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ゴミ捨て場のレイナ  作者: 凪
第2章 キセキの歌声
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すごい歌声

 レイナは、壁に飾ってある写真を見て、「これ、おじさんとおばさん?」と聞いた。

「そう。若いころの私達よ」

「ふうん」


 裕と笑里の間には、2、3歳の女の子が立っている。裕と笑里は幸せそうに笑い、女の子は笑里の足にしがみついて、カメラの方を見ている。


「この子は、おじさんとおばさんの子?」

 裕は「そうだよ」とうなずいた。

「今はどこにいるの?」

「君の大事なタクマ兄さんと一緒のところかな」


 レイナはハッとして裕の顔を見た。

「音楽の神様でも、病気の子供を救ってあげることはできなかったんだ。あのころは、毎日神様に祈ったのにね」

 笑里を見ると、目のふちをそっと拭っている。


 ――こんなに大きな家に住んで、魔法のような暮らしを送っているのに、悲しいことからは逃げられないんだ。


 レイナはバレッタをそっとなでた。


 その日のレッスンの最後に、裕に「あの曲を歌ってくれないかな」とリクエストされた。

 レイナはきょとんとする。


「ホラ、僕がゴミ捨て場に行ったときに、ピアノで弾いた――」

「ああ、『小さな勇気の歌』」

「小さな勇気の歌。素敵な名前をつけたのね」


 レイナは一呼吸おいてから、歌いだした。


 いつもよりも声が出やすい。気持ちいい。レイナはゴミ捨て場で歌っているときのような感覚で、体中から声を出した。


「――すごいな」

 聞き終えた後、裕は感嘆の息を漏らした。


「ええ。プロのオペラ歌手でも、最初からここまでの声量はなかなか出ないわよ」

 笑里も頬を紅潮させていた。


「ねえ、レイナちゃん。もっとレッスンを受けてみない? 毎日でもいいわよ。うちに通って来ない?」

 笑里は興奮しているが、レイナはどう答えたらいいのか分からない。


「私は毎日でも歌いたいけど……ママに聞いてみないと」

「分かった。送って行ったときに、お母さんに相談してみよう」

 裕は何かを決意したような表情で言った。

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