


 声の主は、箱の上に立った男と、男?であった。


「大丈夫だ!!俺達は死にやしない!!」


「そう!!!きっと助かるわ!!!」


 それは励ましの言葉だったが、絶望した人々には不快だったらしい。


「何を根拠に言ってやがるんだ!!!!」


「そうだそうだ!!!!」


「俺達ゃ全員死ぬんだよ!!!!」


「正しいコンギョをゆ・え!!!!!!」


 ストレスのはけ口の罵倒の嵐。


 石すら飛んで来そうだった。


 男と男?はうろたえずに言う。


「前にも、こんなことがあったろ」


「4万もの魔物が、大森林から押し寄せた」


「そんなことは関係……!!!!!」


「その大群をたった一人で半分以上倒した男を知ってるでしょ?」


「……あいつのことだろ!?でもあいつはいない!!!」


「そうだ………あいつはいない………」


「あいつがいれば………」


「でも、あいつは俺達が…………」


【追い出してしまった】


「そうだよな。あいつ、俺達の救世主じゃないか」


「なんで追い出しちまったんだ?」


「ああ……これは報いなのかもな………」


 誰もが、己の行いを後悔した。


 あの男さえ、あの変態の長さえいれば、助かったかもしれないのだ。


「………謝りてぇな」


 誰かの言葉を最後に、喧騒は嘘のように静まった。


 その場にいた誰もが、半裸倒れたおっさんを除いて全員が、心の中で、その男に謝罪した。深く、深く。


「いったろ。大丈夫だって」


 男が言う。


「私達の大隊長は、とっても優しいんだから!」


 「どういうことか」と誰かが言おうとしたが、口を開けたまま固まった。


 かすかに、聞こえたのだ。


―ボォー―


「なんの音だ?」


 音はどんどん大きくなっていく。


――シュッシュゴッゴシュッシュゴッゴシュッシュゴッゴシュッシュゴッゴシュッシュゴッゴシュッシュゴッゴシュッシュゴッゴシュッシュゴッゴシュッシュゴッゴシュッシュゴッゴシュッシュゴッゴシュッシュ……――


 凄まじい早さで繰り返されるその音は、まさしく希望の福音だった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 嗜虐思考の持ち主である黒龍は、絶望を増す為に攻撃しなかった。


 しかし、この行動によって黒龍もやらかしてしまっていたのである。


 とっとと蹂躙しておけばよかったものを。


――ボォー――


『ん?』


――シュッシュッ……ゴッゴッ……――


「なんだ?」


「変な音が……」


――シュッシュゴッゴシュッシュゴッゴッ……――


「近付いて来てる……?」


「どこから……」


 絶望も忘れてきょろきょろ辺りを見回す冒険者達。


 音はどんどん大きくなっていく。


――シュシュゴゴシュシュゴゴッ…――


 気付いたのは、未だ踏み潰される団長であった。


 北の空から飛来するそれを目視し、団長は確信し、安堵する。


「ああ……師匠……来てくださったんですね」


――シュシュゴゴシュシュゴゴシュシュゴゴシュシュゴゴシュシュ……――


 黒龍と冒険者達は、音と共に存在に気付く。


――ボォー!!!!!!!――


――ドッゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!――


 聖剣も上級魔法も通さない黒龍の鱗に包まれた身体に、凄まじい衝撃とダメージを与えたそれは……


『グハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!?????』


 さながら流星の如く、龍の身体に突っ込んだ機関車であった。



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