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ゴミ捨て場のレイナ  作者: 凪
第4章 もう、夢なんて見ない~ミハルの闘い~
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大パニック

「――ダメだ、逃げろっ!」

 怜人はすぐ正気に戻り、駆け寄って来た若者たちに叫ぶ。

 扉近くにいた人は瞬時に悟って、逃げ出す。後方の人は分からずに、キョトンとしている。


「逃げて、逃げてっ。機動隊がいるの!」

 美晴が声の限りに叫ぶと、みんな我に返って、悲鳴をあげながら逃げ出した。すると、あちこちから機動隊が姿を現す。


 ――隠れてたんだ。全部、バレてたんだ。


「美晴っ、こっちだ!」

 怜人は美晴の腕をつかみ、奥の階段に向かって走った。だが、そこからも機動隊がわらわらと出てくる。

「ダメだ、こっちに行こう!」

 通路を曲がって反対方向の出口に出ようとすると、そこからも機動隊が――。完全に挟まれてしまった。


 怜人は美晴を背後に隠す。

「美晴、すまん、失敗した」

 苦しそうにつぶやく。

「ううん、怜人が悪いんじゃないよ」


 ――なんで。なんで、バレたの? どうして? 


 後ろを見ると、ゆずの姿がない。

 通路の向こうで、急に白煙が上がった。誰かが予備の白煙筒を焚いたのかもしれない。

 激しくせき込んで、機動隊が乱れている。


「こっちだ!」

 怜人は美晴の手をつかんで、白煙のなかに突進する。煙い。目も痛い。だが、立ち止まってはいられない。あちこちで、破裂音や悲鳴、怒号が聞こえる。


 ようやく煙の外に出ると、そこは悪夢のような光景が広がっていた。

 機動隊に取り押さえられている人、ボコボコに警棒で殴られている人、機動隊に立ち向かっている人もいるが、あっという間に叩きのめされている。

 遅れて外から駆けつけた人たちは、目の前の光景にフリーズしている。彼らを機動隊があっという間に取り囲んだ。


 美晴は、ふいに腕を強くつかまれた。振り返ると、機動隊だった。

「容疑者、確保!」

「おいっ、美晴に触るな!」

 怜人は美晴を抱きしめてかばおうとしたが、たちまち数人の機動隊が怜人を取り押さえる。


「美晴っ」

「怜人っ」


 ついに、怜人と美晴は引き離されてしまう。美晴は機動隊に腕や肩、腰をつかまれる。振りほどこうにも、抵抗できない。


「おいっ、美晴に乱暴するな! その人を傷つけるな!」

 怜人は機動隊を振りほどこうとするが、数人がかりで床に組み伏せられる。

「怜人っ、怜人っ!」

 美晴は怜人に向かって必死で手を伸ばす。


 そのとき、大きな爆発音が響いた。

「なんだ?」

 隊員が手を緩める。とたんに、隊員は「うわっ」と悲鳴を上げながら倒れた。見ると、白石が隊員にスタンガンを突き立てている。 


「美晴ちゃん、こっちだ!」と、白石は美晴の腕をつかんで、強引にエレベーターに連れ込む。

「ちょ、ちょっと待って、怜人が!」

「白石、美晴を頼む!」


 怜人が叫ぶ。怜人は何人もの隊員に上から押さえつけられて、苦しそうに顔をゆがめている。

「いや、いやっ、怜人っ、怜人!」

「美晴っ……」


 白石は必死でエレベーターのボタンを連打したので、機動隊員が駆けつける前にドアが閉まって、動き出した。

「何をしてるの? 怜人を助けに行かなきゃ!」

 美晴は白石に食ってかかる。


「いや、怜人から頼まれたんだ。もしものことがあったら、美晴を助け出してほしいって」

「そんな、そんなのダメダメ! 怜人も一緒じゃなきゃ!」


 エレベーターは地下に着いた。美晴はすぐにボタンを押して上に戻ろうとする。

「ダメだって! とにかく、いったん、ここから出よう!」

 白石は力づくで美晴をエレベーターから引っ張り出した。地下にまで怒号が響き渡っている。


「とにかく、作戦を練り直そう! あんなに大勢、機動隊がいたら、手も足も出せないから」

 白石は、美晴を参議院議員会館とつながる地下通路まで引っ張っていった。

 会館からも隊員が何人も駆けて来るが、「ご苦労様です! 襲撃を受けて逃げてきたんです!」と白石は平然と切り抜ける。


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