愚行
暗闇にジェントーの死に顔が浮かぶ。
「コウガ殿ぉ……何故助けてくれなかったのですぅ……?コウガドノォオオオオオオオオオオオオ!?」
血みどろの怪物となったジェントーが消え、今度はファルが浮かび上がる。
「コウガ様。私のことなんて良いんです。だから、そんなに思いつめ無いでクダさい。コウガサマが苦シイと、ワたシも苦しくナッチャウんでスよォオオオオオオオオオオオオオオオオ」
また怪物となり、消える。
今度は声が聞こえてくる。
とても俺とは思えない、錆び付いたような悲しい声が。
『失うな』『信じるな』『力を作れ』『調べろ』『知れ』『考えろ』
「……またこれかよ……」
未来の光景を見て以来、よく悪夢を見るようになった。
汗まみれの額を汗まみれの手で拭い、夢の言葉を思い出す。
『失うな』『信じるな』『力を作れ』『調べろ』『知れ』『考えろ』
「何だってんだよ……クソッ」
失うなと言われても、信じるなと言われても、現状ではどうしようもない。
魔道具は魔力の関係であまり早くは作れないし、信じるなと言われても信じてないからなんのこっちゃである。
しかし、悪夢でも何でも、安眠を妨害してくる上にあの内容である。
鋼牙のSAN値は徐々に削れていき、性格も徐々に荒んでいった。
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「こっ、コウガ様!!大変です!!」
ファルが駆け寄ってくる。
「どうした?」
「こ、これを……」
ファルは手に持っていた情報誌の一つの記事を指差す。
そこには
【勇者、忌むべき石像を破壊】
先日、アロアを訪れた勇者パーティーが、街の近くに立つ巨大な道化師の石像を破壊した。
この石像はかつてこの街にいた男が魔物避けにと置いていった物であるとして、街の冒険者ギルドマスターは勇者を止めたが、勇者は「この石像を作った男はクズな犯罪者だ。魔物避けどころか、呪いが付与されているかもしれない」といい、聖剣で石像を粉砕した。
街の住民はその通りだ、正しい行いだと勇者を称賛したが、一部の住民からは批判の声が上がっている。
「アハハハハハハハ!!!あの像壊したんか!!バッカで!!」
「笑い事じゃないです!!あの石像がなきゃまた魔物が大発生して……」
「いやいや、その程度じゃ済まんよ」
開発者である鋼牙は薄い笑みを浮かべる。
「っえ?」
「あの石像だけじゃなく、この石達にも言えることなんだけど」
コンコン、とガントレットにはめ込まれた石を指す。
「周りから吸収して蓄える、っていう能力を持ってる訳だから、このちっこい石の中にはハンパない熱とか魔力とかが入ってるんだよ。それが壊れたら……」
「……!まさか」
「そう、壊れた瞬間に今まで蓄えてたものを一気に放出するんだ。熱石だったら一瞬でこの周辺の物は全部蒸発するだろうし、衝撃石だったらこの辺は更地になるな」
「じゃあ石像が壊れたら……」
「蓄えてた魔力が一気に放出されて、どんなバケモンが出て来るやら……」
おーコワ、と体を震わせる。
「それって、アロアがヤバいのではないですかな?」
「田中、居たのか。まぁアロアは消えるだろうな」
「助けに……」
「めんどいから……」
「ですよねー」
仕方ないかー、と笑いながら朝食を食べようとしたとき
――バン!!!――
「話は聞かせてもらったわよ!!」
「聞かせてもらったぞ!!」
扉を蹴破り、マーガレットとピエールが飛び込んで来た。
「コウガちゃん、助けに行ってちょうだい。あの街には私達について行かず、店を開いた弟子がいるのよ!!」
「コウガ、助けに行ってやってくれ。あの街には家を買い、腰を落ち着けた仲間が居るんだ!!」
「えー、めんどくさ…」
「「あ"?」」
「喜んで行かせていただきますっ!!」
この二人を怒らしたら様々な物が危険に晒されると判断した鋼牙は瞬時に念話を飛ばし、へレティックスを集合させた。
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「という訳で、助けに行くぞー!!」
『おーー!!』
利用者が増えた為3両編成になっていた『黒鉄号』に無理やり隊員達を押し込み、(人数の関係で1両まるまるホモが詰まった)温泉郷を飛び立った。
戦闘能力があまりないロベルト爺さんはお留守番。
鋼牙はファルも留守番しておけと言いつけたが、ファルが駄々をこねたので仕方なく連れて行くことになった。
「いつまでも温泉郷って言ってんのもあれだし、ちゃんとした地名考えないとな」
「地名ですか。帰って来てから考えましょう」
「おう」
「…………俺、無事に帰って来たら地名考えるんだ」
「田中貴様ァ!!!!!」
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『アロア付近、大森林にて』
石像が破壊され、鋼牙が言っていた通りに魔力が溢れ出していた。
しかし、溢れ出した魔力はほんの1割程。残りの9割は、石像の破片に残ったままだった。
そしてその破片は、只の粗大ゴミとして放置された。
そして、不幸な偶然が起こる。
伏線回収




