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努力を知らない卑怯者  作者: 自宅警備員Lv9999
第六章:建国
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極楽温泉



 浴衣に着替えた二人を連れて、三人で油屋を出る。


 三人になったのは姉妹が我儘言ったからだ。後ろからこそこそと女騎士さんが着いてきてるのはバレバレだったが。


 姉妹は全く気付いていないが。


「ねぇねぇコウガ、ここは観光地だって言ってたけど、どんなものがあるの?」


「ズバリ、温泉だな」


「「オンセン?」」


「簡単に言うと風呂だな。ここにはお湯が湧き出すから、それを使って風呂を造ったんだ」


「お風呂、ですか……」


「確かに珍しいけど、私達は毎日入ってるよ?」


「お前さんたちが入ってるのは『あっためた水』だろ?そんなもんとこの世の極楽である『温泉』を一緒にしてはいけない」


「う、うん」


「まぁ、とりあえず入って見てくれ」


 一軒の浴場に入る。


 ここは無料で入れる公衆浴場ではなく、様々な工夫を凝らした有料の浴場である。


 油屋には及ばないが、温泉街の中ではダントツの気持ちよさを誇る。


 「一緒に入ろう」という姉妹を無理矢理女湯に押し込み、後ろの女騎士はほっといた。


「ふぅ……さってと、行くか」


 そして俺は姉妹の接待を一応女である 


 ガスッ!!


 素晴らしい淑女であるマーガレットに託し、ある場所へと向かった。



ーーーーーーカッポーンーーーーーー



『うわぁ!!スッゴい広ーい』


 広い浴場にミリアムの声が響き渡る。


「声が響くから、大きな声を出さないようにと言われたでしょ」


 プリシラは冷静だったが、それは爆上がりのテンションを抑えているだけだった。


 広い浴場には、プールのような広い浴槽、個人がのびのびと入れる大きな長方形の浴槽、ごぼごぼと煮えている浴槽、お湯で出来た滝など、公園の遊具のような浴槽が沢山並んでいたのだ。


「さっそく入ろうよ!!」


「そ、そうね」


 湯船へと向かう姉妹だったが


「ダメよお嬢ちゃん達」


 いきなり後ろからガッシィと首根っこを掴まれる。


 そのまま持ち運ばれ、小さな桶をひっくり返したような椅子に座らされる。


 椅子の正面には机のように設置された石の板があり、おかしな魔道具が設置されている。


「まずは、体を洗ってからよ」


「え、えぇー。やだよぉ……」


「お風呂に入れば汚れは落ちますし……」


 嫌がる姉妹。それも無料はない。石鹸なんか無いこの世界の体を洗うという行為は、体に付いた垢を湿らせたコワゴワの布で力ずくで削るという、拷問染みた行為なのだ。


 まだ幼い姉妹が嫌がるのは当然だった。


「大丈夫、痛くないから。ほら、この石を布で擦ってみて」


 言われるがままに、渡された白い石を布で擦る。するとどんどんと泡が出来るのだ。


「泡が出てる!」


「ど、どうして?」


「驚くのはまだ早いわよ。さぁ、少し擦ってみるわね?」


「は、はい」


 ゆっくり優しく背中を擦る。


 石鹸の力によって、それだけで垢が落ちてしまった。


「はい、おしまいよ」


「え、もうですか?全然痛くなかったです」


「そうでしょう。さっきの石は石鹸って言ってね。この泡を付けるとちょっと擦るだけで垢が落ちちゃうのよ」


「へ、へぇ……!!」


「しかも。ちょっと泡の匂いを嗅いでみて」


 言われた通り、泡に顔を近付けると


「あ、お花の香り!」


「そう、この石鹸で体を洗うと、体から良い匂いがするのよ。それも身嗜みだと思わない?」


 この石鹸を作ったのはまだアロアにいた時だった。


 久しぶりの入浴時、悲しい事故が起こる。


『コウガっ、背中を洗おうっ!!』


『お、じゃあお言葉に甘えて』


『行くぞっ。ふんっ!!』


――ザシュッ――


『ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!!!』


 瀕死の重症を負った鋼牙は佐々木の知識を頼りに石鹸を作ったという訳だった。


「洗い終わったわね?」


「うん」「はい」


「今度は髪を洗うわよ」


「体はともかく、髪は毎日洗ってるよ?」


「そうですよ。早く湯船に浸かりたいです」


「石鹸を見たでしょ?髪を洗う為の石鹸もあるのよ。ほら、あそこのファルちゃんみたいなサラツヤヘアーになりたくない?」


 隣で髪を洗っているファルに姉妹の視線が行った。


 ちょうど泡を流したところらしく、見事な黄金の髪は明かりを反射して艶やかに光り、さわり心地も良さそうだった。


「ファルちゃーん、ちょっと来てちょうだい」


「え?あ、ここに居られたんですか。なんのご用ですか?」


「ファルちゃん、髪洗うの上手いでしょ?洗ってあげてちょうだいよ」


「えぇ!?で、でも私みたいな獣人が王女様の髪に触れては……」


「良いわよね?」


「はい!是非お願いします」


「じゃ、じゃあ失礼して……」


 シャンプーは佐々木も知らなかったので、蜂蜜と水を適当に混ぜるという完璧な調合で作られた。適当に作った割にはかなり良い感じだったので結果オーライ。


 手に蜂蜜シャンプーを着けたファルは、頭皮に塗り、マッサージすように髪を揉んだ。


「ふぁあああああ!!スッゴく気持ちいいです!!んっ、あはぁっ」


「ファルちゃん?なんか危ない声が出てるんだけど……」


「私もコウガ様にやってもらった時はそんな感じでしたよ」


 幽霊屋敷を探索した際、鋼牙が「何でも望みを聞く」と言ったのをしつこく覚えていたファルは、しっかり有効活用していた。


「はい、これで完璧です。コウガ様が言うにはこんでぃしょなーというものがあるそうなんですが、『作り方わかんねぇわww』とのことです」


「相変わらず適当ねぇ……」


「そこがいいと思うんですよ。あ、ファルさん、ミリアムのほうもお願いします」


「よろしくね! ふぁあああああ!!気持ちいいぃいいいいいいい!!あっ、あんっ、はうっ」


「確かに、コウガちゃんは適当だけど、どこか人を寄せ付ける何かがあるのよね」


「なんか、全部見通してるって感じ?不思議な感じがするんだよねー。あはぁっ」


「時々卑怯でクズな行いをしますが、とても優しい心の持ち主ですからね」


「はい、コウガちゃんの話はここまでにして。そろそろ湯船に浸かりましょ」


「わーい!!」


「ついにですか!!」



ーーーーーーカッポーンーーーーーー



「「はふぅ~~」」


 まずは一番大きな浴槽にゆったりと浸かる。


 湯船に入ると、気の抜けた声が思わず出てしまうほど気持ちいい。


「なんだか、体の芯から暖まる~~」


「心まで柔らかくなってるみたいです~~」


「ふふふ、おうちのお風呂とは違うでしょ」


「はい~~、こちらのほうが気持ちいいです~~」


「えっと、リュウサンエンセン?という温泉だそうです。傷の薬になったり、美肌になったりするそうです」


「へぇ、そうなの?」


「ササキさんがそう言ってました」


「じゃあ良いことずくめね」


「でも、入ってはいけない人もいるらしいです。よくわかりませんでしたが……」


「まぁ、後で聞きましょ。さぁ、次の浴槽にいくわよ!!」


「「はーい!!」」


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