ジャパニーズソウルフード
変態の悪行を阻止し、また一つ善行を積んでしまってから、お茶屋に行き、姉妹と一緒にお茶を楽しんだ。
純粋な日本の茶道ではなく、ただただ楽しく団子をほおばり、緑茶モドキをすすり、姉妹と楽しく会話した。茶道の心得なんて知らない。
姉妹はこれまで何度も他の小国のお偉いさんとお茶会をしてきたが、どれも相手の顔色を伺って縮こまったり、逆に相手が気を遣うばかりで、ちっとも楽しくなかったそうだ。
「そもそも、コウガさんと出会った時もある王国でお茶した帰りだったんです」
「私達、運良く容姿に恵まれたから、各国の王子様からよく求婚されるんだ。どいつもこいつも脂ぎったデブだけどね」
「いつかは私達も、国同士の友好の為に嫁がされるんだと思ってたんです……が!!」
「「コウガ(さん)に出会ったって訳 (です)!!」」
「あの時!!絶対絶命のピンチに颯爽と表れたコウガさんを見た時、直感したんですよ」
「結婚するなら、この人がいい……ってね!!」
「ふ~~ん」
「反応薄いなぁ……。自分で言うのもなんだけど、私達結構美少女だと思うよ?」
「そんな美少女が結婚を申し込んでやってるんだぞ、てか?」
「あっ、そういう訳じゃ……」
「すまん。ちょっといじわるだったな。でもなぁ、今んとこ結婚とか考えてないんだよな。そして今後も考えないと思う」
「……コウガさんは、女の人に興味がないんですか?」
「ぶっちゃけ無いな。親父が言うには、俺は『無性愛』なんだってよ」
「アセクシュアル?」
「俺はお前らを見ても、『可愛いなー』とは思うが、それ以外の感情は出てこない。仲良くなりたい、もっと距離を縮めたい、そうは思わないし、思えない」
「……私達を可愛いって思うんでしょ?」
「おう」
「じゃあ、側にいる理由は十分でしょ?」
「……はっ、それで良いならな」
「十分だよ!!ねぇお姉ちゃん」
「ええ!!もっと近くにいたいです!!」
「じゃあ好きにすりゃあいい。どうなっても知らんがな」
「うん!!」「はい!!」
[鋼牙が姉妹を口説いた!!リア充め堕落しろ!!]
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その後、暗くなるまで温泉街を遊びまわった。
足湯、お土産、迷路のような裏路地探索。すっかりあたりは夕暮れに染まってしまっていた。
油屋へ帰り、一面畳の宴会場に長机を用意する。そして机一面に我等が日本の誇らしき最強の料理スシを並べる。
温泉宿でなんで寿司なん?と鋼牙はツッコんだが、佐々木と田中は譲らなかった。
「寿司ですぞ!!和食とは寿司!!寿司無くして和食なし!!」
「寿司とはたんぱく質と炭水化物を同時に摂取出来る究極の料理なのでござる!!異なる文化に触れることであの姉妹も喜ぶはずでござる!!」
「お前ら自分が食べたいだけだろ。つか、この世界に米と酢とわさびと醤油とネタはあるのか?」
「鋼牙氏こそノリノリじゃないですか。それなら大丈夫ですぞ」
「マーガレットさんがそういうものを見たことがあると言っていたのでござる!!」
ということになり、俺達は世界中の物が集まる国、商業国家コマーシャルへ寿司の材料を買いに行った。
そこで色々あったのだが、それはまた別のお話。
しっかりと材料を仕入れ、佐々木の知識で寿司を作った。
試食会の時
「思えば、この世界に来てそろそろ1年が経つんだな」
「和食を食べると、思い出しますなぁ」
「……うっ、うぅ、かぁちゃーん!!!!」
召喚された三人は故郷を思い出し、泣いた。
鋼牙なんかは過酷だったこともあり、ギャン泣きしてファルに慰められていた。膝に突っ伏して泣いている鋼牙の頭を撫でるファルの顔はなんだか危ない顔だった。
そんなこんなで、寿司である。
「えっと、これはどういう食べ物なの?」
「お教えしよう。まずはこの物体をつまみます」
「「は、はい……?」」
姉妹だけでなく、護衛の騎士達やヘレティックスの隊長達も三人に習って寿司を一貫ぎこちなくつまみ上げる。
マッスルは力加減を間違え、潰してしまった。
「それをちょんちょんとこの黒い液体に浸します」
数人が浸しすぎてシャリが崩れてしまった。
「食します」
バクン!! と一貫の寿司が三人の口の中へ消えた。
未知の領域であるため全員口に入れるか迷っていたが、ミリアムが意を決してパクっと食べた。そして次の瞬間
「お、美味しい!!」
目を輝かせながら言い、ひょいパクひょいパクと次々に寿司を小さな口に納めていった。
「わ、私も……」
プリシラも食べ、同じように次々食べ初める。
それを見た全員が恐る恐る食べ初めた。
すぐに食べるペースが上がり、大量に握った寿司はみるみるうちに消えていった。
「うめぇだろ?」
「うん!!しょっぱくてトロッとした魚の肉にちょっと酸っぱいオコメがあわさって、すっごく美味しい!!」
「一口サイズですから、次々食べてしまいます!!」
好評好評。食レポまで頂いてしまった。
「うまくいきましたな」
「寿司にして良かったでござる」
「うむ。正直晩御飯は適当にしようと思ってたからな」
「「良かった」」
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「いっぱい食べたぁ……」
「お腹いっぱいですぅ……」
食事会の後の獣人のようにデレーンとする姉妹。
姉妹のみならず、護衛から隊長までデレーンとしている。
「おい、プリシラにミリアム。寝るにはまだ早いぞ」
「もう満足ですよぉ」
「温泉郷……最高……」
「とりあえずベランダまで来てくれ。見せたいものがあるんだよ」
「「……ん!!」」
鋼牙が移動を要求すると、姉妹は同時に腕を突き出した。
「……ん?」
「「だっこ」」
「おめぇら何歳だよ!!」
「11歳ですぅ」
「10歳ぃ」
「お姉さんんでしょ!!立って動きなさい!!」
「お母様みたいにいわないで下さい……」
「わかったよぉ……」
「よぉいしょっ」
「「ひゃっ!?」」
寝っ転がる二人をゴーレムフィストを活用して両腕に抱えた。
そのまま温泉街に面したベランダに歩いて行く。
「ほら、見てみろ」
「う、わぁ……」
「す、すごい……」
鋼牙が見せたのは、夜になり、明かりが付いた温泉街だった。
真ん中の水路に一定間隔で立てられた行灯風の街灯と、店先の提灯の明かりで息をのむほど美しい夜景が出来上がっていた。
「コウガさん」「コウガ」
「ん?」
「「絶対また来るね」」
二人はキュッと鋼牙に身を寄せた。
二人の髪飾りが頭部に突き刺さり、鋼牙の笑顔が固まった。
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