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ゴミ捨て場のレイナ  作者: 凪
第3章 小さな勇気の唄
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二度目のステージ

 本番当日。

 スティーブとリハーサルをするために、レイナは裕と共に日産スタジアムに向かった。


 レイナの髪には、タクマからもらったバレッタ。

 笑里にバレッタをつけてもらうときに、「お兄ちゃん、今日も見守っていてね」と心の中で祈った。


 客席に出てみて、その広さに圧倒された。

 武道館より遥かに規模が大きく、メインステージのほかにサイドステージが2つ設置してある。

 3つのステージを移動しながら歌うのだと裕は説明してくれた。


「スタンドだけじゃなくて、ステージのまわりにも観客がいるんだよ。あそこをアリーナって言うんだ」

「へええ。あんなところにもお客さんが入るんだあ」


 リハーサルが始まると、スタッフが呼びに来た。

「衣装合わせは後にして、先に歌を合わせたいってスティーブが言ってます」

「わかりました」


 二人でメインステージに向かうと、そこにはヒカリがいた。


 レイナと裕は驚いて顔を見合わせた。

 ヒカリは二人を一瞥すると、すぐに顔をそらせた。


 通訳らしき男性が、スティーブのスタッフに何か頼んでいるようだ。

 スタッフは怒ったような顔で、通訳の男性に何やら言っている。


「先に歌うのはレイナさんで、ヒカリさんは後だってスティーブは言っているそうです。その順番を変えるつもりはないって。リハーサルもその順番でやるって言っています」


 通訳の男性が困り果てた様子で、ヒカリとマネージャーに説明した。


「待ち時間が長すぎますよ。せめてリハだけ先にしてもらえないかって頼んでみてください」

「だから、さっきから何度もそう頼んでるんですよ。でも、予定を変えるつもりはないって、スティーブは言っているそうです」


 ヒカリは苛立ちを隠さないまま、腕組みをしてそのやりとりを聞いている。


「だったら、リハに出なくていいんじゃない? ぶっつけ本番でもいいでしょ」

「そういうわけにはいかないでしょ。こっちが頼み込んで、今日のステージに出させてもらうんだから」

「私は出たいなんて言ってないし」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」


 ヒカリとマネージャーが言い争っていると、急に袖が騒がしくなった。


 スティーブが現れ、ステージは静まり返った。

 実物は動画で見る以上に巨体なので、立っているだけで存在感がある。

 黒いサングラス越しにヒカリたちを睨むと、ヒカリは顔をこわばらせた。


 スティーブはヒカリの前を素通りし、レイナに「ハイ、レイナ!」と笑顔で歩み寄った。


 手を差し出されて、レイナも右手を出すと、大きな温かい手で包み込んで握手した。

 何か言われたが聞き取れないでいると、「レイナに会えてよかったって。会うのを楽しみにしてたんだって言ってるよ」と裕が通訳してくれた。

 レイナは「私も!」と笑顔で返した。

 

 スティーブは裕とも握手を交わした。

「おっきい人だね。ビックリした!」

 レイナが言うと、裕はそれを訳して伝えた。


 スティーブは朗らかに笑った。


「子供のころからビッグボーイって呼ばれてたんだって。ジャパンは建物も乗り物も小さいから、頭をぶつけてばかりだって言ってるよ」


 スティーブが頭を痛そうにさすっているので、レイナは笑い声をあげた。


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