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ゴミ捨て場のレイナ  作者: 凪
第2章 キセキの歌声
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不穏な空気

 ヒカリのライブに出る日。


 レイナは朝早くに目が覚めて、河原に行き、予行演習を兼ねてその日披露する曲を歌った。

 澄みきった空が広がり、朝から気持ちよく晴れている。


 ――お兄ちゃん。私、今日、ステージで歌うんだよ。天国から見ていてね。


 空に向かって、高らかに歌いあげる。


 水汲みに行くために小屋に戻る途中、アミに会った。

「おっはよー」

 レイナが声をかけると、アミは一瞬おびえたような表情になり、レイナに駆け寄って腰にしがみついた。


「何、何、どうしたの?」

 レイナが顔をのぞき込むと、アミは涙を浮かべながら、「あーあー」と訴えかける。


「もしかして、ヒロさんにまた暴力振るわれたの?」


 レイナが声を潜めると、アミは激しく頭を振る。

 レイナはアミの袖をまくったり、背中やお腹、足も確認したが、どこにも新しい傷はない。


 ――そういえば、ここんところずっと、アミの様子がおかしかったかも。私がレッスンから帰って来たら、抱きついて離れなくなるし。昼間もずっと小屋の外で待ってるって、トムが言ってたっけ。私がいなくて寂しいのかと思ったけど……。


 レイナはアミの目を見た。

「ねえ、アミ、何かあったの?」

 アミはためらった後、小さくコクンとした。


「何があったの? 私に教えられる?」


 そう聞いても、アミは話せないし、字も書けない。どうやって話を聞き出せばいいのか。

 

 レイナが考え込んでいると、「やあ、おはよう」と背後から声がした。振り返ると、山田がニヤニヤ笑いながら立っている。

 アミが息を呑んで、レイナにしがみついた。


「二人とも、朝早いねえ。えらいえらい」

 山田が近寄ってくると、アミはレイナの背後に隠れた。

「あれ、人見知りしてるのかなあ」

 レイナは立ち上がり、山田を手で制した。


「アミが嫌がってるみたいだから、近づかないで」

「そんなあ、おじさん、そんなに怖くないよ? 誤解してるんじゃないかな」


 山田がなおもニヤニヤしてると、「おい、何してるんだよ?」とクロを連れたジンが駆け寄ってきた。


 山田は小さく舌打ちし、「さ、顔でも洗って来るかな」と水飲み場に向かった。


「どうした?」

「分かんない。なんか、アミがあの人におびえてて」

「アミ、あいつに何かされたのか?」


 ジンが聞いても、アミは涙ぐんで震えているだけだ。


「何かあったのかもしれないな。じゃあ、今日は一日、俺かトムと一緒にいるんだぞ。マサじいさんのところにいてもいいし。絶対に一人になるな。分かったな?」

 ジンの言葉にアミは深くうなずいた。


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