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努力を知らない卑怯者  作者: 自宅警備員Lv9999
第六章:建国
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変な物は飛ばさないって言ったじゃん



 ガレージ(この為に建設した)の正面、ちょうど扉がある場所に隊長達と見物人の獣人達、隊員達が半円状にガレージの扉を囲んでいた。


 そこに、ガレージの横からひょっこり出て来た鋼牙が拡声器でアナウンスする。


『お集まりの皆さん。今からお見せするのは、この街を更に発展させる為の重要なアーティファクト、魔道具であります。拍手でお出迎え下さい』


 一部の男達が「ハッテン♂……!?」とざわめいていたが無視し、ササッとガレージの中へと引っ込んでしまった。


「何が出て来るんでしょうなぁ」


「うーん、完成形はおろか、作製している様子すら見せなかったからなぁ」


「今回こそはマトモな物が出てくると思うでござる」


「いやー、分からないですぞ。鋼牙氏のことですからなぁ」


 そうこうしている内にガレージの扉が開いた。中は暗くて何も見えないが、なにか巨大な物体のシルエットが闇に浮かんでいた。


――ガッシュ――


 力強い音と共に、白い蒸気がもうもうと溢れ出てきた。


――ガッシュ ガッシュ ガッシュ ガッシュ――


――ググググググ――


 蒸気の中から姿を現したソレは現代人の二人にとっては夢とロマンが詰まった、少なくとも飛びはしない物だった。


 ソレは、まさしく蒸気機関車であった。夢とロマンのスチームパンク仕様で、どっかの映画のタイムマシンのようなフォルムをしていた。


――ガシュゥ〜――


 壮大な音と共に蒸気を撒き散らしながら停車し、運転席から鋼牙が飛び降りる。


 着地した鋼牙のもとに田中と佐々木がぁ駆け寄った。


「鋼牙氏ぃ、機関車を作るのは良いと思うのですが……」


 呆れたような言葉とは裏腹に、子供のように目を輝かせる田中。


「なんだよ」


「線路なんか布施されてないでござるよ」


 同じく目を輝かせながら言う佐々木。


「問題無い。飛ぶから」


「変な物は飛ばさないって言ってたじゃないですか!!」


「許してくれ……俺の中の何かが、これを作れと囁いたんだ……」


 漫才のようなやり取りをしながら機関車を眺めてはしゃぐ17歳。


「コウガ殿、何を作るのかと思ったら、魔導列車を作ったんですな」


 ジェントー達も近寄ってきた。


「魔導列車?これがか?」


「はい。帝国には普通に走っていると聞きましたが、コウガ殿が知っていたとは」


「でもよ、コイツは線路がねぇと走れねぇはずだぜ」


「飛ぶんじゃないのかっ?」


「ああ、スゲぇ速度で飛べる。これでミグレアとこの街を往復するわけだ」


「往復してどうするのですか?」


「会議の時に言っただろ。貴族のマダム達を持ってくるんだよ」


「客車がないと駄目なのでは?」


「あ」


 空気が凍りつく。


「とりあいず試験飛行してみようかっ!!」


 叫び、機関車に飛び乗る鋼牙。


「あ、逃げた」


「ぼ、僕も乗りたいですぞ!!」


 続いてよじ登る田中。


「僕もでござる!!」


 続く佐々木。


「しゅっぱーつ!!」


 宇宙船の運転席のような機関車らしからぬ運転席に座り、足元のペダルの一つをゆっくりと踏む。


――ガシュゥ〜〜――


 車体の下から蒸気が吹き出し、そして


――ウィィイイイイイイイイイイイイイ……――


 音を立てながらゆっくりと宙に浮き上がる。


――ウィーン――


 駆動音を立てて車輪が翼のように外側に折れ、広がった。


――ガッシュ ガッシュ ガッシュ ガッシュ――


車輪と主連棒(車輪に付いてる複雑な動きをする棒)が横向きに回転し始め、車体の至る所から蒸気が吹き出す。


「コレ意味あるのですかな?」


「ない」


 エンジン始動、と呟きながらつまみを上にパチンと上げた。


――キィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ……――


――シュッシュッ ゴッゴッ シュッシュッ ゴッゴッ――


 車体後部の巨大な推進機が唸りを上げ、窯から機関車特有の力強い音が聞こえてくる。


「コレ意味あるのですかな?」


「ない」


 足元のもう一つのペダルを押し込むとゆっくりと前に進み始めた。


 押し込む程に徐々にスピードが上がっていき、


――シュッシュッゴッゴッ――


 という轟音を響かせながら高速で空を飛び回った。


「操作はハンドルなんですな」


「右のペダルが浮力、左がスピード、ハンドルで左右だな。なかなか難しいぞ」


「この景色が映っているスクリーンっぽい物は?」


「車体の正面に付いてる魔眼石の映像だ」


「ハイテクでござるなぁ」


「現在の俺の技術のすべてを結集したからな。……客車は後で作ろう」


「客車がなけりゃ完全に個人用ですからなぁ」


「一応ジェントー達は乗れるぐらいのスペースにしたんだがな。客車が無かったとは」


 うっかりうっかり、と笑う鋼牙を見て、国作るとか言ってたけどこいつ大丈夫かな。と二人は思った。


「そういや、コイツの名前なんにしようか」


「『黒鉄号』とかどうでござるか?」


「お前ネーミングセンスないな。採用」


 命名 空飛ぶ機関車『黒鉄号』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 その後、機関車は『ブレーキを付けるのを忘れた』という理由でガレージへと突っ込んでダイナミック駐車し、その強度を知らしめるという珍事が起こった。


