荒稼ぎ of the Dead
何か普通に生産職無双みたいになっていく……。
俺は今持っている武器なら魔物を大量に狩れるんじゃあ無いだろうか、いやできるに違いない。
そう思って魔物狩りに行く事にしたんだが、魔物の素材を売れる所のあてが無い。
なので俺の知恵袋ことリンちゃんに聞いてみる。
「魔物の素材を売れる所って冒険者ギルド以外にないのか?」
「ありますよ?普通の商店でも買い取りはしてくれると思いますし、傭兵ギルドや商人ギルドでも売れるはずです」
「う~ん、普通の商店じゃあ少しずつしか売れなさそうだな。となると商人ギルドかな」
「傭兵ギルドはどうしたんですか?」
「何か傭兵ギルドって無法者の巣みたいなイメージがあって……」
「そんなこと無いですよ?確かに乱暴な人はいますが大体の人が温厚ですよ。傭兵ギルドの仕事は警護が主なので、魔物と戦うのが怖い人や、人を守るのが合う人などが多いので冒険者ギルドより温厚な位です」
「はぇ~、先入観ってダメね」
その後俺は傭兵ギルドへ訪れた。そこの受け付け嬢に登録していなくても素材を買い取ってくれるか、買い取り価格はどのくらいか等を聞いた。
そして問題無く買い取ってくれること、価格は冒険者ギルドと変わらない事を知り、早速狩りに出掛けた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
門を出て数分歩く。 ちらほら同業者が見えていたが、大分少なくなってきた。
ベチャ、ベチャ、ベチャ
早速魔物を発見、そのプルプルしてそうな見た目から、と言うか完全に
「ス、スライムか!!」
スライムだった。少し違うと言えば全然可愛くない、寧ろ煮こごりが腐ったみたいな見た目で気持ち悪い。
素早く近づき剣で突く。スライムは水が固まったようなものなので、核を壊さなければ倒せないらしい。
俺の突きは狙い通り核を砕き、スライムは溶けてしまった。
一発で当たったのを剣のおかげと考えるのは早計だろうか。
スライムから取れる素材は無いに等しいのでスルー安定だな。
ズンズン進むと、異世界モノのテンプレ、緑色の小鬼ゴブリンを見つける。
手に棍棒やサビッサビの鉄剣を持っており、正面から行くのは怖かった。
なので、頭を使う事にした。
1、草むらに隠れて近づきます。
2、手頃な大きさの石を遠くにぶん投げます。
3、数メートルしか飛ばなかった事に絶望します。
4、立ち直ってから石が立てた音に気を取られているゴブリンの後ろに近づきます。
5、一匹ずつ口を塞いで引き倒し、剣で止めをさします。
6、急所を外してしまい、痛みで暴れるゴブリンが声を上げます。
「ぐぎゃぁぁぁぁ!!」
7、振り返った3匹と目が合います。
8、あ……………
「ぐぎゃ!?」
「ぐぎゃぎゃ!?」
叫びながら武器を構え、突進してくるゴブリン共。俺の体はゴブリンから出される純粋な殺意に固まる。
教室で向けられた殺意とは比べるのもおこがましい獰猛な殺意。
筋肉が仕事を止めたかのように動かない俺の体。
ただヤバいヤバいと思うだけの脳ミソを置き去りにして、俺の体が勝手に動き始めた。
目にも止まらぬ速さで腰の剣に手をかけ、物凄い速度で、抜刀。一番前のゴブリンの頭が落ちる。
一瞬動きが止まった二匹目目掛けて突進、勢いに乗せて胴体を真っ二つにする。
混乱する三匹目に、腰に構えて突きを放つ。見事に胸の真ん中を貫き、絶命させる。
しばし放心する。剣から滴る血と思われる液体を見つめていると、急に冷静になった。
興奮していて感じていなかった生き物を殺した感覚を思い出し、全身に悪寒が走る。
生物を殺すなど小さな昆虫以外に経験の無い俺。
しかし今、自分は生き物を、それも小柄とはいえ人間大の物を、殺した。
自分が怖くなる。今までは何かを殺すなど考えてもいなかったのに、自分は平然とそれをやってのけた。
自分が自分では無くなるような気がしてきた。
なので俺は深呼吸をし、自分の目的の為だと恐怖を押さえ込む。
(この世界は弱肉強食!!俺が強くて、アイツらが弱かっただけのこと!!アイツらを見返すんだろう?こんなことができなくてどうすんだよ!!)
「アイツらを、見返す為だ」
そういった俺は、覚悟ができた目をしていた。と、思う。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そこからは簡単だった。ゴブリンの死体を引きずって街に戻り、傭兵ギルドに納品。
もっと納品するので準備しておいて欲しいと傭兵ギルドの職員に伝え、一旦帰る。
そして鍛冶屋で大きな台車を借り、服屋でローブを購入。また草原へ戻った。
ローブを買ったのは冒険者にあっても極力コミュニケーションしたくなかったからである。
そして草原を駆け回り、目についた魔物を片っ端から殺戮、死体を台車に乗せる。
そのまま半日程過ごし、台車の上にはゴブリン、ワーウルフ、ホーンラビットの死体の小山ができた。
ゴブリン以外の二匹はよく分からんかったけど、襲って来たので魔物だろう。
しかしまだ積めそうだったので狩りを続行。
草原の魔物が居なくなってしまったので森へ入る。
そこで3時間程狩り、台車の小山の上にはホブゴブリン、ウォーウルフ、ビッグラビットの死体が積み重なり、山になっていた。
森に入ったことで魔物が強くなったことに気付かない鋼牙はさらに森の奥へ。
そこでゴブリンの巣窟を見つける。ゴブリンなどの魔物には上位種が存在し、さっき倒したホブゴブリンもゴブリンの上位種である。
上位種になると極端に力が上がるため、ゴブリンをなめてかかると普通に死ぬ。
ゴブリンの巣窟などにはホブゴブリンのさらに上位種のソードゴブリンやゴブリンアーチャー、稀にゴブリンジェネラル、極稀にゴブリンキングがいる。
ゴブリンキングがいた場合、ゴブリン要塞が出来上がる可能性があるため、かなり危険である。
キングは一般的に一人前とされるCランク冒険者のパーティーで挑んでようやく勝てる相手。
なのでキングがいたゴブリンの巣窟はAランク冒険者に指名依頼が来るほど危険な存在なのだ。
そんなゴブリンの巣窟を強襲。ゴブリン達をジェノサイドし、台車の上に新たにゴブリンジェネラルとゴブリンキングの死体を乗っける。
素材として身体が必要なのだと思い、つけていた古い鎧は剥いだ。
確かにゴブリンキングは強力だが、相手は剣術Lv10の化物。敵う相手ではなかった。
死体を積み終わると帰路につく。
もう積めそうにない上、ゴブリンキングが重くて台車がギシギシいいはじめたので速く帰ることにしたのだ。
そして重たい台車を必死に押して何とか門のたどり着くと、大勢の冒険者達にお出迎えされていたという訳だった。




