表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴミ捨て場のレイナ  作者: 凪
第3章 小さな勇気の唄
60/165

希望の空

 レイナは、しばらくためらっていたが、大きく深呼吸してから小屋のドアを開けた。


 目の前には、懐かしい光景が広がる。

 テーブルの上には、タクマのノート。

 今までは手に取れなかったが、開いてみると、手書きの五線譜に音符が書いてあったり、歌詞が書いてある。タクマは、このノートで作詞や作曲をしていたのだろう。


『小さな勇気の唄』も楽譜が書いてあった。

 タイトルの横に、「~レイナにささぐ~」と書いてあるのを見て、レイナはしばらく息を止めた。


 ――私のためにつくってくれた曲だったんだ。

 

 レイナはそのノートを抱きしめる。


「必要なものは、持って帰りなよ」

 振り向くと、ジンが立っている。


「トムにはタクマの服をあげたよ。あいつは大切にしてくれると思う。ここにあるタクマのものは、レイナのものだ。オレらも気をつけて監視してるんだけど、誰かが持って行ってるんだよ、ここのものを。だから、必要なものは早く持って帰ったほうがいい」


 レイナはしばらく考え込んでいた。


「マサじいさんは、すべてを持っていけないって、人が抱えられる荷物には限界があるって言ってた」

「また、分かったような、分からんようなことを」


「でも、何となく分かる気がする。私はもうアルバムとピアノをもらったし、このノートと、お兄ちゃんが読んでた本をもらえればいいかも」

「そうか」


 ジンはレイナの目をじっと見つめる。


「じゃあ、ここに誰かが住むかもしれないけど、それでいいんだな?」

「うん」

 レイナは大きくうなずく。

「お兄ちゃんは、いつも私のそばにいてくれるもん」

「そうだな」

 ジンはつぶやいた。

「あいつがレイナのそばを離れるわけないからな」

 

 小屋の外に出ると、笑里と裕がアミの手を引きながら歩いている。

「ねえ、マサさんが、とっておきの紅茶を入れてくれるんですって。飲みに行きましょ」

「うん!」


 レイナはノートと本を抱えて、三人に向かって駆け出した。

 空はどこまでも晴れ渡り、夏のまぶしい光が建ち並ぶ小屋に降り注ぐ。

 街に建っている家々よりもずっとキレイだと、レイナは思った。


 ――いつか、きっと、何もかもうまくいきますように。みんなが幸せになれますように。


 レイナは、何度も何度も心の中で祈った。



             《第一部 完》



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