 鋼牙は頑張って客車を作り、2両編成の交通機関として運行を開始した。ブレーキを取り付けるのも忘れずに。


 初運行。ミグレアの王城に飛んで行き、貴族のマダム達と王女姉妹を乗せ、温泉郷へと運んだ。


 温泉郷に到着した際、鋼牙の


「いや〜、事故らなくてよかった!!」


 という発言でジェントー達と姉妹は凍り付いた。


 ココで数日間過ごしたマダム達はとてもココを気に入ってくれたらしく、帰りたくないわぁ〜 と言いながら帰って行った。


 行商人達によって広められた温泉郷の存在は瞬く間に小国に広まり、大国の貴族達も娯楽と癒やしを求め、こぞって温泉郷へ行きたがった。


 癒やしを求めるのは一般の人々も同じで、馬車、馬、徒歩ではるばるやって来る冒険者も多くなった。


 人が来れば需要が生まれ、需要が生まれれば供給が始まる。


 供給が始まれば金が生まれ、金が生まれれば街が発展する。


 街が発展すれば更に人が来る。


 定住して商売を始める人も現れ始め、大森林が近いことから魔物討伐にやって来る冒険者も増えて来た。


 始めは獣人に対する差別によって様々な問題が起こったが、その獣人が大多数の街で暮らすことにより、獣人も自分たちと何ら変わらない人間だと気付く人が現れ始め、問題の数は減っていった。


 この世界で初の、獣人族と人族が対等な立場の街が出来上がったのである。


 鋼牙の計画は順調に進み始めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「クッソ!!あの小僧!!」


 バシッと情報誌を壁に叩きつける。


 薄暗い部屋で、女はその美しい顔を歪めて憎々しげに呟いた。


「たかが鍛冶屋のくせに……!!」


 情報誌には、鍛冶屋の少年率いる組織が獣人族と人族が対等な立場の街を作ったことが報じられていた。


 メイザス王国でも、ブローディアンと同じく領土内の獣人族の村に重税を課し、多くの利益を得てきた。


 しかし、気付いた頃には領土内のほとんどすべての獣人が鋼牙の街を目指して移動してしまったのである。


 獣人から得られなくなった税の収入はかなり大きく、国は少し傾いてしまった。


 そのことに女が憤っていると、扉がノックされた。


 慌てて情報誌を拾って机に置き、女神のような笑みを作ってノックに応じた。


 扉を開けて入って来たのは豪華な鎧を纏った少年だ

った。


「アリア、この情報誌を見たか?」


 少年が手に持っている情報誌は先程壁にフライアウェイした情報誌と同じ物だった。


「ええ。見ましたよ」


「じゃあ、鋼牙が載っていることも知っているよな」


「ええ。汚らわしい獣人族などと共存する街を作ったらしいですね。いわば奴は人族の裏切り者……」


「いやアリア、それは違う」


「……はい?」


「獣人族を差別するなんて間違っている。鋼牙がしたことは正しい」


「正義様、何を……」


「そもそも、鋼牙が本当に根っからのクズなら仲間になる奴がいる筈がない。それに、獣人達を思いやっているからこんな行動をとったんだろうし……」


「正義様。あの男は私を強姦……」


「それなんだが、考えてみたら八雲さんが言ったように君の証言はあやふやで支離滅裂だ。鋼牙は強姦なんてしてないんじゃ」


「正義様!!」


 語気を強めたアリアの言葉が正義の言葉を遮る。


 アリアは怪しく光る目で正義の目を見つめながら言葉を繋いだ。


「あの男はどうしようもないクズなのです。あの男は様々な魔道具を操ります。きっと洗脳出来る魔道具を使って自身に従わせているだけなのです。あなたは勇者ですから、洗脳など効きません。正気のあなたが、皆さんを正気に戻してあげるのです」


「あ、ああ……そうだな……洗脳で……あのクズめ……!!」


 虚ろな目をした正義が憤って部屋から出ていった。


「フフフフフ……」


 アリアは妖しく微笑みながら、正義が出ていった扉を見つめていた。

魔道具紹介


【飛行機関車 黒鉄号】

 飛翔魔法によって低コストで飛ぶ機関車。


 タイムマシンのようなスチームパンクな見た目をしている。


 実は材料にメルカバが使われている。


 動作するたびに無意味に機関車っぽい音が鳴り、機関車っぽい動作をする。



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