短編集
ストーリー進行に必要だけどそんなに長く無い話とか、単純にどこに入れるか迷ってた話とか、関係ない話とかです。
「う〜ん」
防衛を担当しているマッスル達からの報告書を見ながら、難しい顔で唸る鋼牙。
「どうされましたか?」
お茶を運んで来たファルが話しかける。
「ん、ああ。最近魔物が増えて来たらしくてな。少しだが、ゴブリンの被害も出てきてな」
「コウガ様が言っていた、魔力災害でしょうか?」
「多分な。最近マナストーンの魔力充填が早いと思ったら、ついにここにも来たか……」
「どうしましょう?自警団でも結成しますか?」
「………いや、利用出来るもんは利用しねぇとな」
鋼牙はその日、街に『魔石買取所』を作り、街に滞在する冒険者達に通達した。
『近辺の魔物を狩って得られた魔石は高値で買い取る』
と。
買取額は冒険者ギルドよりかなり高めに設定した為、前にも増して冒険者が訪れ、魔物を狩るようになった。
周辺の魔物の数は抑えられ、被害はゼロに戻った。
その代わり、街に滞在する冒険者の数がめっちゃ増えた。
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「なぁ、田中、佐々木」
「なんですかな?」
「なんでござる?」
「俺のクラメンバーは皆必殺技的な物を持ってんだよ」
「急になんですかな?」
「ジェントーはえげつない高速斬り、マッスルはマッスルポーズで筋力強化、みたいな」
「だからなんでござるか?」
「俺も欲しいんだよ。ハイリスクハイリターンな必殺技が」
「バカみたいな威力の光線撃てるではないですか」
「ありゃ通常攻撃だ。それにしっかり防御すりゃ防げるし、そんなに強くねぇんだよ」
「……どんな技が欲しいんでござるか?」
「お、ノってきた。そうだな、なんか複数魔道具を用意して、それぞれ番号と名前付けて『〜〜の壱号!!〜〜!!』みたいな」
「結局魔道具でござるか……」
「しゃぁねぇだろ。それしねぇんだから」
こんな感じで、鋼牙は強力な魔道具の制作に取り掛かった。
『強くなれ。誰も抗えない程に』
「せっかくのありがてえ助言だしな……」
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「ハァハァ……幼女……ハァハァ」
「ペロペロしたい……ペロペロしていい……?」
「腋をクンカクンカしたい……」
「い、いや……」
裏路地に連れ込まれてしまった幼女に、数人の男達がジリジリと近寄っていく。
彼らは新しく幼女護り隊に参入した新人なのだが、「幼女は影から見守るもの」というルールに反し、幼女に乱暴を働こうとしているところであった。
しかし、この街で彼らの欲望は満たせない。
「やれやれ、厄介な新人共ですな」
数キロ先からでも幼女の泣き声と涙の気配を感知し、駆けつける怪物がいるからだ。
「た、隊長……!!」
「貴様ら、覚悟は出来てるんだろうな?」
「く、くそっ。全員で掛かるんだ!!」
「「「うぉおおおおお!!」」」
剣を抜いた男が一斉に飛び掛かって来たが、ジェントーは構えもせずに立っていた。
そして男が剣を振りかぶった瞬間、シュパッと剣を抜き、凄まじいスピードで振った。
「グハッ」と倒れ伏す男達。
「安心してください。峰打ちですぞ」
ジェントーの剣には峰が無いのだが、そういうことにしておこう。
「さぁ、もう大丈夫ですぞ。お嬢さん」
優しい笑みで幼女の頭を撫でる。
「あ、ありがとうおじちゃん……」
目に涙を浮かべながら上目遣いで礼を言う幼女。
(くっ……かわいい……)
ワシワシと高速で撫で続けるジェントーであった。
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「そういやさ、爺さんの名前とか全然知らねぇわ。教えてくれよ」
自分でスカウトした仲間に対して平然と言ってのける男。
それに対して爺さんは
「?何言っとるんじゃコウガ。温泉郷とやらを建設しとる最中に、歓迎会やってないとか言い出して、そこで自己紹介したじゃろ?」
困惑顔で返した。
「え?いやそんな訳」
「忘れちゃったんですか!?あんなにどんちゃん騒ぎしたのに!?」
「酒飲みすぎて記憶飛んだかのぉ」
「いや俺酒飲まね…」
「忘れてしもうたんじゃな……。仕方ない、よく聞いておくんじゃぞ」
「?????」
釈然としないまま自己紹介が始まった。
「ワシの名前はロベルト・グレイグ、天職は【職人】じゃ。改めて、よろしくの」
「お、おう」
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ロベルト・グレイグ 天職:職人
Lv403
ジョブスキル
【鑑定】
物の価値や使用法が分かる
【器用】
扱う道具が壊れ難くなる
【職人魂】
作品の出来が良くなり、価値が上がる。手を抜いて作った場合は逆に粗悪品になる。
パッシブスキル
木工Lv10 短剣術Lv7 毒耐性Lv7 痛覚耐性Lv5 調理Lv5
気配感知Lv5 潜伏Lv4
ユニークスキル
【Gの意思】
どんな状況であっても不滅の如く生き残る無敵の生命力を得る。
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「♪〜〜」
