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ゴミ捨て場のレイナ  作者: 凪
第5章 それでも、私はあきらめない
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見えない救いの手

「森口さん、こんなことに巻き込んでしまって申し訳ない」


 帰りの車中で裕は森口に話しかけた。

 結局、ジンが運転する車に住人たちが乗り、森口の車にはレイナと裕しか乗っていない。レイナは裕に上着をかけてもらい、座席に横たわってスヤスヤと眠っていた。


「とんでもない。レイナさんから話を聞いた時は、ぜひとも協力したいって思いましたよ。レイナさんの困ってる人を助けたいって想いには、本当に頭が下がります」

 森口はにこやかに答える。

「でも、残念ですね。同じ境遇にいた人たちですら、分かり合えないというか」


「ゴミ捨て場で暮らすようになった経緯も、暮らし続ける経験も、僕はとても想像できないけど……何もかもあきらめてしまうのは、どれだけやりきれないことなんだろう」

「そうですねえ……でも、レイナさんは、全然そういうところがないですね。まだ子供だからなのか」


「いや、きっと美晴さんのお陰だろう。美晴さんもあきらめてないから、レイナを街に行かせようって思ったんだ。それに、そうやって育てて来た。すぐにあきらめないように」

「あの壮絶な環境で、それは奇跡のようなものですね」

「ああ、本当に」


 そのとき、胸ポケットでスマホが震えた。見るとアンソニーからだ。

「もしもし?」

 電話に出ると、「先生、大変なことが起きてるわよ!」と興奮した声が耳に飛び込んでくる。


「大変なことって?」

「レイナを攻撃したユーチューバーの動画があるでしょ? あれの元のデータが流出してんのよ」

「え?」


 アンソニーが送ってくれたURLにアクセスすると、「ユーチューバーるりりんの黒い真実」というタイトルの動画が、ユーチューブに公開されていた。既に20万人が見ている。


 その動画は、るりりんがゴミ捨て場に来てレイナが歌っている様子を撮影した様子が、最初から最後まで収められていた。

 一緒に来ていた仲間と、「や~、きったな。よくこんなとこに住めるよね」「くさすぎ~」とおしゃべりしている声も入っている。

 そして、住人達ともめてゴミ捨て場を去るときは、「これでいいかな」「バッチリじゃん」と話している音声で終わった。


 るりりんの動画を観ようとすると、既に削除されている。るりりんチャンネルには、「ウソつき」「レイナを貶めるためにわざとやったのか」「お前らのウソのせいで、ゴミ捨て場の人が追い出されたんだぞ?」と、非難するコメントが殺到している。

 裕はすぐにアンソニーに電話した。


「これは……ハッキングされて、動画が流出したってことだろうか」

「たぶんね。レイナのファンがやってくれたのかしら」


「どうだろう……これでレイナが間違ってないってことは分かってもらえるだろうけど。このるりりんって子は、これからバッシングされるだろうね」

「そりゃあもう、同情の余地なしでしょ。レイナはやってもいないことで叩かれたんだから。いい気味よ」

「どっちにしろ、後味の悪い話だな」

 裕はレイナの寝顔を見る。



 その日の夜、るりりんは謝罪動画をアップした。

 涙ながらに「あれは誰かが捏造した動画」「私はあんなことをしてない」「私の動画が本物」と訴えかける。

 だが、すぐに「あっちの動画が本物なら、なんで削除したの?」「捏造したのはお前だろ?」「死ねよ」と非難するコメントが書き込まれる。

 結局、翌日にはるりりんチャンネルは閉鎖されてしまった。


 


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