浴衣姿のマッスルが鼻歌交じりに温泉街を歩いていく。
過酷なトレーニングによって大量にかいた汗を温泉で流し、自分の宿舎へと帰るところであった。
と、その時。
「むっ?」
マッスルの目が石畳の上に金色に光る何かを捉えた。
「これは……」
しゃがんで拾い上げると、それは1枚の金貨であった。この温泉街には貴族や大商人などの富裕層がよく立ち寄るため、このような高価な貨幣が落ちていることが良くあった。そしてそのほとんどが鋼牙によって回収されている。
「さて、どうしたものかなっ?」
あたりを見回すが、何か探しているような人は見受けられない。落とし主はもう宿に入ってしまったか、帰ってしまったか。
ここで、マッスルの頭の中に悪魔が囁いた。
『貰っちまえよ。落とした奴は金貨1枚程度どうも思わねぇ貴族だぜ。お前のほうが有効に活用できるさ』
「むっ……」
その時、悪魔を押しのけて天使が言った。
『ダメだ。落とし物として届けるべきだ。マーガレットが言っていただろう。金貨だろうが銅貨だろうが持ち主にとっては大切なものだと』
「……むぅっ」
迷うマッスル。金貨1枚あれば、かなり豪華なサービスを何回か利用することが出来る。トレーニングへのモチベーションがより良いものになるだろう。
しかし、金貨1枚だ。落とし主が必死になって探しているかもしれない。
マッスルの葛藤のなかで、天使と悪魔が拳の応酬を初め、両者一歩も引かない。
そのとき
――ゴスッガスッ――『オゴッ!?』『ガハッ!?』
筋骨隆々の大男が、天使と悪魔両方を殴り飛ばした。そして
『握力で曲げな』
マッスルは己の筋肉を信じ、従った。
――グシャ――
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「特産品が欲しい!!」
いきなり大声を出す鋼牙。
「なんですかな急に。特産品ならワショクがあるではありませんか」
「浴衣もね」
「そうじゃねぇ!!特権階級だけじゃなく、冒険者にウケる特産品が欲しいんだよ!!」
「え〜、冒険者にウケるって言ったら高性能な武器ですかな〜」
「高性能な武器……はっ!!思いついた!!」
「はぁ?」
「ありがとなジェントー!!」
それから鋼牙はタイタニウムと鉄をスキル【融合】を使って合金にし、オリハルコン並に硬いが安価という最強の金属『ハイイロカネ』を生み出し、それを使って剣を作ったら冒険者にバカウケ、大儲けしましたとさ。
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――コンコンコン――
「どうぞ〜」
鋼牙の部屋の扉ノックし、入って来たのは田中と佐々木であった。
「どうしたよ二人とも」
「いや、そのですな……単刀直入に言いますと……」
煮えきらない態度を取る田中に代わり、佐々木が言ってきた。
「僕達は、そろそろ地球に帰りたいのでござる。鋼牙氏は楽しんでいるようだったのでどうかと思ったのですが……」
「気なんか使うなよ。俺もおんなじだ。帰りてぇ」
「!!じゃあ……」
「帰りてぇんだよ。可愛い愛する妹がいるんだ。一秒でも早く帰りたい」
でもな……と肩を落として続ける。
「帰れねぇんだよ。少なくとも今帰るのは不可能だ」
「鋼牙氏が……」
「俺がどんな魔道具を作ったとしても、だよ」
「ど、どうして?」
「何でも出来るって言ったじゃんか!!」
「…………俺が勇者召喚の魔法を調べた事は言ったよな?」
「うん。落とし穴にはめられたみたいなもんだって……」
「勇者召喚ってのは、契約で成り立ってる。『召喚して魔王を倒してもらえたら帰れます』みたいな感じでな」
「……じゃあ僕達も魔王を倒せばいいの?」
「今言った“契約で成り立ってる”ってのは、きちんとした正規の手段で召喚された場合のみだ。俺達は召喚された訳じゃなく、捕まったみたいなもんなんだよ」
「……えっと、つまり?」
「分かりやすく言うと」
【正規の方法で召喚された場合】
・きちんとした契約を魔法陣に刻み、数十年掛けて、もしくは数千人を犠牲にして魔法を発動させ、上位世界から素質がある数人を召喚する。
↓
・召喚された者が契約を果たし、契約に則って元の世界へ帰る。
【正規の手段ではない方法で召喚された場合】
・一方的な契約を魔法陣に刻み、少しの魔力で上位世界からこの世界までの直通の穴を開け、素質に関係なくランダムに落っことす。
・この場合、帰すという契約が無い為、被召喚者が目的を果たしても帰れない。
「って訳だ」
「つまり、正規の方法は新幹線の往復切符だから帰れるけど、正規じゃない方法は片道切符だから帰れない、と」
「そういう感じだな。だから帰るには歩いて帰らにゃならん訳だ。それぐらい莫大なエネルギー、魔力がいる」
「…………魔力だけなら行けそうな気が………」
「次元を切り裂く魔力だぞ?生半化な量じゃない。それに次元を切り裂いてもどう動けば地球に行けるか分かんねぇだろ」
「「………………」」
「ま、今は楽しむくらいしか出来ねぇ。帰れるにしても、帰れないにしても、思いっきり楽しもう」
「……僕達はそんな簡単に割り切れないですぞ」
「……そうでござるよ」
「俺だって簡単じゃなかったさ。3ヶ月くらいかかったね」




